“物流”大激増時代の成長地図、新インフラの挑戦企業は <株探トップ特集>

特集
2017年12月27日 19時30分

―“ネット通販膨張”が後押しする物流施設開発増と省人化投資―

師走でいつにも増して宅配便 の配達員が慌ただしく動いているが、2017年は物流が重要な社会インフラであることが改めて認識された1年だった。ネット通販の拡大による荷物の急増と人手不足で“宅配危機”が叫ばれるなか、宅配各社は規模を追うことで利益を上げてきたビジネスモデルを転換。10月にはヤマト運輸が27年ぶりとなる基本料金の値上げを実施し、佐川急便なども追随した。人手不足の問題は依然として解決していないが、それだけ需要があることの裏返しともいえ、「物流」を支える企業の成長余地は大きいといえそうだ。

●16年度の宅配便取り扱い個数40億超に

宅配便の取り扱い個数は増加の一途をたどっており、国土交通省が7月に発表した資料では、16年度は約40億1900万個(前年度比7.3%増)に伸長。10年度の約32億2000万個からは24.8%増となっている。その主な要因として挙げられるのが、消費者の生活スタイルの変化にあわせ発展してきた電子商取引(EC)市場の成長で、経済産業省によると国内の消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場規模は、10年の7兆7880億円から16年には15兆1358億円に拡大している。

宅配業者の人手不足は深刻で、日銀が今月発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)の雇用人員判断指数(DI)では、「運輸・郵便」がマイナス47(前回9月はマイナス44)に悪化した。現場の負担増が成長の足かせとなっているなか、省人化につながる投資は今後一段と活発化するとみられ、ヤマトホールディングス <9064> は9月に策定した中期経営計画で配送網の整備やIT(情報技術)活用などに3年間で1500億円を投じると明記。12月13日に東証1部に新規上場したSGホールディングス <9143> は中期経営計画でビッグデータや人工知能(AI)などの活用を掲げている。

また、ヤマト運輸はディー・エヌ・エー <2432> と自動運転社会を見据えた次世代物流プロジェクト「ロボネコヤマト」の実用実験を推進中。日本郵政 <6178> 傘下の日本郵便は今月、ローソン <2651> などと配送ロボットの物流分野への活用実現に向けた実証実験を福島県南相馬市で実施した。

●再配達削減のカギ握る宅配ボックス

宅配便の取り扱い個数が増えるにつれ、問題となっているのが受取人不在による再配達の増加で、国交省が14年12月に行ったサンプル調査では宅配便の約2割が再配達を余儀なくされているという。この問題解決に向けカギを握るのが、不在時でも荷物を受け取ることができる宅配ボックス の普及で、市場はさらに拡大する見通し。関連銘柄としては神栄 <3004> 、アルファ <3434> 、ダイケン <5900> [JQ]、富士機械製造 <6134> 、グローリー <6457> 、セゾン情報システムズ <9640> [JQ]など。また、セコム <9735> は18日に、スマートフォンなどに荷物の到着を知らせる「セコムあんしん宅配ボックス」を発売した。

●開発ラッシュに沸く物流施設

物流アウトソースの進展やネット通販市場の拡大に伴って、低コストかつ迅速な配送に対するニーズが高まるなか、大型で機能を高めた物流施設の開発が活発化している。直近では野村不動産ホールディングス <3231> 傘下の野村不動産が21日、18~20年にかけて約1100億円を投じて、東京都青梅市や千葉県習志野市などで9棟の物流施設を開業すると発表。同社は主力の住宅やオフィスに続く収益の柱に育てる構えだ。

また、東急不動産ホールディングス <3289> 傘下の東急不動産は8日、埼玉県白岡市や千葉県松戸市、大阪府枚方市、福岡市などで新たに6つのプロジェクトに着手するなど物流施設の開発を加速。シーアールイー <3458> は11月に埼玉県三芳町で開発用地を取得し、三井不動産 <8801> は7月に18年3月から20年4月にかけて千葉県船橋市など6ヵ所で大型物流施設を開設する計画を打ち出している。

これ以外では、大和ハウス工業 <1925> が次世代物流センターの構築を目指し、11月にグループ会社を通じてeコマース分野に強みを持つアッカ・インターナショナル(東京都港区)の全株式を取得。今月には、埼玉県坂戸市で同社最大の延床面積となる大型マルチテナント型物流施設の開発に着手した。

●省人化・自動化の関連企業に商機

物流施設の開発ラッシュで恩恵が見込まれるのが、省人化や自動化につながる製品・サービスを提供する企業だ。例えば、商品保管用の棚を作業者の手元まで運ぶ無人搬送車ではダイフク <6383> や明電舎 <6508> 、日本車輌製造 <7102> 、三菱ロジスネクスト <7105> に注目。

自動倉庫システムを手掛ける平田機工 <6258> や岡村製作所 <7994> 、高速自動仕分けシステムを販売する椿本チエイン <6371> 、物流ソリューションを提供する協栄産業 <6973> 、物流システム構築のトーヨーカネツ <6369> 、マテハン(マテリアルハンドリング)を提供する西部電機 <6144> [東証2]、天井クレーンなどで実績を持つキトー <6409> にも商機がありそうだ。

物流施設や倉庫でのピッキング作業の指示に音声システムを導入すれば、紙のリストによる指示に比べて作業の正確性や生産性の向上が期待できる。この分野ではサトーホールディングス <6287> とアドバンスト・メディア <3773> [東証M]がウエアラブル型音声認識ソリューションを共同開発済み。また、日本ユニシス <8056> や富士通 <6702> も音声ピッキングソリューションを手掛けている。

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