米原油在庫の推移に注目!米国は世界最大の国内需要と西側を支えられるのか? <コモディティ特集>
米エネルギー情報局(EIA)が発表する週報で、米国原油在庫は4億7904万1000バレルまで増加し、2021年5月以来の高水準となった。昨年末に米国を襲った大寒波によって被害を受けた製油所が多かったことから、これを機に定期改修に入る製油所が目立ち、石油への精製能力が落ち込んでいることが背景。製油所稼働率は85.9%と低水準で推移している。
米原油在庫はこの時期として過去5年で最も多かった水準を上回って積み上がっているものの、在庫増加は例年の季節パターンに沿っている。春先からの需要拡大を見据えて、取り崩しを待つ原油在庫といえる。近年はコロナのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻、米戦略石油備蓄(SPR)の大放出など、異例の事態によってEIA週報の推移が乱れたが、例年でいえば3月は製油所稼働率が上向く時期だ。
●金利高のなかも底堅い米経済、石油需要は堅調
EIA週報で原油と石油製品を足し合わせた石油在庫(SPRを除く)は12億6147万9000バレルで推移しており、2021年8月以来の高水準まで積み上がっている。米国の在庫動向を踏まえると、世界的な在庫の指標である経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫が年明けにかけてさらに増加し、 ブレント原油やニューヨーク市場のウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物価格を引き続き圧迫している可能性がある。
ただ、米石油在庫が増えているとはいえ、原油価格は崩れていない。ブレント原油やWTI先物は昨年12月以降のレンジ内を維持している。昨年、米国内のガソリン小売価格など燃料価格が暴騰したことは記憶に新しいが、エネルギー高に怨嗟の声が満ちていたその当時でさえ需要は堅調であったことを考慮すると、現在の落ち着いた価格水準で需要期を迎えるなら消費は強そうだ。脱炭素社会へ動きつつあるとはいえ、米国の石油消費量は依然として世界最大である。金利高のなかでも米経済は底堅く推移している。
●脱ロシアで石油市場は未知の領域に
また、欧米諸国はロシアからの石油輸入をほぼ停止した後の最初の需要期を迎えることから、世界最大級の石油輸出国である米国の動きには注目しなければならない。ロシアに頼っていた欧州では米国に対する依存を強める国もあって、冬場を通過して北半球の石油需要が上向くと米国内の石油在庫の取り崩しが強まる可能性がある。
脱ロシア後の米国の石油在庫はどのように推移するのだろうか。すべての市場参加者にとって未知の領域である。今年、米SPRの放出予定は2600万バレルと、昨年のような大規模放出が繰り返されることはない。石油市場のファンダメンタルズが毎年変化するなかで、在庫変動を見通していかなければならず、非常に厄介である反面、見通しにくいが故に値動きが大きくなる余地があり、トレンドを欲する投資家の熱い視線が注がれそうだ。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
株探ニュース