明日の株式相場に向けて=赤丸急上昇の「ホテル関連」に刮目
きょう(15日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比178円高の3万2238円と反発。中国の不動産最大手カントリー・ガーデンの急速な業績悪化が報じられるなか、弱い中国の経済統計が発表され投資家心理を揺さぶっている。統計発表前に機敏に動いた中国人民銀行の金利引き下げも反応は限定的なものにとどまり、上海株や香港株は冴えない動きを続けた。中国リスクに対しては目が慣れているが、高を括ることもできない。
世界的に株式市場にはやや重苦しさが漂っている。前日の欧州株市場は高安まちまちで独DAX、仏CAC40などは高かったが、上げ幅はわずかにとどまり、英FTSE100は続落するなど、正直はっきりしない動きである。米国株市場の方はモルガン・スタンレーの強気リポート効果でエヌビディア<NVDA>が7%高と大きく切り返し、これを起点に半導体株高からハイテク株高へと波高が次第に高まる形となりナスダック総合株価指数は1%強の上昇をみせた。だが、NYダウの方は3日続伸したとはいっても、引け際ドサクサに紛れてプラス圏に片足を踏み入れたような上昇であった。エヌビディアは確かに輝きを放ったが、総論として決して強い地合いではなかった。
そうした気迷いムードはきょうの東京市場にも反映された。前日に日経平均は先物主導で400円あまりの下落をみせたが、この下げ自体に大したインパクトはなかったものの、これまでとは少し異なる雰囲気、違和感はあった。その違和感の正体は円安が進んでいるなかでの株安である。これまで円安と株高はイコールではないにせよ、理屈云々を抜きにしたシステマチックな連動性があったが、この日は違った。投資マネーを司るリスクオンのセオリーが機能していない。きょうの日経平均の反発も覇気がなく、不完全燃焼を思わせる。
米金利上昇を背景に一段と円安に傾いたにもかかわらず、半導体主力株への買いも限定的であった。元来、エヌビディアが急騰すれば反射的に買われるはずのアドバンテスト<6857>の上げ足が鈍く、75日移動平均線を足場に定石通りのリバウンドをみせたが、前日の下げ分を取り戻すには至らず、寄り天に近い状態で陰線を引くあたりは不発の花火を思わせた。投資マネーの流れに変化がみられる。ベクトルの向きがどう変わったかはともかく、ベテランのデイトレーダーであれば潮目の変化を体感温度で感じ取っているかもしれない。
グロース(成長)株に不利な地合いは今に始まったことではないが、今週に入ってからの東証グロース指数やマザーズ指数の崩れ足が、投資マインドの冷え込みを暗示している。「決算絡みとはいえ、中小型グロース株に過剰に売り叩かれる銘柄が相次ぎ、投資家の志気を落としているようだ」(中堅証券アナリスト)という。プライム市場で言えば日経平均が3万2000円台をキープしている状態で弱気になる蓋然性が乏しいのは事実だが、企業の決算発表を通過して、改めて市場を俯瞰すると強気になる要素も見当たらない。売り方も容易に動けないが、買い方も上値を買い進む気力が萎えているのが今の状況といえそうだ。
そのなかで光明となっているのが、インバウンド関連だ。「決算トレード明け」のテーマ買い有力候補だが、とりわけ「ホテル関連」に資金が流れ込んでいる。前日取り上げた明治海運<9115>とコスモスイニシア<8844>はいずれも軽快な上げ足で新値街道に突入したが、引き続き押し目は注目だ。このほかでは、ツカダ・グローバルホールディング<2418>やシー・ヴイ・エス・ベイエリア<2687>などが面白い存在となる。更に、浮動株比率の低い品薄の帝国ホテル<9708>やABホテル<6565>などもマークしておきたい。穴株では近鉄系で三重県に路線網を有しビジネスホテルも展開する三重交通グループホールディングス<3232>や、金沢を本拠とする老舗百貨店でホテル事業も手掛ける大和<8247>などが意外高の可能性を内包しているように見える。
あすのスケジュールでは、7月の訪日外国人客数が午後取引時間終了後に発表される。また、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532>の決算発表が予定されている。海外では、ニュージーランド中銀の政策金利発表、7月の中国70都市新築住宅価格動向、6月のユーロ圏鉱工業生産指数、4~6月ユーロ圏実質GDP(確報値)、7月の英消費者物価指数(CPI)、7月の米鉱工業生産指数、7月の米住宅着工・許可件数など。また、FOMC議事録(7月開催分)が開示される。(銀)
株探ニュース