SOLIZE Research Memo(6):デザイン事業は小幅損失も、マニュファクチュアリング事業は合理化で黒字転換
■SOLIZE<5871>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
事業別では、デザイン事業の市場環境は、国内自動車産業の先行き不透明感があるものの、同社グループの顧客の製品設計開発に係る需要は高水準で継続した。このような環境のなか、自動車関連の設計開発に係る受託及びエンジニア派遣サービス、変革コンサルティングサービス、ソフトウェア開発等の分野において受注を拡大したほか、インド現地法人 SOLIZE India Technologies Private Limitedにおいて3D CADのソフトウェア販売も拡大した。また、人材強化の面においては、2024年4月に入社した新卒採用者の教育実施に加え、下期以降の成長を支える経験者採用の拡大を進めたことにより、売上原価、販管費が収益の拡大に先行して増加した。これらの結果、売上高は8,834百万円(前年同期比14.7%増)、営業損失は8百万円(前年同期は275百万円の利益)となった。2024年12月期中間期は、経験者の積極採用や国内拠点の拡張を進めた結果、収益に先行して販管費が増加したことで、言わば特殊要因によって営業利益が悪化したが、本来はデザイン事業の営業利益率は高いようだ。
マニュファクチュアリング事業の市場環境は、主に試作品に対する需要が堅調で、改善傾向が前期から継続した。このような環境のなか、同社グループは、自動車関連企業や機械メーカーを中心とした既存顧客基盤に対する3Dプリンターを利用した試作品や量産品の部品供給サービスの提供を継続した。また、従前より販売を積み重ねてきた3Dプリンター納入顧客に対するメンテナンスサービスや材料の供給等、保守サービスによる収益も拡大した。さらに、マニュファクチュアリング事業の体制見直しによる工場の統合等を進めたことにより、販管費が抑制され収益性が改善した。これらの結果、売上高は1,912百万円(前年同期比8.5%増)、営業利益は96百万円(前年同期は99百万円の損失)となった。
同社グループでは、人への投資が重要な業績管理指標(KPI)と考えており、国内エンジニアに係る指標を重視している。2024年12月期中間期には経験者採用を強化した結果、国内エンジニア数は1,389名(前年通期比106名増)、国内派遣単価は、顧客との交渉により上昇し4,835円(同279円増)となった。国内派遣稼働率は、中間期は新卒採用が含まれるため92.6%(同2.3ポイント低下)であったが、コロナ禍により80%台に落ち込んでいた時期を脱し、正常な水準に戻った。
3. 財務状況と経営指標
2024年12月期中間期末の財務状況は、総資産が前期末比1,647百万円増の14,693百万円となった。これは、自己株式の処分等により現金及び預金が1,496百万円増加したほか、取引量の拡大等により棚卸資産が143百万円増加したことなどによる。
負債合計は前期末比101百万円増の3,477百万円となった。これは、取引量の拡大等により買掛金が111百万円増加、また未払費用が106百万円増加したほか、預り金等の増加によりその他流動負債が63百万円増加した一方、未払消費税等が148百万円減少したことなどによる。また、純資産合計は前期末比1,546百万円増の11,215百万円となった。これは、自己株式の処分等により株主資本合計が1,421百万円増加したことなどによる。
以上の結果、自己資本比率は前期末比2.2ポイント上昇し76.3%となり、2024年3月期にプライム・スタンダード・グロース市場に上場するサービス業平均の6.2%や全産業平均の33.7%を上回る高い安全性を確保した。一方、収益性の面では、2024年3月期にプライム・スタンダード・グロース市場に上場するサービス業平均のROAは0.7%、ROEは6.7%、全産業平均のROAは4.5%、ROEは9.5%に対して、同社の2023年12月期のROAは6.6%、ROEは5.8%であった。同社のROEがやや低いのは、自己資本が厚く、自己資本比率が極めて高いことに伴うものである。このため、同社では借入金がなく、無借金経営を続けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《HN》
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