ジーニー Research Memo(5):2024年3月期は売上収益・売上総利益が2ケタ増(2)
■ジーニー<6562>の業績動向
(2) マーケティングSaaS事業
2025年3月期第1四半期業績は、売上収益859百万円(前年同期比42.4%増)、セグメント利益25百万円(同43.1%減)と増収減益となった。同社の総売上収益に占める本事業の比率は2024年3月期は33.7%(2023年3月期は30.6%)となっており、エンタープライズ領域での顧客獲得推進により実績を上げ、広告プラットフォーム事業に次ぐ第2の柱としての地位を確立した。本事業では、営業活動における商談管理のための営業管理システムや顧客管理システムである「GENIEE SFA/CRM」等のBtoB向けSaaSプロダクトを、エンタープライズ企業層に売り込む活動を推進している。その成果として案件受注に成功しただけでなく、受注後も追加案件の獲得や他のサービスのクロスセルの機会が増加したことで、売上の拡大に寄与した。「GENIEE SFA/CRM」についてはChatGPTを活用した利便性向上対策をはじめ、AI機能を備えた「AIアシスタントプラン powered by GPT-4」をリリースする等の機能強化策を実施しているが、このような対策も顧客獲得に対して機能したと考えられる。2024年3月期のSFA/CRM関連大型案件の納品完了で、大規模な月次収益獲得が始まっていることも今後の収益増の要因となる。またチャット型Web接客プラットフォームである「GENIEE CHAT」は大手顧客を中心に受注が増加しているが、今後は「GENIEE SFA/CRM」とともに同事業の収益の柱に成長することが期待される。損益面では、2024年3月期から引き続きセールス及びマーケティング関連の人材採用を積極的に行っていることで、売上収益に占める人件費や関連経費の比率は43%(前年同期は42%)となっている。このため事業単体で、セグメント利益は19百万円減となった。人件費や関連経費については、将来のさらなる成長に向けた投資であることや、今後は各種プロダクトの受注に伴う月次収益が厚くなることで、徐々に比率の低下が期待できることから、それほど懸念材料にはならないと考えられる。同社としては2025年3月期下期での半期黒字化を目指しているところであり、今後の状況を見守りたい。2024年9月、「GENIEE SFA/CRM」は、スマートキャンプ(株)が開催する「BOXIL SaaS AWARD Autumn 2024」において、SFA(営業支援システム)部門で、「Spring 2024」「Summer 2024」と3期連続で「Good Service」を受賞した。
マーケティングSaaS事業はマーケティングプラットフォームを顧客に提供し、利用料を課金するリカーリングビジネスである。KPIとして有料アカウント数・解約率、リカーリング比率やARR※1、ARPA※2が重要視される。有料アカウント数は大手企業との取引拡大もあって順調に伸びており、解約率も1%を切る状態をキープできていることが業績拡大に貢献している。2025年3月期第1四半期のARRは2,658百万円と前年同期比で28.3%増と引き続き大きく成長した。リカーリング比率は前年同期比2.5ポイント減となったが、同比率は80.5%と高い水準を維持している。ARPAは13,501百万円と前年同期比3.6%減となったが、これはエンタープライズ領域の顧客が増加したことに加え、CHAT領域での競争激化により単価が低下したことが主因である。
※1 ARR(Annual Recurring Revenue)とは、年間経常収益。
※2 ARPA(Average Revenue Per Account)とは、1アカウント当たりの平均売上収益。
(3) 海外事業
2025年3月期第1四半期業績は、売上収益334百万円(前年同期比9.2%増)、セグメント利益24百万円(同59.7%減)と増収減益となった。Zeltoの業績寄与が2024年3月期から本格化し、増収要因の1つとなった。また取引社数も2024年3月期から増加しており、事業基盤強化につながっている。Zeltoの経営については、同社主導によるマネジメントを強化したことで、経営状況が安定して推移した。損益面では売上総利益は順調に推移したものの、Zelto内でのコスト削減等の課題もあり2024年3月期より減益傾向が継続している。今後については、同グループ内でのプロダクトのクロスセルや、Zeltoに関するコスト削減策を実施することにより、収益性を改善するとしている。
4. 財政状況
2025年3月期第1四半期末における流動資産は、前期末比1,377百万円増の7,321百万円となった。これは主に、現金及び現金同等物の増加1,241百万円、営業債権及びその他の債権の増加137百万円によるものである。非流動資産は、前期末比1,761百万円増の15,014百万円となった。主な要因として使用権資産の増加1,005百万円、のれんの増加561百万円によるものである。これにより、資産合計は前期末比3,139百万円増加の22,336百万円となった。
負債合計は、前期末比1,807百万円増の13,714百万円となった。これは主に、営業債務及びその他の債務の増加194百万円、借入金の増加1,395百万円、リース負債の増加1,027百万円によるものである。
資本合計は、前期末比1,331百万円増の8,621百万円となった。主な要因は利益剰余金の増加672百万円、在外営業活動体の換算差額の増加646百万円である。この結果、親会社所有者帰属持分比率は38.4%(前期末比0.6ポイント増)となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、183百万円の収入(前年同期は236百万円の支出)となった。これは主に、税引前四半期利益748百万円、減価償却費及び償却費の計上230百万円、その他の収益の計上645百万円、営業債務及びその他の債務の増加146百万円、法人所得税の支払額218百万円によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、330百万円の支出(前年同期は134百万円の支出)となった。主な要因は無形資産の取得による支出230百万円、有形固定資産の取得による支出59百万円、敷金及び保証金の差入による支出39百万円である。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,326百万円の収入(前年同期は287百万円の支出)となった。これは主に、長期借入れによる収入1,650百万円、長期借入金の返済による支出354百万円、短期借入金の純増額100百万円によるものである。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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