富田隆弥の【CHART CLUB】 「陰転を甘く見るな」
◆世界のマーケットが大きく荒れた。満月、日銀決定会合、FOMC(議長交代)、米雇用統計、そして節分などが重なり変化日になりやすかった1月末から2月の初め。そのタイミングでNYダウは1月26日の最高値2万6616ドルから2月6日の2万3778ドルまで10.6%も急落。そして、日経平均株価は6日に2万1078円まで急落、1月23日高値2万4129円からは率にして12.6%の急落だ。
◆急落のキッカケは1月の米雇用統計で賃金が上昇し、米10年債利回りが2.8%台に上昇したこと。「利上げピッチが速まる」「適温相場の終了」などと指摘されたが、好景気、好業績を背景に日米当局、市場関係者とも慌てる様子はまだ見られない。
◆だが、チャートの観点はまったく異なる。リーマンショックから9年、過去に例を見ない緩和マネーが世界中に溢れ、欧米の株式市場は過去最高値を大きく更新、チャートは過熱警戒を無視して三段上げ、五段上げと上昇波動を描き、最近は腰を大きく伸ばし仕上げ局面にふさわしい高騰を見せていた。
◆新興国を含めた世界の株式市場、原油や金などコモディティ(商品)市場、住宅や不動産、さらにビットコインなどの仮想通貨も同じで、いずれも余ったマネーの流入で高騰を見せていたが、ここ急速に変調が見られる。つまり、世界で繰り広げられた9年間の「マネーバブル相場」がここでピークアウト、亀裂を入れたことに要警戒となる。
◆そして、忘れてならないのは「投機マネー」が膨らんでいること。運用難の地合いの中で膨大なマネーを引き受けているのがヘッジファンドで、さまざまな手法で高い利回りを追求している。コンピュータによる超高速取引やAI運用は多くのところが取り入れ、ボラティリティに連動するようなオプションや仕組債も広まっている。ヘッジファンドだけでなく金融機関も独自に同じような運用手法を編み出し、同じように資金を振り向けている。こうした運用実態の基で「相場急落」となれば、資金の流れが急速に大きく変わることは否定できない。
◆そして、相場が崩れると「負の連鎖」が生じる。サブプライム化している不動産や自動車のローン、ESG(環境・社会・企業統治)やスマートベータ(売上・配当・ROE)を重視したETFへの資金偏重、日銀の株式大量保有も含め投資家の多くが同じところに資金を振り向けていることもリスクだろう。
◆相場の最大の材料は「需給」だ。上昇基調が続いているうちは「買い」主体で回っているが、基調が崩れると「売り」が一気に優勢となり、裏に隠れていた懸念要因が次々と表に出てくるもの。好景気も好業績(PER)も下げ基調が終わるまでお呼びでなく、過熱警戒のテクニカルが意識され、少なくとも日足チャートが好転するまでさまざまなリスクがつきまとうだろう。
◆日足の好転を簡単に言うなら「25日移動平均線の突破」だ。日経平均の25日移動平均線は現在2万3400円処だが、それをクリアするまでは「9年間のバブル」の反動が警戒され、「戻り売り」の基調が続くことは否めない。
(2月8日 記、毎週土曜日に更新)
株探ニュース