高橋春樹氏【マーケット最前線、新年度相場の勘所を聞く】(2) <相場観特集>
―米中の貿易摩擦に振り回される東京市場の行く先は―
米中貿易摩擦の激化が世界景気に与える影響を懸念して、世界の株式市場が変調をきたしている。東京株式市場は、米株安と円高を横目に日経平均株価は下値模索を強いられ、2万円大台攻防すら意識させる展開にある。きょうは朝安後プラスに切り返したものの、依然として方向感に乏しい。あすが実質月内最終商いで17年度相場は終わりを告げることになる。視界不良な中で新年度相場の幕が上がるが、投資家はどういう投資スタンスをとるべきか。第一線で活躍する市場関係者に4月相場の見通しを聞いた。
●「米中貿易交渉の妥協点に注目、戻り相場のタイミング探る動き」
高橋春樹氏(三木証券 取締役 商品本部長)
昨年の9月以降、米トランプ政権の法人税減税やインフラ投資増大などのプラス面を評価して日経平均は上昇してきた。ところが、ここにきてトランプ政権が、中国による知的財産権の侵害を理由に、同国製品に対して年間で500億ドル(約5.3兆円)相当の関税を課することを発表したことで、米政権に対する評価が真逆のマイナスとなり株価が大きく下落している。
米中貿易摩擦に端を発し、世界規模の幅広い業種での設備投資意欲の後退や、製品の原料や部品の需要が減少するなど、経済活動萎縮への警戒感が高まっていることは事実。ただ、米国は最も強烈な要求からスタートしており、今後中国とのさまざまな交渉のなかで、落としどころが定まってくれば、不透明感が払拭されて徐々に株価も戻り歩調になるものと想定している。トランプ政権が強硬姿勢を継続すれば、中国の報復も想定され、結局大統領の支持基盤である米国民中間層のへの経済的な打撃が大きくなるという矛盾の構造をはらんでいるため、米中での妥協点が見いだされることになりそうだ。
日経平均は、きょう一時、昨年9月に今回の上昇相場がスタートした2万300円近辺の水準にまで下押す場面があった。上昇の出発点までいったん売られたことで、今後は戻りに転じる可能性もある。また、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書の改ざん問題で、佐川宣寿・前国税庁長官の証人喚問が27日に実施されることで、国内の懸念材料についても新たな局面を迎える。
4月の日経平均は、2月以降これまで継続して売り越してきた海外投資家の投資姿勢に大きく影響されそうだ。4月は、海外投資家の売買動向にとって特異月で、昨年まで17年間連続で日本株の買い越しを続けているという実績がある。4月中でみれば、現在13週・26週の両移動平均線が位置する2万2200円水準までは戻る可能性がありそうだ。戻り相場では、これまで米中貿易摩擦懸念で売られた半導体関連などの外需株に加え、小売り関連などの内需株にも注目したい。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(たかはし・はるき)
1977年岡山大学法文学部卒業・第一証券入社。1999年第一証券エクイティ部長兼投資運用部長、2005年三菱UFJ証券エクイティ部長、2011年三木証券投資情報部長。
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