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「新型コロナ」第11波突入、コロナ禍で奮闘した“あの株”再び <株探トップ特集>

特集
2024年7月29日 19時30分

―5類移行で日常が戻るも、変異株「KP.3」への置き換わり進み懸念広がる―

新型コロナウイルスの感染が、ここにきて再び拡大している。感染力が強いとされる変異株「KP.3」への置き換わりも進展、新型コロナ第11波へ突入したとの見方も強く警戒感が高まっている。新型コロナ感染症の感染症法上の分類が、昨年5月8日から5類へ移行、ようやく戻ってきた日常にも慣れたところだった。2020年1月に国内で新型コロナの感染が確認されてから約4年半が経過しているが、コロナ禍で投資家の熱い視線を浴びた、さまざまな対策関連株は現在どうなっているのだろうか。新型コロナ関連株の“いま”を追った。

●対岸の火事から一変で「出世株」続出

20年1月15日、国内で感染者が初めて確認された。そして、20日に横浜を出港したクルーズ船の乗客の感染が2月1日に確認されたことで、日本もパンデミックの渦に巻き込まれ大混乱に陥ることになった。前年に、中国で原因不明の未知のウイルスと言われていた新型コロナの感染拡大が騒がれ始めた当初は、まさに対岸の火事といったムードだったが、それが一変することになる。

感染拡大とともに経済活動はストップ。株式市場ではウイルス除去やマスク、防護服、 PCR検査など防疫に絡む銘柄にスポットライトが当たった。また、ソーシャルディスタンスが求められる状況で “新しい日常”が急速に社会生活を変質させることとなった。こうしたなか、3密回避のためITを駆使し新規ビジネスで頭角を現す銘柄が続出することになる。診療、イベント、教育、そしてテレワークなどオンラインを利用した新たな社会生活が急速に浸透し、それとともにこうした市場が急拡大。さまざまな分野に絡む関連銘柄は、まさにコロナ禍の出世株だった。

そして現在、厚生労働省が毎週金曜日に公表する新型コロナ感染者の定点当たり報告数によると、最新の7月15~21日の週は1医療機関当たりの患者数は平均13.62人と11週連続で増加。6月17~23日の週が同4.61人だったことを考えると、約1カ月で3倍化していることになる。5類へ移行しているとはいえ、ここにきて感染が拡大しており、不安感が台頭する状況にある。

●初登場は大幸薬品

当時、未知のウイルスの中国における感染拡大が伝わるなか、新型コロナの株探における記事での初登場は、国内感染が確認される以前の20年1月10日に掲載された「大幸薬品 <4574> [東証P]は続伸、武漢で発生の肺炎からコロナウイルス検出で思惑」だった。この記事を皮切りに、新型コロナ絡みの記事が増えていく。大幸薬品は、二酸化塩素分子の力でウイルス・菌・ニオイを除去する「クレベリン」を手掛けることで、感染拡大当初には防疫関連の一角として注目を集め株価も急上昇した。ただ、同年8月に3000円手前で天井をつけ、その後は下落の一途をたどることになる。長期にわたる株価低迷も昨年12月にようやく底入れを果たし、切り返し局面に入った。同社の24年12月期の連結営業利益は、4期ぶりの黒字転換を計画している。

●マスク関連はコロナ禍の象徴

感染が拡大するなか、マスクの品不足が深刻化していく。こうした状況で、株式市場で注目されたのが、医家用衛生材料最大手の川本産業 <3604> [東証S]やダイワボウホールディングス <3107> [東証P]、シキボウ <3109> [東証P]といった「マスク関連」の一角だった。

このなか、川本産業の株価は大変貌を遂げることになる。20年の年初には450円だった株価が、2月3日には4000円まで急騰し投資家の視線を釘付けにした。物色人気がヒートアップしたことにより、短期間で約9倍化することになった。川本産業の、新型コロナに対する株価感応度はいまも健在のようだ。新型コロナの感染再拡大が伝わり始めた今月中旬から上げ足を強め、780円近辺でもみ合っていた株価が上放れ、18日には長い上ヒゲで871円まで買われている。現在は、往って来いの状況で、上昇開始近辺に値をもとに戻している。コロナ禍からの脱却もあり需要が減少したことで苦しんだが、ここにきてようやく回復色をみせ始めた。25年3月期の連結営業利益は、前期比21.9%増の5億円を予想している。

