Jトラスト Research Memo(6):東南アジア金融事業は営業利益率は6.1%に改善し、グループの業績に貢献
■業績動向
(3) 東南アジア金融事業
Jトラスト<8508>の2024年12月期第2四半期の営業収益は23,193百万円(前年同期比32.6%増)、営業利益は1,410百万円(同83.8%増)となった。営業収益は、銀行業における貸出金の増加や新規貸出金利の上昇等により増収となった。営業利益は、優良な貸出金の積み上げによる利息収益の増加や貸倒引当金繰入額の減少などにより増益となった。この結果、営業利益率は6.1%に改善し、グループの業績に貢献した。
a) Jトラスト銀行インドネシア
Jトラスト銀行インドネシアにおける、法人大企業や国営企業を中心とする貸出残高は2024年6月末には2,685億円と順調に増加した。不良債権化抑制と回収による不良債権の圧縮に加え貸出残高の増加もあり、不良債権比率はインドネシア銀行業界平均の2.3%(2024年5月末)を下回る1.20%の低位で推移し、貸倒引当金を控除したネットは0.95%であった。2020年1月以降の新体制で積み上げた貸出残高は全体の96.18%まで拡大したが、その不良債権比率はグロスで0.43%に留まり、不良債権はほぼ発生していない。リスクマネジメントを強化した成果が表れたと言える。また、住宅ローンの残高は順調に増加した。
預金残高も3,402億円(2024年6月末)に増加した。預金金利は5.86%とやや上昇したが、インドネシアの政策金利(中央銀行の民間銀行への貸出金利、2024年4月に6.00%から6.25%に引き上げ)より低位で推移していることもJトラスト銀行インドネシアの好業績に貢献している。低金利の流動性預金を増やすために、普通預金の主力商品である「Tora預金」の増強に注力している。
インドネシアのサービサーであるPT JTRUST INVESTMENTS INDONESIA(以下、Jトラストインベストメンツインドネシア)及びPT TURNAROUND ASSET INDONESIA(以下、ターンアラウンドアセットインドネシア)2社の請求債権残高は、不良債権の買取りが順調に進んだことから、2024年6月末には1,136億円と順調に増加した。韓国系の金融会社で、主に消費者ローンの不良債権回収を担っているターンアラウンドアセットインドネシアは計画どおり設立後3年半で黒字化し、今後は利益貢献を見込んでいる。
b) Jトラストロイヤル銀行
カンボジアのJトラストロイヤル銀行では、貸出残高を引き続き戦略的にコントロールして質の向上を進めており、2024年6月末には1,517億円に減少した。カンボジア経済が中国経済悪化の影響を受けていることを主因に、不良債権比率は7.78%、貸倒引当金を控除したネットでは4.00%となった。担保物件の競売や法的手続き等による回収とモニタリングを強化し、不良債権比率の抑制に努める方針だ。
一方、2024年6月末の預金残高は1,523億円、預金金利は3.95%となった。カンボジアでは信用力の高い米ドルが主に流通し、銀行の預金金利は米国金利に連動して上昇傾向にあるため、預金獲得競争が続いている。同社では、貸出とのバランスを考慮し預金残高をコントロールするとともに、預金利息費用の圧縮を図るため普通預金の獲得を強化している。
(4) 不動産事業
不動産事業については、主にJグランド、グローベルス<193A>及び(株)ライブレントが国内で、Prospect Asset Management, Inc.が米国ハワイ州で、それぞれ不動産事業を行っている。2024年12月期第2四半期の営業収益は、Jグランド及びグローベルスでの販売用不動産における販売収益の増加やライブレントの連結化等により、10,641百万円(前年同期比68.9%増)の増収となった。営業利益は前年同期に計上したミライノベートの吸収合併により生じた負ののれん発生益10,113百万円の剥落に伴い、334百万円(同96.7%減)に減少した。ただ、その影響を除けば3億円の増益であった。
Jグランドの2024年12月期第2四半期の売上高は4,214百万円(前年同期比65%増)となった。新築マンションのJ-ARCシリーズは、数億円単位の大型相続税対策として人気シリーズである。グローベルスは、土地・戸建・マンション・収益物件・クラウドファンディングに携わる総合不動産会社として着実に事業規模を拡大している。2024年6月にTOKYO PRO Marketに株式上場を果たし、今後の成長に向けた調達力アップが見込まれる。
(5) 投資事業
投資事業については、主にJTRUST ASIA PTE. LTD.(Jトラストアジア)が投資事業及び投資先の経営支援を行っている。2024年12月期第2四半期の営業収益は4百万円(前年同期比95.6%減)となり、訴訟費用の増加により611百万円の営業損失(前年同期は960百万円の損失)を計上した。2023年4月には、シンガポール高等法院において被告のGroup Lease PCLらに対して約124百万米ドル(約18,173百万円、1米ドル=146円換算)と、これに対する2021年8月からの利息の支払い等を命じる判決が下り、2024年1月に判決が確定した。同社では裁判で争った金銭債権に対して既に十分な貸倒引当金を設定しており将来の回収金は利益計上される。今後も回収に注力することでグループ業績に貢献する計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《HN》
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