北陸企業News-中小型バリュー株-【今村証券アナリストレポート】
●中小型バリュー株
日本の株式市場は強含み、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)は過去最高値を更新した。強含む株式市場の中で、殊に上昇率が大きいのが中小型株だ。東証スタンダード指数や東証グロース指数のほか、TOPIXの組み入れ銘柄から時価総額上位500社に入らない銘柄を組み入れたTOPIXスモール指数の年初からの上昇率は約2割とTOPIXの上昇率15%を上回る(9月25日現在)。中でも顕著な上昇を見せるのが中小型バリュー(割安)株で、24%の上昇だ。

背景には東京証券取引所(以下「東証」)が上場企業に要請した「資本コストや株価を意識した経営」による上場企業の取り組みへの期待がある。東証の改革に応えるべく上場企業は資本効率化や株主還元などを進めている。これを好感して株式市場では時価総額の大きい大型株が先行して上昇してきたが、この動きが中小型株に広がっているようだ。中小型株にはなお割安な銘柄が多く、割安修正の余地があると考える。
以下は東証プライム市場上場のTOPIX採用銘柄のうち、5年平均ROEが8%以上の企業で、時価総額1000億円以下、PBR1倍以下の企業だ(PBRが低位の20社と北陸企業)。
これに該当する北陸企業のうち、今回は川田テクノロジーズ、澁谷工業、三光合成を取り上げる。

出所:ブルームバーグ。株価は2025年9月25日終値。
●川田テクノロジーズ <3443> [東証P]
レーティング:OUTPERFORM
担当 織田真由美
◆鉄骨と橋梁、土木、システム建築の総合最大手。高速道路などの補修・保全需要旺盛

鋼製橋梁の設計・製作・架設および建築鉄骨の製作等を行う鉄構部門と橋梁などの施工を行う土木部門が主力。中層の一般建築などを行う建築部門と、建設業界向けソフトウェアなどを手掛けるソリューション部門も展開する。中堅ゼネコンの佐藤工業株式会社の株式49.9%を保有。
強みは長大橋など多くの施工実績に表される高い技術力、長年の首都高速道路における保全工事を通じて蓄積してきた各種保全技術ノウハウだ。橋梁の新設は減少傾向にあるものの、更新・保全需要は拡大しており、需要は底堅い。殊に保全事業においては鋼橋とPC橋梁の両方のノウハウや技術力が必要となるだけに、グループ内で両方の技術を持つことが大きなアドバンテージとなっている。インフラの更新・保全工事の需要が旺盛な中、事業環境は堅調に推移するとみられる。
一方、子会社の川田テクノシステムが担うソリューション部門は建設DXのリーディングカンパニーだ。主力の3次元CADは橋梁や道路などの構造物だけではなく、電線共同溝など地下構造物に範囲を拡大している。また、情報共有システム「basepage」は国土交通省が定めている機能要件に対応、必要な機能を網羅しており業界のデファクトスタンダードとなっている。
2026年3月期第1四半期連結業績は減収減益。前期末の繰越高が1,679億1700万円と高水準だったものの、鉄構セグメントと土木セグメントにおいて工事の進捗が低調だったことが影響した。とはいえ通期では設計変更獲得による業績の押し上げが期待される。高水準の受注残高は当面の業績の支えとなることから、来期も小幅な増収増益を想定する。

株価は従来から割安で推移することが多いが、近年は収益性が安定し、利益率も改善傾向にあることを考えると、バリュエーションの水準訂正が期待できそうだ。中長期的に堅調な業績が期待されることに加え、バリュエーションの改善が期待されることから投資判断は「OUTPERFORM」とする。
●澁谷工業 <6340> [東証P]
レーティング:NEUTRAL
担当 織田真由美
◆ボトリングシステムで国内トップ。無菌技術に強み

ボトリングシステムで国内トップ。飲料用の無菌充填システムでは国内シェア80~90%とみられる。アジアや北米を中心に海外売上が拡大しており、海外売上高は約4割。パッケージングプラント事業は食品や薬品・化粧品などの業界向けが中心で、安定した需要があることや定期的なメンテナンスが必要なことが収益に寄与している。

