横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (26)株価の動きを決める、ファンダメンタルズの「実力」を探ろう!
◆株価の裏付けとなる「実力」の数値を確認
本コラムでは、テクニカル分析を中心に売買タイミングなどを分析する方法をご紹介していますので、私がテクニカル分析で売買タイミングを判断しているのかなと思っている人も多いかもしれません。もちろん、売買タイミングについてはテクニカル分析で判断しているのですが、株価はその会社の実力(成長力)に基づいて形成されますので、「実力(成長力)」に、どれだけ投資家の期待値が乗せられるかというあたりを加味して、株価の売買タイミングを判断しています。
というのも、時には想定外のイレギュラーな株価が形成されることもありますが、過去を振り返った場合、結局は会社の実力(成長力)、それに投資家の期待値を乗せたあたりに株価は落ち着くことが多いと考えているからです。そこで、今回は日経平均株価を例に、株価の実力をどう当てはめて考えていくのかを、レンジ相場を使って考えてみたいと思います。
日経平均株価の「実力」を何を基準にして考えたらよいのかですが、「一株利益(EPS)」で考えればよいでしょう。日経平均株価の一株利益(EPS)は、日本経済新聞のサイトに掲載されている「日経平均株価」と「予想PER」を用いて算出することができます。日経平均株価が2万8871円、予想PERが16.84倍であれば、「28871÷16.84」で1714.4(円)となります。
日経平均株価の場合には、EPSに対して株価が割高なのか、割安であるのかを判断していくわけですが、足もとのEPSは7月に入ってからじりじりと上昇する動きになりました。7月1日時点の日経平均株価のEPSは1643円でした。これが趨勢としては日を追うごとに水準を高めて、月末の29日には1701円まで上昇。直近、8月15日では1714円に達しています。これらの数値からは、日経平均株価の実力がじりじりと高まっていることがわかります。それに対して、株価は8月中旬まで2万7000円を挟んでレンジ相場を続けていました。実力が上昇しているのであれば、株価は今後レンジ上限の突破に向かう可能性が高いと考えることができた状況でした。
では、ここで日経平均株価のチャートを見てみましょう。EPSが上昇し始めているのに、株価は横ばいでの推移が続いていることがわかります。このチャートを見る限り、まだ2万7000円を挟んでレンジ内での動きが続くだろうと考えたくなるのもわかります。また、足もとの物価上昇など日本経済を取り巻く環境を踏まえると、株価が上昇するのに納得いかないという気持ちもわからないでもありません。
図2 日経平均株価(日足)とRCI
しかし、株価は感情で動くものではなく、業績などの数値に基づいて動きますので、ここは冷静に、機械的にその動きを分析しなければなりません。もちろん、株価が裏付けとなる数値以上に動くこともありますが、それは不測の事態(イレギュラー)ということですから、チャート上の行き過ぎはいずれ修正されていきますのでここでは例外とします。
日経平均株価はEPSの上昇に応じて、7月後半からレンジ上限に向けて上昇する動きになりました。なお、レンジ上限がわかりやすいように、YouTube「横山利香の株チャンネル」でいつも表示しているトレンドライン(りかトレンドですね!)を表示しました。
では、ここで前回解説した「RCI」を表示させてみましょう。RCIはオシレーター系のテクニカル指標で、モメンタムを取り入れて株価の過熱感を分析するチャートであると解説しましたね。私は短期線を使っていますので、ここでも「RCI(9)」の短期線を見てみましょう。
これまでのもみ合いではRCIも「0」を挟んで上下に往ったり来たりしていましたが、8月に入ってからは「100」に向けて上昇を続けていますので、この勢いを保てばレンジ相場を抜ける可能性もありそうだと分析できます。足もとの日足チャートも、いよいよもみ合いを抜けそうだなという形状へと変化してきていることがわかりますね。
このように株価は横ばいの時も、上昇する時も、下落する時も、ファンダメンタルズの「実力」を示す数値を基に動き始め、その時々の投資家の期待値も織り込みながら推移していきます。その動きを表しているのが、ローソク足やRCIなどのテクニカル指標といったチャートということになります。ただし、株価は足もとの「実力」を見ているだけではありません。将来の「実力」を評価する先行指標としても機能していますので、どうしても私たちの肌感覚とはズレてしまうところがあることは否めません。
私たち人間は欲深い生き物であり、こうしたズレ(違和感)などを感じると「株価が上昇するのはおかしい!」と決めつけたり、「盛り上がってるから、まだまだ上がるだろう」と自分に都合よく考えたり、さらにはその考えに固執してしまいがちです。ですから、自分の感情や考えとは切り離して冷静に分析するために、チャートで売買タイミングを判断していくことで、負ける確率を減らすことができるのです。
足もとの日経平均株価は、レンジ上限を抜けてまだ数日ですので、上方へのブレイクが本物なのか、それともダマシなのか、今のところ判断することは難しいでしょう(本稿執筆時点)。夏休みの終わりとともに株式市場が日常に戻れば、株価の動きもしっかりしたものになっていくことでしょう。株価の動きを数値とチャートで確認して、次なる波にしっかりと乗りたいものですね!
株探ニュース