山内俊哉氏【円高警戒と底抜け日経平均、ここからの対応策は】(2) <相場観特集>
―2月14日の安値下回り、新たな下値模索局面に移行―
東京株式市場は売り優勢の地合いが続いている。週明け5日に日経平均株価は一時フシ目の2万1000円台を割り込み、一番底とみられていた2月14日のザラ場安値2万950円をも下回った。再び下値模索の動きを強めるなか、投資家もここは買い向かうべきか見送るべきか大いに迷う場面といえる。為替のドル安・円高が大きな重荷となっており、全体相場の戻りを封じている。そこで、今回は株式市場の見通しや為替相場の見通しについて複数の専門家に意見を聞いた。
●「ドル円は102円意識も、米国は中間選視野に保護主義傾向に」
山内俊哉氏(上田ハーロー 執行役員)
ドル円相場は、一段の下値を試す可能性があると見ている。国内要因では、日銀の量的緩和やイールドカーブ・コントロール(YCC)政策は賞味期限切れと見られ始めている。海外勢は、今後日本も物価上昇が見込まれるなか、日銀は金融緩和策からの「出口」を探ると見ているようだ。
また、米国ではパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)新議長は継続して利上げを行う姿勢を示している。今年の米利上げは、個人的には年3回とみているが、市場は「年4回」の可能性も視野に入れ始めている。
通常なら、日米金利差が拡大することは、ドル高・円安をもたらすはずだが、NYダウは1月にピークアウトした可能性もあるなか、市場はリスクオフによるドル安基調となっている。
さらに、トランプ米大統領が「保護主義」基調を強めていることもドル安要因に働く。11月の中間選挙で米民主党が勝利した場合、トランプ大統領は、ロシア疑惑に絡み弾劾される可能性も出てくる。それだけにトランプ大統領は中間選挙に勝つため、支持層の票固めに向け、今後も保護主義政策を強めることが予想される。このことはドル安・円高の思惑を生みやすい。
3月は日本企業によるリパトリエーション(本国への資金還流)でドル売り・円買いの需要が膨らむことも、ドルの上値が重い要因となっている。
今後1ヵ月程度のドル円相場の安値は、チャート上は1ドル=103円60銭前後が見込めるが、相場のオーバーシュートを考慮すれば102円が視野に入る。ドルの上値は108円程度だろう。米連邦公開市場委員会(FOMC)などに加え、今月の20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、保護主義に関して、どんな声明が出るかも注目される。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(やまうち・としや)
上田ハーロー、執行役員・マーケット企画部長。1985年 商品先物会社入社。コンプライアンス、企画・調査などを経て1998年4月の「外為法」改正をうけ外国為替証拠金取引の立ち上げを行う。2005年7月 上田ハーロー入社。前職の経験を生かし、個人投資家の視点でブログなどへ各種情報の発信やセミナー講師に従事。日経CNBC「朝エクスプレス」為替電話リポートに出演のほか、金融情報サイトなどへの情報提供などでも活躍している。
株探ニュース