明日の株式相場に向けて=脱デフレ、経済正常化の次は「株価正常化」
週明け2日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比97円安の3万1759円と続落。きょうは前場と後場で風景が激変した。米国では土壇場でつなぎ予算が成立、政府機関の閉鎖がとりあえず解消(先延ばし)された。これを好感するというよりは、ヘッジ売りや戦略的な空売りを先物に入れていた向きが一斉に買い戻しに転じ、日経平均は朝方に540円あまりも上昇する場面があった。ところが、3万2400円台まで一気に水準を切り上げたものの、買い戻しが終了すると途端に日経平均株価は上値が重くなった。後場に入ると実需の買いが入らないのを見越したように再び売りの洗礼を浴び、日経平均は前場の上昇分をすべて吐き出し、マイナス圏に突入。大引けは3万1000円台に逆戻りし安値引けという結末だった。東証グロース市場の状況を見ても瞭然だが、PERやPBRなどの高い銘柄はトコトン厳しい地合いとなっている。しかし、消去法的ではあってもバリュー株への資金誘導は頼みの綱で、個別株物色の支えとなっている。
バリュー株物色の懐は深い。これは経済正常化ならぬ、会社解散価値を極端に割り込んだ企業群の「株価正常化」の波が押し寄せてきたということであり、今回の東京市場における“バリュー選好”の根幹をなしている。元来、当該企業の全株式を買い取って即事業を停止して純資産(株主資本)を売却すればお釣りがくる状態というのは、投資する側にすれば資金を投下する意味をなさない。損益赤字でもないのにそんな馬鹿な話が、東京市場(プライム・スタンダード市場)には2社に1社の割合で当てはまる状況にある。株式市場で株価を「フリーズ」させた銘柄が溢れている。だが、その解凍が少しずつ進み始めた。
例えばPBR0.33倍の企業は解散価値の3分の1の評価となるが、この企業がしっかりと収益を確保していて株主還元にも努め、なおかつ将来的にも通用する技術もしくはサービスを有しているとすればどうか。現在の株価は“イレギュラーの極み”といっても過言ではない。この水準に放置されているのは明らかにおかしいというコンセプトが生まれる。ここから更にPBR0.2倍、解散価値の5分の1まで売り込んでしまえというような売り圧力はよほどの理由がない限り発生しない。下値は岩盤である。一方、東証による低PBR改善の大号令がかかったことで、マーケットに見向きもされないまま、今と同水準(PBR0.33倍)の株価が今後延々と続く可能性も限りなく低くなった。株高に向けた水準訂正あるのみである。後は誰が先にバーゲン価格で拾うかという勝負となる。
投資の初心者は個別株で絞り込まなくても、PBR1倍割れ解消推進ETF<2080>というETFにタイムカプセル感覚で資金を投下して寝かせておくのも一法だ。短期の値幅取り妙味は薄いが、日本経済が再びデフレの深淵に引きずり込まれるようなことがない限り、とりわけインフレ局面では確実に日の目を見ることになる。
今はまだ“PBR1倍復帰”というテーマは助走段階に過ぎない。前週末9月30日にアップされた株探トップ特集の「バリュー株の新たなる金鉱脈発見!『化ける低PBR株』特選8銘柄」では、プライム市場の値上がり率3位となった北川鉄工所<6317>をはじめ、好パフォーマンスが相次いだ。ユニプレス<5949>が前日比変わらずで引けた以外はすべてが上昇している。グロース株と違って、超低PBR株は業績が減益予想でも売られる蓋然性に乏しい。もちろん業績が上向きであることに越したことはないが、赤字で純資産を食い潰す状態にでもならない限り、株価評価で俎上に載るのはフローではなくあくまでストックの観点である。
同特集以外の銘柄でいくつか超低PBR株の水準訂正候補を挙げると、地銀株では京葉銀行<8544>、百五銀行<8368>、東和銀行<8558>などをマークしてみたい。また、自動車周辺ではエイチワン<5989>のほか、引き続きアーレスティ<5852>の押し目をマーク。これ以外に、鉄鋼セクターで虹技<5603>、紙パルプセクターの中越パルプ工業<3877>、このほか、ディスポーザブル医療器具のJMS<7702>なども穴株妙味がある。
あすのスケジュールでは、9月のマネタリーベースが朝方取引開始前に日銀から発表されるほか、午前中に10年国債の入札が予定されている。午後取引終了後に9月の財政資金対民間収支が開示される。また、東証スタンダード市場に西部技研<6223>、ニッポンインシュア<5843>が新規上場する。海外では豪中銀が政策金利を発表するほか、米国では8月の雇用動態調査(JOLTS)が注目されている。なお、中国と韓国市場は休場となる。(銀)
最終更新日:2023年10月02日 18時29分
株探ニュース