明日の株式相場に向けて=「トヨタ系自動車部品株」に照準
名実ともに11月相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比742円高の3万1601円と大幅続伸。先物が主導する形で700円超の上昇をみせ、お決まりの高値引けコースで3万1600円台まで一気に水準を切り上げた。きょうは文字通り目の覚めるような戻り足でプライム市場の値上がり銘柄数も約8割に達したが、見た目ほどは高揚感が伴わない。全体指数のパフォーマンスと自らの保有株を対比して実態面での隔たりを感じた投資家も少なくなかったのではないか。上昇エンジンとなったのは紛れもなくショートカバー。おそらくきょうの急反騰の9割方は踏み上げの浮揚力によって演出されたといっても過言ではない。実際、東証グロース指数、マザーズ指数はいずれもマイナス圏で引けており、こちらの方が個人投資家の体感温度に近い可能性がある。
11月相場は統計的に日経平均が高い月である。昨年までの直近10年間、月足で陽線が9回あり、前月の終値も上回っている。つまり9勝1敗、勝率9割である。そして今年もその展開を大いに期待させるスタートとなった。だが、この「鉄壁アノマリー」も例年と若干様相が異なりブレークされる可能性も少なからずありそうだ。個人投資家の土俵である新興市場の傷みが酷い。新規公開を含め同市場に上場する企業の未熟さが嫌気されているという説もあるが、それだけではなさそうだ。また、株式需給面では前週末27日時点で信用の買い残高が4兆円大台に乗せ、これは2007年8月以来約16年3カ月ぶりという。最近は、金利動向や地政学リスクなど外部環境に目を向けず、年末高を意識して買いに重心がかかり過ぎているきらいがあり、足もとをすくわれることへの懸念が拭えない。
さて、きょうの東京市場は空売りの買い戻し一色に染められた相場だったが、そのなか個別で輝きを放ったのは言うまでもなくトヨタ自動車<7203>である。午後1時55分に注目の23年4~9月期決算を開示した。最終利益は前年同期比2.2倍の2兆5894億2800万円と急拡大し、同時に24年3月期通期の予想も上方修正、従来予想の2兆5800億円から3兆9500億円(前期比61%増)に大幅増額した。これは事前コンセンサスも大きく上回る水準で、過去最高を大幅に更新する。
半導体不足などサプライチェーン問題解消に伴う自動車生産の回復、車両の機能向上に合わせた販売価格改定(値上げ)、そして何といっても為替の円安進行は同社にとって鬼に金棒となった。これまでの今期想定為替レート(通期)は1ドル=125円である。実勢との差は26円強もあり、国内製造業の中でも利益に対する為替感応度が頭抜けて高い同社にとって、これは無双の武器となっている。
当然ながら株価もポジティブに反応し、決算発表直後に6.3%高の2752円まで上値を伸ばし、10月12日につけた戻り高値(ザラ場ベース)を上回る場面があった。PERでいえばまだ14倍に過ぎず、時価は十分に追撃可能だが、個人投資家の戦略としては同社の周りを回っている「惑星」の方に照準を合わせた方が実践的だ。
改めてトヨタ系の自動車部品会社に注目してみたい。同グループの中核銘柄で自動変速機世界トップのアイシン<7259>や、燃料噴射装置など動力源の流体制御で実力を発揮する愛三工業<7283>、自動車内装で使う合成皮革で高い競争力を有する共和レザー<3553>、エンジン部分の軸受け・ダイカストメーカーで電動化製品にも強い大豊工業<6470>、骨格プレス部品やマフラーなど排気系部品のほかバッテリー冷却プレートなどでも実績を重ねるフタバ産業<7241>、そしてトヨタを販売先にプレス部品やバルブ製品を手掛ける太平洋工業<7250>などを継続マークしておきたい。ただし、高値には飛びつかず、あくまで押し目買いを念頭に置く必要がある。
あすのスケジュールでは、10月のマネタリーベースが朝方取引開始前に発表される。また、午前中に10年物国債と3カ月物国庫短期証券の入札が予定。後場取引終了後には10月の財政資金対民間収支が開示される。海外では9月の豪貿易収支、10月の独失業率のほか、マレーシア中銀、ノルウェー中銀が政策金利を発表、イングランド銀行(英中銀)の金融政策委員会の結果と議事録も公表される。米国では、週間の新規失業保険申請件数、7~9月期労働生産性指数(速報値)、9月の製造業受注など。また米アップル<AAPL>の決算発表にマーケットの関心が高い。なおこの日はフィリピン市場が休場となる。(銀)
株探ニュース