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あなたの自治体の洪水ハザードマップは新基準? 浸水リスクに応じ火災保険料に格差も

特集
2020年8月20日 10時30分

清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方」-第11回

清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
清水香1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。

前回記事「1億円近い賠償責任も、ウィズコロナで増える自転車の安全対策は万全?」を読む

九州、中部、東北地方をはじめとする広い範囲に豪雨をもたらした「令和2年7月豪雨」が起きてから、1カ月以上が経ちました。が、豪雨をもたらした梅雨前線が消えたと思ったら、今度は台風シーズンの到来です。

昨年10月に日本各地で河川の氾濫を引き起こした台風19号のような「大型で非常に強い台風」が、今年も上陸しないとは限りません。今や日本のどこに住んでいようとも、水害の被災者になる時代に、私たちは生きています。

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そうした"新常識"が浸透しつつある一方で、多くの人が自分の住んでいる場所の災害リスクを把握していない現実もあります。損保ジャパンが2018年8月に公表した調査によれば「ハザードマップを確認、自宅付近の水害リスクを確認している」との回答は約28%と、4人に1人ほどの割合にとどまります。

居住地の災害リスクを知ることは、自分の命はもちろん、祖先や自分たちが築いてきた財産を守ることにつながります。「人生100年マネー」を着実に積み上げていくには、ハザードマップで災害リスクを把握し、保険に加入するなど必要な手立てを講じることが欠かせなくなっています。

新基準の水害ハザードマップを作成している自治体は半分以下

実際、ハザードマップは私たちの経済活動や生活の場で、存在感をますます増しています。宅地建物取引業法の一部が改正された施行規則がこの8月28日に施行となり、不動産を取引する際には水害ハザードマップを用いて、物件所在地についての説明が義務付けられることになりました。

次ページでも触れますが、地域の水害リスクに応じて保険料に格差を設ける業界の動きもあります。危険とされる地域に住むことは、命の危険があるだけでなく、財産を守るためのコストが大幅にアップする可能性も出てきたのです。

昨年の「台風19号」や今年の「令和2年7月豪雨」で、話題になったこともあり、ハザードマップとはどんなものか大体のことは分かっているという人もいるでしょう。

改めて解説すると、ハザードマップとは、一定の想定に基づく自然災害による被害を、地図上に示したものです。例えば水害ハザードマップでは、居住地域の地図が洪水による浸水の深さに応じて色付けされ、どこでどの程度の浸水被害を受けるかが一目で分かるようになっています。

市民が見るハザードマップは市区町村が作成しています。自治体のウェブサイトで閲覧可能になっており、紙に印刷して各戸に配布されています。その種類は「洪水」「内水」「津波」「高潮」「土砂災害」「火山」など様々。

どのような災害で被害が起こるかは地域で異なるため、その市区町村の実情に応じて作成されます。近年、被害が増えている洪水のハザードマップは、現時点でその作成が必要な市区町村の98%が作成済みです。

しかし、その作成された洪水ハザードマップが、旧基準の場合もあることをご存じでしょうか

2016年に水防法が改正され、それによって洪水ハザードマップは「1000年に一度の想定最大規模の降雨」に対応した厳格化された基準で作成されることが求められています。

実は、この新基準による作成が済んでいる市区町村は、2019年10月時点で全体の41%にとどまっています。そのため、自分の住んでいる市町村の洪水ハザードマップがどの基準で作られているかは、確認しておく必要があります

関連情報も掲載されている場合も

自治体の配布するハザードマップの中には、指定避難所や日ごろの備え、避難時の備えなどの関連情報が掲載されているものもあります。

こうしたハザードマップは、事前の被害予測を把握すると同時に、被災後も活用できるので利便性が高くなっています。

下に示した東京都調布市のハザードマップには、先に触れた関連情報も掲載されています。

■調布市洪水ハザードマップのサイト内にある「いざというときに用意しておきたいもの」の抜粋

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これに対して同じ東京都の「江東5区大規模水害ハザードマップ」は、指定避難所などの情報がなく、浸水深を示したマップと広域避難を呼びかける内容になっています。

多くの地域がゼロメートル地帯である江東5区(足立・葛飾・墨田・江東・江戸川)では、想定最大規模の降雨に襲われると、地域の9割が水没、浸水深は最大で10メートル以上になると予測されています。言うまでもなく避難所を設けることは不可能です。

浸水は、多くの地域で2週間以上も継続し、停電や断水など生活インフラは途絶えます。マンションの高層階で戸室内が水没していなくても、住み続けることは困難です。事前に居住地から離れた避難先を検討し、必要な手配をしておく必要があります。

■「江東5区大規模水害ハザードマップ」の抜粋

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複数の災害のリスクを同時に確認できる「重ねるハザードマップ」

全国のハザードマップをWEBやスマホで確認できるのが、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」です。トップには「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の2つが並んでいます。

「重ねるハザードマップ」は洪水と土砂災害など、複数の災害を地図上で重ねて表示でき、道路防災情報、土地の特徴や成り立ちなどを地図や写真に重ねて表示できます。詳細な防災関連情報を確認でき、動画による使い方の説明も用意されています。

「わがまちハザードマップ」は、自治体の作成したハザードマップへリンクしており、地図上で指定すれば、確認したい自治体のハザードマップに飛べます。

■国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」の画面の一部

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自治体、国土交通省いずれのハザードマップも、逐次必要な更新がなされますので、折を見て確認するといいでしょう。

ハザードマップ確認後にすぐしておきたいのが火災保険の見直しです。水害は火災保険でカバーされます。洪水や土砂災害で被害を受ける住所地なら、「水災」の補償は必須です。

内閣府の調査によれば、契約に水災補償がある割合は約7割弱にとどまります。加入している保険に水災の補償がなかったり、補償が不十分だったりするなら見直しを検討しましょう。

災害による被害の中でも、床上浸水の損害はとりわけ深刻です。建具から家具、電化製品など数百万円レベルの損害を受ければ、その後の生活設計が狂いかねません。既存の保険は解約し、水災補償のある保険にかけ替えることをお勧めします。

内容がよくわからない場合は、コールセンターや代理店に問い合わせてみましょう。

2021年、火災保険料率の改定で値上げも

契約によって火災の他に水災や風災などの補償も受けられる火災保険。この保険料について、大手損保4社は2021年1月以降の契約の改定を予定しています。

次ページ 水災リスクに応じて保険料が変わる火災保険の例

 

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