国内株式市場見通し:年末高の後は神経質な展開

市況
2021年12月25日 14時50分

■オミクロン株巡って急落・急反発

今週の日経平均は週間で236.91円高(+0.83%)と3週続伸し、週足ローソク足では陽線引けとなった。週初は、前の週末に新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」感染の世界的な急拡大や、株価指数の先物やオプションなどの取引期限が重なるクアドラプル・ウィッチングによるテクニカル要因が重しとなって大きく下落した米株市場を受け、日経平均も607.87円安と大幅安となった。

しかし、前の週末と合わせて2日間で1100円超も下落していただけに、翌日は一転して押し目買いが優勢となり、21日の日経平均は579.78円高と大幅に反発。その後は、海外勢のクリスマス休暇入りによる取引参加者の減少などを背景に、全般薄商いが続いた。それでも、オミクロン株の入院リスクは低いとする複数の調査結果や、米食品医薬品局(FDA)が製薬会社ファイザーやメルクの新型コロナ経口薬の緊急使用を承認したことから警戒感が後退。外部環境が好転するなか売り方の買い戻しが進展し、日経平均は22、23日と上昇した。週末24日は一段と商いが低調となるなか、前日終値近辺でのもみ合いが続き、15.78円安とほぼ横ばいで終えたが、日経平均は29000円を視野に入れ、「掉尾の一振」の期待をつなぐ形で終えた。

■1月5日のFOMC議事録に注目

来週と再来週の日経平均は堅調な年末を迎えた後、年始は神経質な展開か。年末年始を前に多くの機関投資家は既に休暇に入っていると思われ、クリスマス休暇明けでも取引に戻ってくる海外組は限られるだろう。そのため、来週も引き続き売買高は膨らみにくいだろうが、薄商いのなか掉尾の一振に期待した個人投資家の買いや、パフォーマンスの引き上げを狙ったファンドの運用機関によるドレッシング買い(お化粧買い)などでスルスルと値を切り上げる展開も想定される。年末特有の実現利益との相殺を狙った「損出し売り」も受渡日を考慮した実質ベースでは28日が最終日となり、この日を越えた最後の2日間は特に上昇が期待できそうだ。

一方、年始は神経質な展開が想定される。米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派にシフトするなか世界的な金融引き締めによる緩和マネー縮小への警戒感がくすぶる。1月5日には12月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が発表予定。FRBのウォラー理事が3月のFOMCでの利上げを示唆するなど一段とタカ派色の強い発言をしていることもあり、改めて政策メンバーらの金融引き締めへの考え方を確認したい。

特に、量的緩和(QE)の縮小(テーパリング)の先にある量的引き締め(QT)への考え方に注目。インフレ高進が続くなか、市場の想定よりも早くバランスシート縮小に動くリスクもある。前述のFRBのウォラー理事は「最初の利上げ後すぐに資産圧縮を始めることは可能。バランスシートの調整を遅らせる理由はない」とも発言している。議事録内でのQTに関する触れ方次第では、市場が再び動揺する可能性があり、短期的な下振れリスクには注意したい。

また、オミクロン株についても依然注意は必要だ。南アフリカの国立伝染病研究所や英国の保健安全庁などは、オミクロン株の入院リスクは他の変異株に比べて5~8割低いとの調査結果を報告。また、米国ではFDAが製薬会社ファイザーやメルクの新型コロナ経口薬の緊急使用を承認した。これにより、オミクロン株に対する警戒感は大きく後退した。しかし、感染率はデルタ株を超える高さで、英国や米国では1日当たりの新規感染者数が過去最多を記録している。感染者数が爆発的に増えれば、入院患者の絶対数も増えるため、医療機関の逼迫やこれを防ぐための行動規制強化といったリスクは残る。日本でも、京都での市中感染が報告されており、今後、欧米に遅れてオミクロン株感染が急拡大することが警戒される。

さらに再来週は米サプライマネジメント協会(ISM)が公表する景況指数のほか、週末には米雇用統計など注目度の高い経済指標が発表予定。ISMなどは構成項目の内容次第では、世界的な供給網混乱やインフレの長期化などのリスクが再び意識される場面もありそうだ。

■マルマエ決算、半導体関連株の動きに注目

そのほか、国内では決算発表があり、しまむら<8227>、アダストリア<2685>など小売企業を中心に予定されている。特に注目したいのはマルマエ<6264>。半導体・FPD製造装置の真空パーツを手掛かける同社は注目度の高い半導体関連株決算の前哨戦とも捉えられる。足元、東京エレクトロン<8035>やレーザーテック<6920>が上場来高値を更新するなど、関連株の騰勢はとどまることを知らない。マルマエも上場来高値を窺う位置にあり、決算内容はもちろんだが、株価反応が注目される。株価が上場来高値付近にあるなかでも好決算を素直に評価する動きとなれば、投資家心理は一段と明るくなるだろう。

■米ISM景況指数、中国PMI、米雇用統計など

来週と再来週は27日に日銀金融政策決定会合の「主な意見」(12月開催分)、28日に11月失業率・有効求人倍率、11月鉱工業生産、米10月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、31日に中国12月製造業PMI、4日に米12月ISM製造業景況指数、中国12月財新製造業PMI、5日に米12月ADP全米雇用リポート、6日に米12月ISM非製造業景況指数、7日に11月家計調査、米12月雇用統計などが発表予定。

《FA》

提供:フィスコ

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