明日の株式相場に向けて=新年度相場の突風は買い向かうチャンス
名実ともに新年度相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比566円安の3万9803円と大幅反落。新年度相場入りとなり気勢が上がるかと思いきや、期待を持たせたのは取引開始後の数分間だけだった。日経平均は寄り付き直後に320円あまりの上昇をみせたが、ほぼ寄り付き天井の形となり、それ以降は雪崩のような売り物に押し流される展開へと変わった。
年度替わりの初日とはいっても機関投資家はドライである。3月中旬から年度末にかけての望外の上昇によって日経平均が再び4万円台に乗せたことから、金融機関や年金資金は遠慮なく利益確定売り、いわゆる益出しに動き、対して買い向かう動きはまばらで相場はバランスを保てなかった。前場は、これに便乗しての売り仕掛けも観測され、日経平均は前引け段階で600円を超える下げに見舞われた。寄り直後の高値から前場の安値までザックリ1000円近い大陰線を形成する羽目となった。
しかし、ここで弱気になる必要もなさそうだ。全体指数は急落を余儀なくされたものの、相場の自律神経が失われているようなイメージはない。例えば、ファナック<6954>や安川電機<6506>、キーエンス<6861>、ダイキン工業<6367>など機械セクターが頑強な値動きを示した。市場では「朝方取引開始前に発表された3月の日銀短観で、設備投資計画が事前コンセンサスを上回ったことが好感された」という解釈がなされていたが、それ以上に中国国家統計局が前日に発表した3月の製造業PMIと非製造業PMIが、想定以上に強い数字だったことによる可能性が高い。機械セクター以外でもニデック<6594>が強かったほか、資生堂<4911>やユニ・チャーム<8113>などに買いが先行したことにも反映されている。政府主導の不動産バブル崩壊が与えた中国実態経済への影響が軽微であることを印象づけ、これは中国関連株への見直しにつながる公算もある。
4月相場は海外投資家が買い越しに動く可能性が高いことがデータ的に裏付けられている。過去10年間を振り返って月間ベースで9回買い越しており、売り越したのは2020年のみ。いうまでもなく、海外投資家が日本株を売り越したのは2月下旬から3月中旬にかけて“コロナ暴落”を経験した年の4月である。一方、同月の日経平均の騰落は過去10年では6勝4敗で、必ずしもパフォーマンスの良い月とはいえないが、高かった6回の平均上昇率は3.7%、安かった4回の平均下落率は2.2%で、総じて上昇局面の勢いが下落局面を上回っている。したがって、慎重さは必要ながら新年度相場で4万円を割り込んだ水準はむしろチャンスと捉えたい。出足つまずいてもそこは買い場提供となっている公算は大きく、ここでも「森より木」を重視したスタンスで銘柄選別を心掛けたい。
きょうのような全体相場が荒れた地合いのなかでは、冷静に好実態株を拾うチャンスともなる。低位株ではライブ配信アプリが絶好調のjig.jp<5244>に意外性あり。2月中旬の下落局面で開けたマドをほぼ埋めたところだが、中期波動でも早晩13週・26週移動平均線のゴールデンクロスが想定され、底値ゾーンの時価近辺は妙味がある。また、パワー半導体関連の雄である三社電機製作所<6882>も好業績変化率かつPER面の割安感が強く、1700円近辺のもみ合いは買いに分がありそうだ。このほか、日産向けで実績が高い自動車部品会社のユニバンス<7254>は24年3月期営業利益が前の期比3倍化する見通しにあり、配当も3円増配を計画。PBRが0.6倍台にあることを考慮すると依然として水準訂正余地があり、低PBR是正を視野に一段の株主還元強化も期待される。
テーマ買いの流れでは、ようやく桜が開花したことでインバウンド関連に改めて光が当たる可能性がある。ツカダ・グローバルホールディング<2418>やシー・ヴイ・エス・ベイエリア<2687>、日本空港ビルデング<9706>などの押し目に着目してみたい。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に3月のマネタリーベースが日銀から発表される。また、午後取引終了後に3月の財政資金対民間収支が開示される。このほか、午前中に10年物国債の入札が行われる。海外では豪中銀理事会の議事要旨(3月開催分)、3月の独消費者物価指数(CPI)速報値、2月の米雇用動態調査、2月の米製造業受注など。また、NY連銀のウィリアムズ総裁がNPO主催の討議に参加予定で、そこでの発言内容が注目される。(銀)
株探ニュース