本決算シーズン到来、今年の「サプライズ」はどの程度?
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第15回
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
なお、これ以降の掲載する分析データは下記の通りになります。銘柄の母集団はTOPIX500構成銘柄のうち3月末を期末とする銘柄。予想データはI/B/E/Sの今期コンセンサス予想データ(中央値)を使用します。
分析期間は、四半期決算が開始した2004年から18年までの14年間で、図中のファクターの値は、本決算発表日から起算して10営業日前時点の各銘柄の市場平均との相対値を平均したものです。またポジティブ反応の定義は、決算発表の当日または翌日に株価が、対TOPIXで+3%以上の変動を見せた銘柄の3カ月リターンと決算発表銘柄の平均リターンとの比較を見ると、ほぼ方向性が一致していることです。
話を戻すと、先に示した予想EPSについては、例外はありますが分析期間を通じて、ポジティブ反応を見せた銘柄は成長率が高い傾向があります。
予想EPS以外に注目するのは「過去3カ月リターン」
これは、一見すると当たり前のように感じるデータですが、細かく見ると言葉通りに捉えるのが難しい面もあります。例えば、前回好況時であった06年以降の数年に起きた金融危機の間、そして直近の1~2年は効果が弱く安定しません。
そこで、これをサポートする意味合いでもう1つのファクターである過去3カ月株価リターンを見てみたいと思います。
予想EPSと過去3カ月リターンの傾向から分かること
こちらは、先ほどのEPS成長率と比較した場合、一見すると効果が安定しません。年によって、株価が上昇した銘柄がポジティブな反応を示したり、その逆も見られたりします。しかし、一部の例外を除き一貫しているのは、ポジティブ反応銘柄です。
つまり、決算発表前に市場平均が上昇傾向にある場合は、それを上回る銘柄上昇を見せた銘柄が発表時にポジティブな反応をしやすく、下落傾向にある場合はそれを下回る下落を見せた銘柄が一転してポジティブな反応をしやすいということです。
そして、予想EPSの成長傾向と組み合わせていえば、市場が上昇基調にある中でそれを上回る株価の上昇を見せ、かつ予想EPSのプラス成長が見込まれる銘柄は、決算発表時にダメ押しのポジティブ反応を見せやすくなります(株価だけ見れば順張り)。
一方、プラスの成長が見込まれているが何らかの悪材料で市場の下落を超えるペースで下落している銘柄は、決算発表を機に過剰反応の修正や悪材料出尽くしで反転しやすくなる(株価だけ見れば逆張り)、となります。
年初からの株価上昇によって、市場全体の過去3カ月リターンは上昇基調にあることから、ロング(買い)でサプライズ効果を狙う場合は、①予想EPSがプラス成長で、②過去3カ月の市場超過リターンがプラスである銘柄が候補になります。
無論、これは全体の傾向を示したもので、全ての銘柄に等しく当てはまるものではありません。しかし、候補を選定する上での下地に、こうした観点から銘柄群を特定し、収益機会を得るためには有用性の高い考え方であると思われます。
参考までに、以下に今回の条件に合致する参考銘柄リストを掲載しておきます。
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