ギフトHD Research Memo(3):様々なブランドを直営店とプロデュース店で提供(1)
■ギフトホールディングス<9279>の事業概要
4. 事業内容
同社は、個人店としての魅力とチェーンストアの効率を融合させたラーメン事業を展開、直営店(直営事業部門)とプロデュース店(プロデュース事業部門)という2つのチャネル形態でラーメンを提供している。直営店事業部門では、いつでもどの店でも「美味い」と言ってもらえる味の追求はもちろん、エンターテインメント性溢れる店舗空間で細やかなサービスを提供している。プロデュース事業部門では、直営店で蓄積された繁盛店のノウハウやPB商品をプロデュース店に提供し、地域に愛される店舗づくりをサポートしている。また、「ラーメンを、世界への贈り物に。」を事業コンセプトに世界中にラーメンの旨さを伝えるため、海外展開を推進中である。
(1) 直営店事業部門
主力業態である横浜家系ラーメン「町田商店」は、1974年頃に登場した横浜発祥の豚骨醤油ベースのラーメンで、生ガラ(豚骨、鶏骨等)から採ったダシに醤油のタレを混ぜた豚骨醤油ベースのクリーミーなスープと中太麺、さらにほうれん草やチャーシュー、海苔のトッピングを基本的な盛り付けとしている。加えて、味の濃さ、スープの脂の量、麺のゆで加減、他の様々なトッピングの追加などアレンジ可能な点が特徴で、主力のラーメンのほかMAXラーメン、ネギラーメン、つけ麺などが人気だ。
ターゲットは、駅近エリアはサラリーマンや単身層で、ロードサイドエリアはファミリー層である。しかし、駅近エリア、ロードサイドエリアのいずれも、チェーンストアとして標準化されたQSCA(クオリティ、サービス、クレンリネス、アトモスフィア)を提供している。横浜家系ラーメンは従来街道沿いの立地が多く、客層はトラックの運転手などに偏っていたが、出店範囲を駅近エリアやロードサイドエリアに広げ、QSCAの改善によって客層を女性や家族へと拡大したことが、同社の成長の基点になったと思われる。なお、ロードサイドエリアの店舗は敷地が広く、駐車場を有し席数も多いため、売上は大きくなるが、投資額も大きく回収期間が長くなる傾向がある。また、駅近とロードサイドという収益構造も対照的な立地でラーメン店として人気を博している店は他に多くなく、同社の大きな特徴だ。現在、フードコートやサービスエリアなどでの立地可能性も検証している。
同社は横浜家系ラーメン以外の業態も展開している。「豚山」は豚骨ベースの醤油スープに、チャーシューをダイナミックに乗せたガッツリ系ラーメンで、にんにく、野菜、背脂などを好みで調整できる。手が込んでいる分、商品力が強く、「町田商店」に次ぐ第2ブランドとして多店舗展開を進めている。「町田商店」とは原価構成やオペレーションに違いがあるものの、集客力は同等以上だ。しかし、工程やスキルといった面から出店数が年間10店程度に限られるため、今のところ成長ドライバーになりきれていないようだ。一方、油そば「元祖油堂」が第3ブランドとして出店を加速している。スープレスであることなど工程やスキルの面で出店の制約が少ないことも背景にあるが、中華麺用粉にパスタ粉を配合し作り上げた風味豊かでモッチリ感のあるこだわりの「油そば専用麺」や、黒烏龍茶・ジャスミンティーなど無料のドリンクバーと締めのスープ、自分だけの味変が楽しめる追加トッピング(チーズなど)と10種類以上の卓上調味料、女性が入りやすい内装などが人気の要因だと思われる。「豚山」「元祖油堂」もロードサイド出店や商業施設内立地など、様々な立地や運営による新たな展開を進めている。
そのほか、「がっとん」は長時間炊き込み熟成させたスープが特徴の九州豚骨ラーメンで、麺の硬さは好みにより6段階から選ぶことができる。コロワイド<7616>から買収した「四天王」はあっさりしたコクが特徴の豚骨ラーメンである。このほか、新潟県長岡市のご当地生姜醤油ラーメン「長岡食堂」、炒めた野菜の旨味たっぷりの味噌ラーメン「赤みそ家」、旨味がたっぷり溶け込んだスープの味噌ラーメン「いと井」など、定番の味噌業態や醤油業態も展開、自社開発やM&Aによりさらなる業態開発も継続している。また、海外ブランドとして、横浜家系ラーメンをベースにローカルニーズに合わせた味で提供する「E.A.K. RAMEN」がある。
このように同社は、市場規模6,000億円のラーメン業界をサブマーケットで区切り、それぞれに味・立地・サービスで強力に差別化できる繁盛業態を開発している。サブマーケット同士は直接競合しないため共存が可能で、それぞれのマーケットで繁盛店を開発できれば同一エリアに複数業態を出店することができ、ラーメン業界でのシェアを最大化できる。これまで横浜家系ラーメン「町田商店」、ガッツリ系ラーメン「豚山」、油そば「元祖油堂」の3ブランドを繁盛業態として完成させ、有力エリアに複数業態で出店を進めてきた。さらに、サブマーケットで最大といわれる中華そばマーケットをターゲットに業態開発を急いでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《HN》
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