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「高市トレード」の上げ潮相場~持続性には疑問符も【フィリップ証券】

市況
2025年10月15日 15時15分

10/4の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利したことを受け、10/6以降の東京株式市場は防衛やサイバーセキュリティ、核融合関連銘柄などを買う「高市トレード」の様相を示した。それに加え、米国における大規模AIインフラ・プラットフォームの「スターゲート」プロジェクトの大きな上げ潮が日本株市場に押し寄せた。米新興AI(人工知能)開発企業のOpenAIが日立製作所<6501>と戦略的パートナーシップを締結したのに続き、米半導体大手エヌビディア<NVDA>が10/3、富士通<6702>と製造現場でロボットを自律的に動かすAI基盤の開発で提携すると発表。産業ロボット大手の安川電機<6506>と3社で実用化に向けた協業を検討すると報じられた。「スターゲート」の中心企業の一角を担うソフトバンクグループ<9984>も10/8、スイス重電大手ABBのロボット事業を買収すると発表した。これらの動きを受け、日経平均株価は10/9、4万8500円超まで上昇した。

高市トレードの影響は株式市場にとどまらない。債券市場では財政支出拡大を警戒して超長期債が売られ利回りが上昇。為替相場では日銀の利上げ牽制が強まるとして円安・ドル高が進行し、ここ数年何度も節目として意識されてきた1ドル152円の壁をあっさり突破した。インフレヘッジとして有効とされる金価格も10/9、大阪金先物市場で中心限月(期近物)終値が1グラム2万円の歴史的節目を突破した。金価格の上昇の背景には、高市トレードだけでなく、米連邦政府機関の一部閉鎖が続いていることもあるだろう。

高市トレードの持続性に疑問を投げかける動きも出始めている。第1に、公明党の連立政権からの離脱に関する動きだ。公明党は政治資金の規制で一歩も引かない姿勢を示している。首班指名で高市総裁が首相になれなければ、高市トレードは「絵に描いた餅」に帰し、大規模なポジション巻き戻しに伴う市場の混乱が予想される。第2に、円安進行が速いことから輸入物価の高騰がインフレを招くとして、日銀の利上げ時期を逆に早めてしまう懸念だ。円安は当初、高市トレードに伴う動きとみられていたが、政局の不透明感からくる日本の政治不信に伴う円安へとシフトしてもおかしくないだろう。

米国株市場でも、10/1以降の米連邦政府機関一部閉鎖が続く影響により暗雲が垂れ込め始めている。S&P500指数やナスダック総合指数と比べて景気に敏感とされるダウ工業株30種平均(日次終値)は、10/9で4日連続の続落となった。過去の米連邦政府機関の閉鎖が米財政年度初めの10/1から始まったケースは、1976年以降で今年が8回目となる中、過去の最長は1978年の17日、二番目が2013年の16日である。米連邦政府機関の一部閉鎖がそれ以上に長引けば、米国株市場は平穏を保てない懸念が残る。1987年に発生した世界的な株価暴落の「ブラックマンデー」も10/19だった。

■大阪金先物・プラチナ先物の動向~円安メリット大、プラチナは出遅れ修正

大阪取引所に上場する金先物とプラチナ(白金)先物(中心限月)の過去5年間の終値推移を見ると、金先物価格をプラチナ先物価格で割った「金・プラチナ倍率」は、2021年2月の1.4倍近辺から一貫して上昇。今年の4/22に3.65倍の水準に達した。米FRB(連邦準備理事会)による利下げ再開や、FRBの独立性の揺らぎを意識した脱ドルの動きを背景に、現物資産の貴金属へのマネー流入が加速する中、金に対して出遅れていたプラチナへの機関投資家の買いが活発化。金プラチナ倍率は10/8に2.56倍へ低下した。供給面でプラチナはもともと金と比べて産出量が少ない点も注目される。

国内市場の金先物価格は、国際市況のドル建ての金先物価格に為替の動向も反映され、円安メリットを享受できる。

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■TOPIX33業種・四半期ごと騰落率~リターン・リバーサルで狙うべき業種は?