マスク関連株の象徴と言えるユニ・チャーム <8113> [東証P]だが、コロナ禍にあっては、マスクの供給不足に対応するため、24時間操業で製造を行うなどその奮闘が印象に残る。業績も好調で、24年12月期の連結業績は、コア営業利益で前期比12.5%増の1440億円を計画。連続で過去最高益を更新する見込みだ。株価は、4月19日に4357円まで売られ直近安値をつけたが、ここを起点に切り返し今月5日には5354円まで買われた。現在は、全体相場が波乱展開となるなか調整し、5000円近辺で頑強展開となっている。

そのほかのマスク絡みでは重松製作所 <7980> [東証S]、興研 <7963> [東証S]などのコロナ禍での株価動向が記憶に残る。このうち重松製は、新型コロナの5類移行が響き感染対策用のマスクの受注が低調だったものの、主要顧客の製造業からの受注が堅調だったことで、25年3月期単独営業利益は前期比19.8%増の9億4000万円を計画している。株価は、ここにきての感染拡大を受け上下に荒い値動きとなっているが、押し目買いニーズも見られ、ここからの展開には目を配っておきたいところだ。

●PCR検査拡充で特需発生

感染拡大の当初、日本における感染者数について検査数の少なさが指摘され、実態把握にほど遠いとの声が国内外から上がった。こうした批判を受け、官民挙げてPCR検査の体制強化が進んだことで検査件数が大幅に増加。臨床検査大手のファルコホールディングス <4671> [東証S]やビー・エム・エル <4694> [東証P]、臨床検査薬ではH.U.グループホールディングス <4544> [東証P]、そして独自技術である遺伝子増幅技術「LAMP法」を用いた新型コロナ遺伝子検査試薬で注目を集めた栄研化学 <4549> [東証P]などに“特需”が発生した。

このうち栄研化の25年3月期連結業績予想は、営業利益段階で前期比67.6%増の56億6000万円を計画。同社は、中期経営計画に沿って「がんの予防・治療への貢献」「感染症撲滅・感染制御への貢献」「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」の3つの注力事業分野を中心に、持続的成長と着実な収益性の向上を目指す。株価は、ここ全体相場が波乱にあっても上値指向を続け、年初来高値圏を快走しているだけに、ここからの値動きに注目が集まる。

●タカラバイオ、島津も奮闘

タカラバイオ <4974> [東証P]は、遺伝子研究用試薬と機器販売が主力で、再生医療にも積極的だが、コロナ禍には新型コロナ検査関連試薬で需要を捉えた。今月17日には、より高品質なmRNAワクチン開発用試薬を発売。新型コロナに対するmRNAワクチンの実用化をきっかけに、mRNAは新たな創薬治療法として、感染症予防だけでなく、がん治療などの目的でも研究開発が活発になっている。25年3月期の連結営業利益は前期比66.5%増の50億円を見込む。

また、計測・分析器大手の島津製作所 <7701> [東証P]は、新型コロナ感染拡大初期から検出試薬キットなどを手掛けて、当時脆弱だった検査体制の拡充に努めてきたことで評価が高い。現在は、ヘルスケア、グリーン、マテリアル、インダストリーといった4領域に注力、業績も好調だ。25年3月期連結営業利益は、前期比4.5%増の760億円と5期連続の最高益更新を予想している。

●空間除菌装置にスポットライト

また予防の観点から、さまざまな技術を用い感染拡大に立ち向かった銘柄にも、当時スポットライトが当たった。

日機装 <6376> [東証P]は、20年1月に自社の空間除菌消臭装置「Aeropure(エアロピュア)」を発売。ノーベル賞受賞者と共同開発をした深紫外線LEDと、光触媒フィルターを組み合わせた除菌消臭技術で、空間をクリーンに保つ製品で、株式市場でも熱い視線が注がれた。今年に入っても、4月には鹿島 <1812> [東証P]と感染対策に配慮した空調システム「Stela UVC」 (ステラ ユーブイシー) を共同開発し製品化したと発表している。同社の24年12月期連結業績予想は営業利益で前期比52.9%増の90億円を見込む。

また、自治体、医師会、介護分野に特化したクラウドサービスを展開するカナミックネットワーク <3939> [東証P]も、20年4月に新型コロナ感染症などへの対策として屋内空間用紫外線殺菌装置「UVCエアクリーンmanager」の販売を開始。緊急事態宣言が発出されるなか関心が集まった。医療機関、介護施設、学校、飲食店など幅広い業態で需要が見込まれることが予想され期待が高まった。24年9月期の連結営業利益は前期比27.7%増の14億円を計画し、過去最高益を更新する見込みだ。

株探ニュース

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