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ダイコク電 Research Memo(1):2023年3月期業績予想を増額修正するとともに、戦略的M&Aでも大きな成果

特集
2023年1月26日 14時31分

■要約

1. 事業概要

ダイコク電機<6430>は、パチンコホール向けコンピュータシステムの開発・製造・販売のほか、パチンコ遊技機の表示ユニット及び制御ユニットの開発・製造・販売等を2本柱としている。主力のホールコンピュータ分野では、デファクトスタンダードとなっている管理手法の提供等により、業界No.1の市場シェア37.1%を占める。また、パチンコホールの経営を支援する業界随一の会員制情報提供サービス「DK-SIS」では、会員数3,303店とのネットワークを形成し、同社の事業基盤を支えている。

同社は、年々縮小傾向にあるパチンコ市場のなかで、大型店舗におけるシェアを伸ばすとともに、継続的に収益が得られるストック型ビジネスモデルへの転換など、中長期を見据えた事業改革を推進している。この数年間については、出玉制限や依存症対策、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則及び遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則の一部を改正する規則」(2018年2月1日施行、以下、「新規則」)を通じて、パチンコホール業界が大きな転換点を迎えるなかで、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響も重なり、先行き不透明感から業績はしばらく厳しい状況が続いてきた。ただ、2022年1月末を設置期限とする「旧規則」機の入替が段階的に実施され、遊技機市場はパチンコ「新規則」機による活性化の兆しが見え始め、2022年11月21日からは注目の「スマート遊技機」※も順調に滑り出しており、市場の回復とともに同社も新たなフェーズを迎えようとしている。2022年12月20日にはクラウドサービスのシステム開発等を手掛ける(株)グローバルワイズを連結子会社化し、中長期戦略の軸となるクラウド活用(新サービスの実現)に向けても大きな成果を挙げることができた。

※「スマートパチンコ」及び「スマートパチスロ」。これまでのように玉やメダルに触れることなく遊技することができる。パチンコホールにおける玉やメダルに係わる設備が不要になること、遊技性能が既存の遊技機よりも向上するところなどに特長があり、遊技機メーカー団体(日工組・日電協)が推進していることから、今後の進展が注目されている。2022年11月21日からスマートパチスロが導入され、スマートパチンコについても2023年春の導入予定とされている。

2. 2023年3月期上期決算の概要

2023年3月期上期決算の業績は、売上高が前年同期比6.3%減の11,289百万円、営業利益が同13.2%減の749百万円と減収減益となったものの、売上高・利益ともに計画を上回って着地した。「情報システム事業」は、世界的な半導体不足の影響のため供給が追い付かず、販売台数の調整を余儀なくされたことで減収となったが、その点は想定内である。注目の「スマート遊技機」の導入時期が近づくにつれ、データ管理に最適なAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」のシステムアップ件数が大幅に増えたことから計画を上回った。一方、「制御システム事業」については、部品販売は好調であったものの、「スマート遊技機」の動向を探る姿勢から、市場全体の遊技機販売台数が低調に推移し、それに伴って表示ユニット及び制御ユニットの販売がそれぞれ減少し減収となった。利益面では、減収による収益の下押しに加え、取引先遊技機メーカーの民事再生手続きに伴う貸倒引当金繰入額の計上が利益の圧迫要因となり営業減益となった。ただ、利益率の高い「Χ(カイ)」のシステムアップ件数が伸びたことや製品の原価高騰が想定よりも抑えられたことから、計画を大幅に上回る利益水準を確保できた。また、活動面でも、次世代のクラウドサービス「ClarisLink(クラリスリンク)」(クラウドチェーン店管理システム)が順調に伸びており、事業構造の変革に向けて着実に前進している。

3. 2023年3月期の業績予想

2023年3月期について同社は期初予想を増額修正した。売上高を前期比18.9%増の29,000百万円、営業利益を同55.3%増の1,850百万円と増収増益を見込んでいる。売上高予想を増額修正したのは、順調に滑り出した「スマート遊技機」に必要なカードユニット「VEGASIA」など製品の販売台数が計画を上回る見込みであることが理由であり、「情報システム事業」の伸びが増収に大きく寄与する想定である。一方、「制御システム事業」については、表示ユニット等の販売が翌期にずれ込んだことから減収となる見通しとなっている。利益面では、増収効果やMIRAIGATEサービス(以下、MGサービス)の伸びなどが収益の押し上げ要因となり、クラウドやパチスロへの積極的な投資に加え、半導体不足や原材料価格の高騰による影響はあるものの、営業増益を見込んでいる。

4. 中期経営計画

同社は、2022年2月からの「新規則」機への完全移行、さらには「スマート遊技機」による新たな時代を迎えるにあたり、遊技機市場やパチンコホールの設備投資の活性化に向けた道筋が見えてきたことを踏まえ、2023年3月期を初年度とする中期経営計画(3ヶ年)をスタートした。「スマート遊技機」の普及に伴う需要を取り込むとともに、引き続きAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」の普及を促進するほか、クラウドサーバーを活用したビジネスへの展開(新MGサービスの拡充)により、業界唯一のプラットフォームを構築する戦略である。最終年度である2025年3月期の数値目標として、売上高34,000百万円(3年間の年平均成長率は11.7%)、営業利益2,200百万円(営業利益率6.5%)を目指している。なお、営業利益率が段階的に改善していくのは、MGサービスによるストック型ビジネスが成長の軸となり、収益構造の変化(収益の底上げ)に大きく貢献するためである。

■Key Points

・2023年3月期上期は減収減益ながら、計画を上回る着地

・半導体不足の影響を受けるも、「スマート遊技機」への期待感が高まるにつれ、AIホールコンピュータ「Χ(カイ)」のシステムアップ件数が大幅に増加

・2023年3月期の業績予想を増額修正。「スマート遊技機」が順調に滑り出したことを踏まえ、市場の活性化とともに増収増益を確保する見通し

・3ヶ年の中期経営計画をスタート。「スマート遊技機」による新たな時代を迎えるにあたり、クラウドサーバーを活用したビジネス展開(新MGサービスの拡充)により、業界唯一のプラットフォームの構築を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《YI》

提供:フィスコ

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