TOPIX(東証株価指数)33業種別指数の騰落率について年初以降の3四半期の推移を見ると、7-9月期の上位5業種は非鉄金属を除き4-6月期にパフォーマンスが下位だった。一方、7-9月期に最下位となった「その他製品」は4-6月期、1-3月期ともに2位だった。このように、上位と下位のパフォーマンスが四半期ごとに入れ替わりやすいことから、7-9月期に下位だった業種を狙うことは、資産価格の「平均回帰性(ミーン・リバージョン)」の観点からも合理的といえる。

自民党の高市新総裁が「診療報酬と介護報酬の引き上げ」や赤字企業の賃金引き上げ、給付付き税額控除の制度設計などに意欲を示していることから、医薬品や小売業などは10-12月期に向けて有望な業種と捉える余地があるだろう。

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参考銘柄

サカタのタネ<1377>

・1913年に坂田武雄が現在の横浜市六角橋にて坂田農園を設立。園芸商材(野菜種子、花種子、球根、苗木、農園芸資材)の販売に関し、主に国内卸売事業、海外卸売事業、小売事業を展開。

・10/7発表の2026/5期1Q(6-8月)は、売上高が前年同期比9.6%増の230億円、営業利益が同63.5%増の44億円。セグメント別営業利益は、国内卸売事業(売上比率19%)が7%増の23億円、海外卸売事業(同73%)が47%増の52億円、小売事業(同4%)が▲2億円へ赤字幅拡大となった。

・通期会社計画は、売上高が前期比2.8%増の955億円、営業利益が同10.3%減の110億円、年間配当が同横ばいの75円。2022年4月に改正種苗法が完全施行され、その後も品種の育成者の権利保護が進んでいる。日本の農業競争力を高め、農産物ブランドの価値を守ることが重要な国策と認識されつつあり、同社のオリジナル品種による高い競争力とブランド価値の見直しが見込まれる。

ステラケミファ<4109>

・1916年に堺市で橋本治三郎が創業し、硝酸塩を製造。半導体やリチウムイオン二次電池向けフッ化物の高純度薬品事業を展開。ステラファーマ<4888>はがん放射線治療用ホウ素医薬品に注力。

・8/7発表の2026/3期1Qは、売上高が前年同期比0.5%増の87億円、経常利益が同29.0%増の11億円。高純度薬品事業は売上高が0.1%増の76億円、営業利益が49%増の10億円。原材料価格上昇に伴う価格転嫁で採算が改善。エネルギー部門(濃縮ホウ素)や電子材料部門の出荷量増も寄与。

・通期会社計画は、売上高が前期比0.8%減の360億円、営業利益が同5.5%減の41億円、年間配当が同横ばいの170円。危険を伴うフッ素化学製品取扱いに関し同社は特殊貨物輸送ノウハウを持つ点に特色。また、10/7、3分の1超株式を持つ傘下のステラファーマが東京大学と次世代がん治療法として期待される「ホウ素中性子補足療法(BNCT)」の効果を高める技術を開発したと報じられた。

テルモ<4543>

・世界大戦の影響で輸入が途絶えた体温計の国産化を目的に1921年に創業。カテーテルや人工心肺の「心臓血管」の他、「メディカルケアソリューションズ」、「血液・細胞テクノロジー」の3事業を展開。

・8/7発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上収益が前年同期比0.7%増の2599億円、営業利益が同25.2%増の558億円。事業別売上収益は、心臓血管が7%増の1578億円、メディカルケアソリューションズが1%減の504億円、血液・細胞テクノロジーが12%増の516億円。海外売上比率は約80%。

・通期会社計画は、売上収益が前期比1.3%増の1兆500億円、買収の影響を除く調整後営業利益が同5.2%増の2140億円、年間配当が同4円増配の30円。自民党の高市新総裁は医療機関や介護施設の窮状に対し早急に手を打つ考えを示し、診療報酬の引き上げ前倒しに意欲を見せている。診療報酬改定により病院収益が改善すればカテーテルや人工心臓などの取扱い増が見込まれる。

日本光電工業<6849>

・1951年に東京都文京区駒込にて設立。医用電子機器の研究開発・製造・販売・修理・保守を行う。脳波計やAED(自動体外式除細動器)で国内首位。北米、中南米、欧州、アジアで海外展開強化。

・8/6発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比8.2%増の500億円、営業利益が前年同期の▲12億円から14億円へ黒字転換。売上高は国内が4%増の306億円、海外が16%増の193億円(うち北米が19%増の110億円)。神経診断専用電極を提供するアドテックの連結子会社化が寄与。

・通期会社計画は、売上高が前期比6.5%増の2400億円、営業利益が同15.9%増の240億円、年間配当が同1円増配の32円。情報通信技術(ICT)利活用の診療報酬への加算、および診療報酬の在宅医療評価向上もあり、同社が取り扱う監視機器や訪問看護向けデバイスの導入に追い風となっている。同社は国内の売上比率が61%。診療報酬引き上げ前倒しの恩恵を受けやすい面がある。

※執筆日 2025年10月10日

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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