「ものすごい優良銘柄」、高勝率・お手頃・持続力の三拍子で波乱をかわす
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第39回
まず、過去の勝率のみをベースに投資効果を検証します。方法はシンプルに、2019年3月末時点での過去14年間の勝率ランキングに基づき、上位50銘柄、下位50銘柄のその後1年間(2020年3月末まで)の株価リターンに差があるのかを見れば、勝率による投資効果の大まかな傾向をつかめるはずです。実際に銘柄を抽出して集計すると、以下のようになります。
■EPS成長率の勝率が上位と下位50銘柄の過去1年間のリターン平均値
出所:データストリーム。注:2019年3月末基準
1位のカカクコムは平均並みの上昇率、4位のベネ・ステはアンダーパフォーム
両者間で数字に大きな違いが見られます。これを見るかぎり、優良銘柄はそうでない銘柄に比して強くアウトパフォームする傾向にあるといえそうです。しかし、腑に落ちない点があります。
個別に見ると、例に挙げた勝率1位のカカクコムは先の1年間の株価パフォーマンスはTOPIX相対でプラス5%なのですが、勝率4位のベネフィット・ワンはマイナス23%という数字なのです。
カカクコムのパフォーマンスは決して悪くはないのですが、実は上位50銘柄の平均値であるプラス7%に劣っています。またマイナスパフォーマンスのベネフィット・ワンについては、その値が下位50銘柄の平均とほぼ同じなのです。これは優良銘柄とはとても思えない屈辱的な数字です。
以上から、先の定義に当てはまる優良銘柄でも、それだけでは評価されず、異なる視点での選別されている可能性が高いといえます。
割高銘柄は敬遠される!?
これを踏まえて、冷静に2つの「優良銘柄」を俯瞰すると、ひとつ気が付くことがあります。バリュエーションが割高なのです。2019年3月末時点の予想PERを見ると、カカクコムは24倍、ベネフィット・ワンは53倍という高い水準です。同時期のTOPIXのPERは12.4倍ですから、2つ銘柄がいかに割高か分かると思います。
そもそも、安定的に成長してきた銘柄なので割高なのは当然ですが、もし優良銘柄の中で割安化している銘柄が存在すれば、それは割安株投資の機能不全の原因として近年大問題となっている「バリュートラップ」ではない、高いクオリティを有する割安株と言えます。
そこで、ざっくりと上位50銘柄のPERの中位値である20倍を基準にし、上下に銘柄を半分ずつ分けてパフォーマンスを検証すると、こちらも両者間で大きなリターンの格差が生まれてきます。
■優良50銘柄 PERの高低別 過去1年間のリターン平均値(2019年3月末基準)
出所:データストリーム
予想EPSの成長率でも明暗を分ける
そして、ダメ押しでもうひとつ考慮すべき点があります。予想EPSの成長率です。
優良銘柄は、少なくとも過去15年程度は数千ある日本の上場銘柄の中でも突出した成績を修めたかもしれませんが、過去データのみでは今後もそれが継続する保証はありません。そのため、その信頼性を高めるため、予想EPSの成長率がプラスであることを確認する意味は大きいと言えます。
プラス・マイナス5%程度はアナリスト予想のブレとして常時発生し得ることから、低PER銘柄の中で、さらに5%を超えるEPS成長が予想される銘柄と、それ以外の銘柄で分けて検証すると、投資効果はさらに向上します。
最終的に、勝率のみ、PER考慮、EPS成長率考慮と横並びで比較させると、以下のようにパフォーマンスが変化するのです。
■優良銘柄 条件付与の段階別パフォーマンス比較
出所:データストリーム
上のグラフの右端にある「勝率上位50・PER20倍未満・予想EPS成長率5%以上」と3つの条件に当てはまる銘柄群は、①高勝率の成長実績、②株価のお手頃感、③成長の持続期待――を高いレベルで満たす「ものすごい優良株」と言うことができ、それに見合ったパフォーマンスを中長期投資の観点でしっかりと発揮してくれる結果となりました。
先が見えず、違和感のぬぐえない上昇相場が出現していますが、こういった局面こそ短期の乱高下に振り回されるよりも、やや長めの視点でしっかりと銘柄を選ぶ好機なのかもしれません。
参考までに次ページに今回の条件に該当する銘柄を抽出しました。
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