為替週間見通し:ドルは下げ渋りか、米株安も3月利上げへの思惑残る
■ドル・円は一時108円05銭、世界的な株安を嫌気して円買い強まる
先週のドル・円は下落。欧米諸国の金利先高観が台頭し、主要国の株価は総じて下落したことを嫌気してリスク回避の円買いが活発となった。NYダウ平均は週間ベースで5%超の下げ、日経平均株価は8%超の下げとなったことはドル売り材料となった。
米長期金利(10年債利回り)は一時2.88%近辺まで上昇したが、米国債利回りの上昇は株安の要因となっており、ドル買いに直結しなかった。5日と8日にはNYダウは前営業日比で1000ドル以上も下げた。9日のニューヨーク市場では、「日本政府は日本銀行黒田総裁を再任する方針を固めた」との報道を受けてドル買い・円売りが強まる場面もあった。
しかしながら、株式市場の乱高下や原油安を嫌気したドル売りも観測されており、ドル・円は一時108円05銭まで下落し、年初来安値を下回った。NYダウが取引終了時点にかけて急反発したことから、ドルを買い戻す動きが広がり、ドル・円は108円80銭でこの週の取引を終えた。取引レンジ:108円05銭-110円29銭。
■ドルは下げ渋りか、米株安も3月利上げへの思惑残る
今週のドル・円は下げ渋りか。米国株式相場は調整局面に入ったとの見方が広がっており、株高を期待したリスク選好的なドル買い・円売りはやや後退しそうだ。今月2日に発表された米1月雇用統計は堅調な内容だったことから、連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペースは加速するとの思惑が浮上したが、世界的な株安を受けて利上げは年3回にとどまるとの見方が増えている。また、世界的な株安を嫌気して、ユーロ、豪ドル、カナダドルなどに対する円買いが優勢となっていることもドル・円の取引に影響を与えている。
しかしながら、14日に発表予定の米1月消費者物価指数(CPI)と15日に発表予定の1月生産者物価指数(PPI)などのインフレ指標が市場予想を上回った場合、3月追加利上げ観測は一段と広がり、ドル買い・円売りが再び拡大する場面も想定したい。米地区連銀総裁の大半は利上げ継続の方針を支持しており、株安は追加利上げの妨げにはならないとみられる。ドル・円は108円台で下げ渋っており、110円台を回復した場合、ドルを買い戻す動きが急速に広がる可能性がある。
【米・1月消費者物価コア指数(コアCPI)】(14日発表予定)
14日発表の1月消費者物価コア指数(コアCPI)は、前年比+1.7%と予想されており、インフレ率は12月実績の+1.8%を下回る見込み。ただし、市場予想を上回った場合、利上げ継続の方針を後押しする材料となり、ドル買い・円売りを促す一因となりそうだ。
【米・2月フィラデルフィア連銀景況調査】(15日発表予定)
2月フィラデルフィア連銀製造業景気指数は21.0と予想されており、1月実績の22.2を下回る見込み。市場予想を下回った場合、製造業の業況悪化に対する警戒感が高まり、ドル売り材料になるとみられている。
予想レンジ:108円00銭-111円00銭
《FA》
提供:フィスコ