武者陵司 「市場を揺るがす“危機”の正体」

市況
2018年2月7日 14時10分

―米国主導の急落、バブル崩壊の始まりか、行き過ぎの修正か―

武者陵司(株式会社武者リサーチ 代表)

●ファンダメンタルズ面に問題はない

(1)世界同時好況、(2)世界的好業績、(3)背景にある新産業革命とイノベーション、(4)適切な経済政策、(5)抑制されたインフレ、など。近い将来リセッションに陥るとの見方はほとんど見当たらない。リセッションにならずして株式市場がベアマーケットに転換したためしはない。

●「株式がバブル」を支持する人は少数

(1)PERは過去平均15倍、1月末23倍(益回り4.3%)と高いが、長期金利の低さを考えれば、むしろ株の方が割安(イールドスプレッドは依然大きい)、(シラー教授のCAPEがITバブル時以降で最高の30倍という議論も低金利水準を全く考慮に入れてない点で、実用的ではない)、(2)長期金利上昇は限定的かつ企業利益の見通しは良好(税制改革の効果も寄与)、(3)経済的厚生を示すミゼリーインデックス(失業率+インフレ率)が過去最低水準ということは高PERを正当化する、などが指摘できる。→株価水準は全く問題ではない。

●株価急落の理由はもっぱら需給要因

株価急落の要因としては、(1)プログラムトレーディングの引き金による悪連鎖、(2)スピード違反の修正、が考えられる。問題はスピードにあった。

スピード違反とは:株価(NYダウ平均)はトランプ当選以降、1年余りで42%と著しく上昇。これはスピード違反であり、その調整が起きている。株価水準はバブルではない。しかし、急上昇はちょっと行き過ぎ。NYダウは120年間、年率6%弱、過去40年間で26倍、年率9%、と比較しいかにも速い。株式投資家に異常に大きな超過リターンがもたらされたということ、これは健全ではなく金融市場にゆがみをもたらす原因になる。この株式投資家が享受した異常な高リターンの修正、という合理性がある。

●日本株式は水準、スピードともに米国より大きく割安

日経平均は昭和の後半1950年のボトム(1950年1月31日の92.6円)から1989年のピーク(1989年12月末3万8916円)までの40年間、約400倍、平成に入り30年間で株価は下落(平成初月1989年1月末3万1581円、現在平成30年、2万3000円として)。米国のようなスピードの調整の必要性は小さい。国債利回り・預金とのリターン比較において米国よりさらに、絶対的に割安だ。

日本企業が「Number one strategy」で敗退し、「Only one strategy」に転換して収益力を著しく高めている点については、ブレティン192号投資ストラテジーの焦点303号をご覧いただきたい。

(2018年2月7日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン194号」を転載)

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