意外と効果あり!? 「勝ち馬」に乗る投資戦略⇒バンドワゴン効果
大槻奈那の「だからあなたは損をする~心理バイアスの罠にはまらない技」
マネックス証券・執行役員チーフアナリスト
東京大学卒業。英ロンドン・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。格付け会社スタンダード&プアーズ、UBS証券、メリルリンチ日本証券にてアナリスト業務に従事。2016年1月より現職。名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学客員教授を兼務しつつ、一橋大学大学院・経営管理研究科(一橋ビジネススクール)の博士課程に在籍。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループ・メンバー。財務省財政制度等審議会委員、規制改革推進会議委員。最近の趣味は落語鑑賞と旅行、そして不動産実査で宅地建物取引士の資格も保有する。
みなさんは、株価を予想するとき、何を見て決めていますか? 業績も一つの要素ですが、案外、他の人の予想を参考にしているのではないでしょうか。
人間は、多くの人が良いと言うものに惹かれてしまう傾向があるとされています。例えば、行列ができている店をみると「きっとおいしいに違いない」と思って並んでしまうとか…。
こうした「他の人がやっていることを頼りにしてまねてしまう」という心理を「社会的証明(social proof)」(Cialdini, 1993*,記事最後に引用元掲載)と呼びます。
また、多くの人が良いと言うものに惹かれてしまう傾向を「バンドワゴン効果 (Bandwagon effect)」(Leibenstein、1950 **)と言います。このバンドワゴン効果はかなり歴史のある理論で、マーケティングの分野などで利用されています。
株価を予想する時にもこうした傾向があるかもしれません。ある銘柄の「買い」予想が急激に増えている時には、出ているニュースが大したことがなくても、「これだけ他の人々に注目されているなら何かあるのだろう」と強気になってしまったことはないでしょうか?
では、人気の「売り」や「買い」の予想に追随した場合、どの程度報われるのでしょうか?今回は「損」ではなくて、利益を上げるために「バンドワゴン効果」を生かす投資戦略について考えたいと思います。
「みんなの株価予想」の予想数トップ5の銘柄でロング・ショートを組んでみたら…
『株探』兄弟サイトの『みんなの株式』で公開されている「みんなの株価予想」で日々開示されている「売り」「買い」の予想数のトップ銘柄でロング・ショート戦略を組んだ場合の利益を算出してみたいと思います。
5月25日から31日まで、「みんなの株価予想」で「買い」予想の数が多かった5銘柄をその日(休日の場合は前営業日)の終値でロング(買建)して、「売り」予想数が多い5銘柄をショート(売建)し、5営業日後にポジションを閉じた場合の損益を計算してみました。
結果は、下のグラフの通り、損益がマイナスになったのは、5月31日のみで、残りは全てプラスとなりました。損益率の合計は、同じ期間のTOPIXの上昇率を大きく上回りました。
5月31日の負けは、「売り」の予想数第1位のプレシジョン・システム・サイエンス<7707>の1銘柄が原因です。PCR自動検査装置と試薬の保険適用を申請したという5月28日の発表で暴騰した後、予想外に人気が続いたことが響きました。
このように、個別株ですからリスクもありますし、もっと長いデータで見る必要がありますが、一定の"集合知"はあるかもしれません。
■「みんなの株価予想」の「買い」予想をロング、「売り」をショートした場合の損益
出所:『みんなの株式』。注:▲はマイナス。各日の終値から5営業日後の上昇率。「買い」予想数トップ5銘柄の平均上昇率―平均「売り」予想数トップ5銘柄の平均上昇率。例えば、5月25日の「買い」トップ5銘柄は5月25日終値から6月1日終値までに平均で1.9%上昇し、売りトップ5銘柄は0.7%上昇したため、このロング・ショートの損益は「+1.2%」となる。
直近の予想数が多い銘柄を見てみると
では、最近の「買い」予想の多い銘柄のうち、情報量が多い東証1部銘柄の材料をいくつか見てみましょう。
例えば、
1 オンライン広告コンサルなどのネットマーケティング<6175>(6月8日時点「買い」予想数第4位)
2 ナノ粒子技術を応用した医薬品研究・開発のナノキャリア<4571>(同第5位)、
3 技術者派遣サービスの老舗であるアルトナー<2163>(6月9日同第5位)
――などです。
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