ステイホームで増殖、イナゴ投資家の好みは「低」
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第44回
具体的には、母集団のうちで過去1週間の株価リターンが下位30%の銘柄を買い持ちし、上位30%の銘柄を売り持ちしたロング・ショートのパフォーマンスを累積したものになります。
■中小型・リターンリバーサルの投資効果と個人投資家の売買シェア
出所:データストリーム
もともと中小型株は需給の関係でリターンリバーサルが機能しやすいことで知られていますが、個人投資家の売買シェアの高まりと共に2020年3月に突出したパフォーマンスの高まりが見られます。コロナ禍で暴落した銘柄に、個人投資家の資金が一気に流れ込んで急反転相場を演出していたことが分かります。
さて、これまでのデータを踏まえれば、考えられる投資アイデアはシンプルです。上述までの個々のファクターでも十分に投資アイデアになります。パフォーマンスと精度を向上させるため、上述の条件をすべて組み込んで検証を実施してみます。
時価総額1000億円未満の銘柄を4つの銘柄群に分けて検証すると
以下が、銘柄の選定プロセスのイメージです。イナゴの大群の生態と特性を組み込んだ、イナゴ・ストラテジーともいうべきアイデアでしょうか。
■イナゴ・ストラテジーの銘柄選定イメージ
出所:智剣・Oskarグループ
銘柄選定の流れを以下に確認します。それは、
・ | 東証1部上場銘柄のうちで時価総額1000億円未満の中小型株を母集団とし、 |
・ | 株価水準(低位、高位)とリターンリバーサルの双方の条件を合わせ4つの群に分け、 |
・ | 4つは「高位・高リターン群」「高位・低リターン群」「低位・高リターン群」「低位・低リターン群」になり、 |
・ | これらのパフォーマンスを検証する |
――となります。
なお高低の判断は、今までと同様に母集団内上位・下位30%を閾値としています。結果は、以下の通りです。
■イナゴ・ストラテジーのパフォーマンス(TOPIX相対)
出所:データストリーム
最近まで売られていた安値の株が最も高いパフォーマンスに
まさに、想定通りの結果といっていいでしょう。中小型株で、かつ低位・低リターン株という、個人投資家が最も好みそうな銘柄が、最もパフォーマンスがよく、その逆となる高位・高リターン株のパフォーマンスが最も悪くなります。
そもそも中小型株は個人投資家の主戦場であるため、現在のような個人投資家の売買シェアの高騰する局面以外でも、この戦術は良く機能していることが分かります。もちろん、図を見て分かる通り足元でも投資効果は健在です。
コロナの感染拡大の第2波が世界中で懸念され、日本でも東京を中心に再び感染者数が増加している現状を踏まえれば、6月以降で楽観的な動きが先行していた状況から、再び外出自粛への動きが強まる可能性も出てきています。
そのため、今後しばらくの間は、ステイホーム系個人投資家、つまりイナゴ投資家は増えこそすれ減る見込みは低い、ということになるでしょう。こういった投資スタイルの傾向が継続するか、さらに強まってくる可能性が高いと考えるべきかもしれません。
最後に、参考までに今回の分析に回答する銘柄の例を添付します。なお次ページの表の脚注にも記しましたが、リスクの高い戦略なので、過去12カ月の純利益が赤字の銘柄は対象外にしています。
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株探ニュース