強みは技術力、イノベーション創出力、きめ細やかなサポート体制だ。創業以来のボトリング技術をコアにM&Aを通じて技術を蓄積、培ったロボット制御技術や無菌技術、レーザ技術などによって事業領域を拡大してきた。主力のパッケージングプラント事業では無菌技術によって乳飲料や茶系飲料などの低酸性飲料の充填において優位にある。近年では、健康志向の高まりから低酸性飲料の需要が増加する北米での売上が拡大しているほか、中国や東南アジアの需要も伸びている。無菌技術は再生医療システムにつながっている。細胞培養アイソレータや自動培養装置、バイオ3Dプリンターなど豊富な品揃えが強みとなっている。
メカトロシステム事業ではニプロ <8086> [東証P] 向けに人工透析装置のOEM生産を行っているほか、半導体製造装置も手掛けている。ニプロ向け売上高は拡大傾向にあり、前期には218億円とメカトロシステム事業の6割近くを占め、メカトロシステム事業拡大をけん引する。透析患者は北米や中国、インドを中心に増加傾向にあり、今後も拡大が期待される。また、半導体製造装置についてはデータセンター用AIを中心とした先端半導体で需要拡大が見込まれる。
業績は堅調で2025年6月期の売上高、営業利益、経常利益、純利益はいずれも過去最高となった。今期は高水準で推移してきた飲料用無菌充填ラインの需要一服に加え、他社製品の組み込み増加による原材料費率の上昇が利益を圧迫することで減益見通しだが、自動化、省人化が求められる中で中長期的な業績は拡大傾向が続きそうだ。他方、投資するには受注回復を待ちたいと考えることから、投資判断は「NEUTRAL」とする。
●三光合成 <7888> [東証P]
レーティング:OUTPERFORM
担当 近藤浩之
◆高付加価値製品の受注と生産性向上を推進

連結売上高(2025年5月期)の8割強を占める成形品事業の内、車両分野(自動車向け内装・外装部品、機能部品等)の割合が8割を超える。海外売上高が全体の2/3と高く、アジア(タイ・インドネシア・中国・インド等)、欧州(英国・ハンガリー等)、北米(米国・メキシコ)に拠点を持つ。

(注)26.5期より、「情報通信機器」と「家電その他」を統合
今期(2026年5月期)会社予想の売上高は前期比3%増、営業利益は同7%増で過去最高更新を見込み、売上高営業利益率は6.5%(前期比+0.3ポイント)を見込む。生産性向上の取り組みを海外に展開して増益、利益率向上につなげる。事務機器や家電関連の受注拡大、蓄電池や医療などの市場開拓も進める。
米関税政策の影響については、受注動向に変化はない模様だ。また、米国で自動車部品の現地調達需要が拡大することを見据え、米北部インディアナ州にある既存工場を来年までに約2倍に拡張するほか、米南部の取引先の近くにも拠点を設けるべく、M&Aを中心に検討中だ。
利益率の向上に向けて取り組んでいるのは、付加価値が高い製品の受注拡大、既存部品での生産性の向上だ。足元の業績に貢献している生産性向上は、金型や省力化・無人化機器を自社開発できる強みを活かし、用途・生産数に合わせたカスタマイズを実行している。
付加価値が高い製品の受注拡大のためには、成形だけでなく二次加工も手掛ける必要があり、金型や製品の設計を担当する人員を国内外で増強し、自動車部品の開発や設計段階から携わる機会を増やしている。インドでは今年、新工場建設、工場拡張に着手し、現地メーカーでは対応できない大型成形や金型の供給能力拡大を図る。
今村証券では、今期業績を会社予想通り、来期(2027年5月期)を売上高970億円、営業利益66億円、EPS142円と予想する。株価は9月に940円と上場来高値を付けたものの、9月29日の終値(866円)を今期今村証券予想EPS(131.21円)で割った予想PERは6.6倍、来期今村証券予想EPS(142円)を基にすると6.1倍となり、依然割安だ。
| 【レーティングの定義】 OUTPERFORM:今後12カ月間のトータルリターンがTOPIXの予想リターンを10%超上回ると予想される。 NEUTRAL:今後12カ月間のトータルリターンがTOPIXの予想リターンの+10%と-10%の間に入ると予想される。 UNDERPERFORM:今後12カ月間のトータルリターンがTOPIXの予想リターンを10%超下回ると予想される。 トータルリターン:株価変動率+配当利回り 目標株価は12カ月間の投資を想定しており、将来発行されるレポートで修正されることもあります。 |
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金融商品取引業者 北陸財務局長(金商) 第3号
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※今村証券より提供されたレポートを掲載しています。
株探ニュース