好景気・在庫縮小が「石油価格」後押しでも――追い風に潜む“死角” <コモディティ特集>

特集
2018年1月4日 13時30分

―“原油高”阻むのは“原油高”、2018年占う原油と物価と金融政策―

●拡大続ける超大国・米中の石油需要

コモディティ価格の動向はほぼ需要と供給で決まる。石油輸出国機構(OPEC)を中心とした産油国が供給制限を実施している反面、需要が伸びていることから、2018年は過剰な石油在庫が一段と縮小する見通しだ。需要増加には主要国の景気が拡大を続けるとの前提がある。

世界で最も石油を消費する米国の景気は、賃金の伸びが停滞しており、順風満帆とはいかないまでも、かなり良好である。非農業部門雇用者数(NFP)は過去最高の1億4724万人まで拡大し、消費は上向きだ。米株価指数が過去最高値圏にあることで、消費者マインドだけでなく、企業マインドも強い。消費拡大に加えて、設備投資や輸出の回復と、景気拡大にあまり隙がない。米国は利上げ局面に入っているものの、利上げペースが穏やかであることは景気拡大を刺激しそうだ。パウエル次期米連邦準備理事会(FRB)議長の舵取りが注目されるが、ガソリンなど石油製品の需要は拡大を続けていく可能性が高い。

米国に次ぐ石油消費国である中国の主要経済指標は一定の伸びを維持しているものが多く、景気は不透明だが、原油需要は旺盛である。昨年12月発表のOPECの月報によると、2017年第4四半期の石油消費量は日量1,246万バレルまで拡大している。月次の原油輸入量も増加する傾向にある。

大気汚染に悩まされている中国で、環境負荷の低減を目指して電気自動車が普及していく過程で、石油需要は伸び悩んでいくのかもしれないが、電気自動車の普及と石油消費の低迷がテーマ化するには時期尚早である。2018年の中国の石油需要は拡大を続けそうだ。

●景気拡大を背景に欧州の需要も堅調か

欧州の石油需要も堅調に推移するだろう。ユーロ圏は景気回復軌道に乗っており、2017年7-9月期のユーロ圏国内総生産(GDP)の伸びは前年比2.6%まで加速し、景気回復が勢いづいている。雇用者数が拡大し、小売売上高指数が上昇傾向を維持するなど、消費の見通しは明るい。消費者・企業マインドは上向いており、石油需要が増えていくと想定するのが妥当である。物価は回復軌道になく、欧州中央銀行(ECB)は低金利政策を当面継続する方針を変えておらず、来年9月末まで量的緩和を継続し、バランスシートをさらに拡大させることは景気回復を後押しする。消費が旺盛な若年層の失業率は低下しているものの、フランスが22.0%、イタリアが34.7%、スペインが38.2%と高水準で懸念せざるを得ないが、失業率がまだ低下する余地が十分にあるということは、景気の伸びしろを示すといえる。

主要国の景気は、自律的な拡大局面に入りつつあるが、緩和的な金融政策によって依然として支えられている。景気が拡大し続ける反面、緩和的な金融政策を許容するように物価上昇率の停滞が続くとは思わないが、物価が弱いままなら刺激的な政策金利水準が景気を加熱させ、石油需要を高める余地があると思われる。

ただ、石油需要拡大による原油高は物価を押し上げる。原油高によって物価上昇率が加速し、主要国の金融引き締めが本格化に向かうと、原油価格の圧迫要因になる。2018年は原油高が物価や金融政策を経由して、原油価格を抑制するのだろうか。原油価格を見通すために各国の景気・物価動向を追う必要があるなら、より忙しい一年となりそうだ。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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