エヌ・シー・エヌ Research Memo(9):2025年3月期は、脱炭素化に向けた事業の拡大を予想(1)
■今後の見通し
1. 2025年3月期の業績予想
エヌ・シー・エヌ<7057>の2025年3月期の業績予想は、売上高8,976百万円(前期比12.2%増)、営業利益223百万円(同168.6%増)、経常利益285百万円(同497.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益208百万円(前期は0百万円)を見込んでいる。3ヶ年中期計画の2年目となる2025年3月期は、住宅需要の減少という環境要因はあるものの、脱炭素化に向けたグリーン化や2025年4月からの省エネ基準への適合の義務化など、社会要請に対応した事業拡大が予測される。これらの好機に応じ、住宅分野では木造住宅における簡易設計の基準強化に対応し、大規模木造建築(非住宅)分野では拡大するニーズを捉え、これまで培ってきた技術やノウハウ等を生かして事業を推進することで、成長を目指す。
住宅分野では、売上高5,531百万円(前期比13.2%増)を見込む。これまで進めてきた建築基準法改正に向けたプロセスを完成させ、SE構法出荷数を1,035棟(同14.1%増)まで回復させる。登録施工店等での構造計算出荷数については、先行指標となる見積り、設計依頼等の受付数(引き合い数)が2024年3月期第4四半期から回復基調にあり、626件(第3四半期比7.6%増)を記録した。同社は、登録施工店が顧客からの相談を受け付けた段階から、「構造計算ナビ」「耐震シミュレーション」「省エネシミュレーション」の3つのサービスを活用し、顧客要望に沿った構造計算や省エネシミュレーションを行い、設計図面を登録施工店に提案する。この施策は、施工店での案件受注率アップに寄与していることから、2025年3月期も継続して登録施工店の営業をサポートし、受注拡大を図る。
大規模木造建築(非住宅)分野では、売上高3,020百万円(前期比9.4%増)を見込む。木構造デザインによるSE構法以外の工法にも対応した大規模木造建築のワンストップサービスが収益に寄与する見通しだ。翠豊では、大阪万博パビリオンの大型案件の出荷が予定されており、売上高の押し上げ効果が期待される。このほか、BIMによる高画質建築区間シミュレーションサービス「MAKE ViZ」の拡販強化により、翠豊単体での黒字化を目指す。また、同社との関係としては、同社が対応したSE構法の出荷に関する施工を翠豊が請け負うなどシナジーが発揮されている。従来は施工が他社に流れるような案件でも両社がタッグを組むことで設計から施工までの受注をグループで獲得する案件が増えている。翠豊は同業他社と同様に人手不足や職人の高齢化という課題を抱えているが、同社からの投資でロボット加工機を購入し、木材の加工効率をあげるなどの成果も現れてきている。シナジーによる翠豊の成長がグループの業績拡大に大きく寄与することが期待される。
持分法適用関連会社であるMUJI HOUSEについては、ウッドショックの解消により今後の利益の回復が見込まれる。良品計画が今後出店する木造店舗についてはMUJI HOUSEが建築することを発表しており、竣工・引渡しが進むに伴い売上増加と黒字化が期待できる。一方、2024年3月期は年間ベースで300棟程度のリノベーション物件を手掛けるなど、リノベーション分野でも実績をあげており、この分野での事業拡大が期待される。
その他分野では、売上高424百万円(前期比21.3%増)を見込む。環境分野では、2025年の省エネルギー計算の義務化を受けて、住宅向けの省エネルギー計算出荷の増加を見込んでおり、3,559件(同23.3%増)の出荷を計画している。非住宅物件向けにはZEB化支援を、MAKE HOUSEでは「MAKE ViZ」の拡販を強化していく。技術分野では、木構造技術センターを積極的に活用し、国産材の利用率向上に寄与する。
利益面では、増収効果に加え、子会社の大型案件出荷やウッドショックの解消による黒字化等により大幅な増益を見込む。建築基準法改正等に向けたマーケティング活動の強化により、引き続き広告宣伝費増加が予想されるが、売上高営業利益率は2.5%(前期は1.0%)を確保する。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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