始まった金利上昇、そして“金融大地殻変動”――新投資チャンスがいま <株探トップ特集>

特集
2018年2月3日 19時30分

―米長期金利3%視野、メガバンク長期停滞からの大脱出の果てに―

金融株が新局面を迎えている。上値が重かったメガバンク など銀行株 生保株 は、上昇基調を強めつつある。この状況変化をもたらしているのが、米国を中心とする世界的な金利上昇だ。金利の長期低迷には終止符が打たれ、長期上昇局面を迎えたとみる声は多い。市場が“脱デフレ”を見据えるなか、メガバンクを中心とする金融業界には大きな地殻変動が発生しつつあり、新たな投資チャンスが生まれようとしている。

●米大手銀行は高値圏推移、世界の投資家の視線が集中

世界の投資家の関心が、銀行株を中心とする金融セクターに向かっている。史上最高値水準にある米株式市場では1日、バンク・オブ・アメリカが昨年来高値を更新、JPモルガン・チェースやシティグループも高値圏で推移している。フィラデルフィアKBW銀行株指数は、この1年で20数%上昇した。

日本でも三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> や三井住友フィナンシャルグループ <8316> 、みずほフィナンシャルグループ <8411> といったメガバンクを中心に銀行株は堅調に推移している。東証の業種別指数で、銀行は昨年11月中旬から今年1月まで10数%上昇した。

この銀行株上昇をもたらしているのが、米国を中心とする金利上昇だ。米10年債利回りは1日に2.79%と約3年10ヵ月ぶりの水準に上昇した。米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測が強まるなか、市場には「米長期金利は3%乗せも視野に入っている」(市場関係者)との声が出ている。

米長期金利上昇は銀行の利ザヤ改善を促し、業績の改善に結びつくとの見方が強い。これは米大手銀行には当然のこととして、三菱UFJを中心に米国など海外での事業強化を進めるメガバンクにも、収益拡大の機会が膨らむことを意味する。さらに、米長期金利の上昇の波は日本を含む世界に波及している。

●Tibor引き上げが業績拡大を牽引、5月リスクには注意必要

「日本の銀行株には、投資機会が膨らんできている。現在はまだ状況に不透明な要因もあるが、年央以降、環境はより明るくなるだろう」とマネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストはいう。特に、貸出のベースとなる短期金利であるTibor(東京銀行間取引金利)に上昇傾向が出ていることは、銀行にとって先行きの業績改善に結びつく要因とみられている。18年3月期業績もメガバンクの進捗率は高く、最終的な上振れも見込める。

ただ、5月の銀行の本決算発表では「19年3月期業績を保守的に試算し、減益予想が打ち出される可能性もある」(大槻氏)ことが懸念される。この5月リスクを踏まえたうえで、銀行など金融株が本格的に見直されるのは年後半からとの見方だ。もっとも、米国の金利上昇ピッチが早まれば、米銀行株の高騰と歩調を合わせる格好で、日本のメガバンクを中心に銀行株はここから本格上昇に入る可能性はある。

3メガバンクのPBRは0.7倍以下で、配当利回りは、みずほなら3.6%台と魅力的な水準にある。さらに、あおぞら銀行 <8304> の配当利回りも4%台と高いほか、地元が好景気状態にある地銀にも投資妙味が膨らむ。横浜銀を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループ <7186> や千葉銀行 <8331> 、ふくおかフィナンシャルグループ <8354> など。また、来期以降の業績の伸びが期待されるセブン銀行 <8410> や三井住友トラスト・ホールディングス <8309> なども注目されている。

●生保には追い風、業態により明暗分かれる結果に

では、金利上昇の銀行以外の業態への影響はどうか。金利上昇は運用環境の改善につながるため、第一生命ホールディングス <8750> やT&Dホールディングス <8795> 、かんぽ生命保険 <7181> 、ソニーフィナンシャルホールディングス <8729> など生保株には追い風となる。

損保株リース株にとっては、資産運用面で金利上昇のメリットが見込め、マイナス影響は限定的とみられる。東京海上ホールディングス <8766> やSOMPOホールディングス <8630> 、MS&ADインシュアランスグループホールディングス <8725> 、それにオリックス <8591> 、東京センチュリー <8439> 、芙蓉総合リース <8424> など。

懸念されるのは、消費者金融業界への影響だ。個人向け無担保ローンの貸出金利の上限が決まっている一方、銀行などからの調達金利が上昇した場合、利ザヤの縮小による業績の圧迫要因となる。このため金利上昇は、アイフル <8515> やアコム <8572> などにとっての業績悪化要因となる可能性がある。いずれにせよ、金利上昇は業態により明暗を分けながらも金融セクターの株価に大変動をもたらすことになろう。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.