窪田朋一郎氏【マーケット最前線、新年度相場の勘所を聞く】(1) <相場観特集>
―米中の貿易摩擦に振り回される東京市場の行く先は―
米中貿易摩擦の激化が世界景気に与える影響を懸念して、世界の株式市場が変調をきたしている。東京株式市場は、米株安と円高を横目に日経平均株価は下値模索を強いられ、2万円大台攻防すら意識させる展開にある。きょうは朝安後プラスに切り返したものの、依然として方向感に乏しい。あすが実質月内最終商いで17年度相場は終わりを告げることになる。視界不良な中で新年度相場の幕が上がるが、投資家はどういう投資スタンスをとるべきか。第一線で活躍する市場関係者に4月相場の見通しを聞いた。
●「米中間の交渉が相場の帰すうを握る展開に」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
東京株式市場は不安定な地合いにあり、当面は米中間の動向を見守る展開となる。トランプ米大統領は保護主義の姿勢を前面に押し出し、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限や、中国に対しては知的財産権の侵害を理由に中国製品への追加関税を課す制裁措置を発表したが、一部メディアによると、その後水面下で両国が改めて交渉を開始したとの観測も出ている。
貿易戦争に発展すれば、トランプ政権にとっても米国株下落という形で跳ね返ってくるだけに、本意ではないはすだ。今回の制裁措置発動は高めのビーンボールを投げておいてネゴシエーションにつなげようという思惑も感じられ、どこかで落としどころを探る動きとなろう。
ただし予断を許さないのも事実で、水面下での交渉の行方次第で株式市場にも大きな影響が出そうだ。交渉が良い方向に進めば、全体相場もここまで大きく調整をいれてきただけに急反騰に転じる可能性もある。この場合は日経平均2万1300円前後への戻りが期待できるとみている。一方、米中間の対立が一段と先鋭化した場合は、全体相場は下放れを余儀なくされ、1万9300円近辺まで下押す可能性がある。
いずれにしても、米中間で交渉が続いている間は方向性がつかめず、2万円~2万800円台前後のボックス圏往来を続ける展開が想定される。目先は今週水曜日(28日)が配当落ちとなり、200円弱の下押し圧力が働く。そのため大崩れはなくても、2万円ラインを瞬間割り込むような弱い地合いとなるケースも考えられる。
外国為替市場ではリスクオフのドル売り・円買いの動きが株式市場の重荷となる。米中間の交渉が不調に終われば、1ドル=100円大台攻防を意識した円高が進む可能性があるが、逆に落としどころがうまく確保できれば、108円前後へと急速な円安へ切り返す形も想定される。
当面の物色対象としては、為替の動向に左右されやすい輸出セクターは手掛けにくく、内需系の通信や食品セクターなどディフェンシブ性の強い銘柄群が有利と考えている。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース