エヌ・シー・エヌ Research Memo(4):SE構法により資産価値の高い木造建築を提供(2)
■事業概要
2. その他の事業
エヌ・シー・エヌ<7057>は、木造耐震設計事業を主軸としながら「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる」という目標を実現するため、省エネルギー計算サービスや長期優良住宅認定の代行サービス等、住宅の資産価値向上に向けた様々なサービスを手掛けている。
(1) 省エネルギー計算サービス等
省エネルギー計算サービス、長期優良住宅認定代行サービス等を提供している。省エネルギー計算サービスは、2013年に改正された「住宅・建築物の省エネルギー基準」により、一次エネルギーの消費量が評価基準に加わったことや、2020年以降に改正建築物省エネ法が施行されることを見越して2010年にサービスを開始した(改正建築物省エネ法において、2021年4月より住宅の省エネ性能の説明が義務化された)。
同社はSE構法による住宅だけでなく、他の工法による住宅に対してもサービス提供を行い、ゼロエネルギー住宅の普及に向けて取り組んでいる。低燃費な住宅を建てるために消費するエネルギーを抑える手法は多岐にわたり、その1つ1つがきちんと機能しているのか、住宅を建てる前に省エネルギー計算によって確認できる。つまり、省エネルギー計算では、建物を建てる前にその建物がどのぐらいの冷暖房の負荷を必要としているか、予め設計図面から読み取ることが可能だ。同社では、国が定めた計算手法により、断熱性能、日射遮蔽性能、消費するエネルギー量それぞれを求めた計算結果のほか、顧客向けの解説を付け加えた「省エネルギー性能報告書」を発行している。また木造非住宅物件向けの「ZEB」認証の取得申請サポートサービスを開始した。
(2) BIM事業
連結子会社のMAKE HOUSEで、木造住宅の設計から施工までのデータを一元化し、資産価値の高い住宅をより安く市場に提供するため、BIMソリューションの開発及び販売を行っている。なお、2022年6月にペーパレススタジオジャパン(株)が保有するMAKE HOUSEの株式49%を同社が取得し、完全子会社化した。
MAKE HOUSEは、BIMを用いた業務の効率化や建築のIT化を推進する。建築事業者へのBIMコンサルティング事業に加え、プロジェクトを直接サポートするBIMプロジェクト受託事業を行っている。他にも、VR(仮想現実)やMR(複合現実)の技術を駆使したコンテンツ制作からプレゼンテーション環境構築などの各種シミュレーション、BIM自動化と高速化のための各種ツール開発などを展開している。BIMについては国内ゼネコンにおける導入率が約8割まで上昇(2018年時点)しているものの、木造分野では導入率が低くデータは不在で、世界各国でBIM導入義務化への取り組みが推進されているなかで、日本は大幅に出遅れている。日本政府はDX推進としてBIMの原則導入による3次元データの活用を促進している。2D設計では設計者が想像するしかなく干渉部位を見つけることが困難であるが、BIMによって可視化された干渉チェック作業の効率化や、周辺環境を含めた施工計画の作成、3Dモデルからの数量や工事費算出の自動化が可能となることから、受発注者双方の働き方に変革を起こす。木造建築物のBIM事業で強みを持つ同社にとって、今後の成長エンジンとなる事業と弊社では考えている。
(3) 住宅ローン事業(SE住宅ローンサービス)
持分法適用関連会社のSE住宅ローンサービスが、クレディセゾン<8253>のの代理店として「フラット35」の取次をし、登録施工店に発注する住宅取得者を資金面でバックアップする。「フラット35」は耐震性や省エネルギー性等が高い良質な住宅に対して当初金利を引下げるものであり、エヌ・シー・エヌの良質な住宅へのサポートと併せて、お得で安心できる住宅ローンを提供している。また、2023年7月には、SE住宅ローンサービスと同じくクレディセゾンの代理店として「フラット35」を扱い、銀行代理業や火災保険等の保険サービス等の住宅金融代理業を展開しているパブリックホールディングス(株)へ、保有するSE住宅ローンサービスの株式の60%を譲渡した。今回の株式譲渡により、SE住宅ローンサービスは、同社とパブリックホールディングスとの合弁事業として展開する方針だ。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
《AS》
株探ニュース