為替週間見通し:ドルは伸び悩みか、シリア攻撃実行を意識して円売り縮小も

通貨
2018年4月14日 15時41分

■米中貿易戦争回避への期待でドル強含み

先週のドル・円は強含み。トランプ米大統領は11日、ツイッターへの投稿でシリア空爆の可能性を示唆したことから、中東地域における地政学的リスクが高まり、リスク回避のドル売り・円買いが優勢となった。しかしながら、11日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨はタカ派的な内容だったことから、リスク回避のドル売りは一服した。

習近平中国国家主席が、改革開放の継続や知的財産の保護強化、自動車の輸入関税の引き下げなどを表明したことから、米中の貿易戦争は回避されるとの期待が浮上したこともドル買い・円売り材料となった。トランプ大統領は12日、ライトハイザー米国通商代表やクドロー国家経済会議(NEC)委員長に、環太平洋経済連携協定(TPP)の再考を命じたこともドル買い材料となり、ドル・円は一時107円78銭まで買われる場面があった。

ただ、13日のニューヨーク外為市場では、4月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値が市場予想を下回ったことや、米国などがシリアへの軍事介入を実行する可能性が再び高まったことから、リスク回避的なドル売り・円買いがやや活発となった。米国株の反落も嫌気されており、ドル・円は、107円78銭まで上昇後、107円26銭まで反落し、107円37銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:106円62銭-107円78銭。

■ドルは伸び悩みか、シリア攻撃実行を意識して円売り縮小も

今週のドル・円は伸び悩みか。米トランプ政権は13日、シリアに対する軍事介入を実行した。英、仏も攻撃に参加した。シリアへの軍事介入によって米国とロシアの関係が大幅に悪化するとの見方があることから、週初よりリスク回避の取引が増える可能性がある。

また、トランプ米政権は貿易不均衡の是正にも注力しており、国益最優先の通商政策では、対中、対日貿易赤字の是正が焦点になっていることから、リスク選好的なドル買い・円売りは抑制される可能性がある。米国企業の業績改善を好感して米国株式が堅調に推移した場合はドル買い材料となるが、シリアへの軍事介入が続いた場合、米国株式は大幅安となる可能性があり、リスク回避的な円買いが強まると予想される。

中国の習近平国家主席は10日、ボアオ・アジアフォーラムで演説し、中国経済の開放をさらに進め、自動車を含む一部製品の輸入関税を年内に引き下げる方針を表明した。貿易相手国や外国人投資家への金融市場などへのアクセスを大幅に拡大する方針も強調したことから、米中貿易戦争はひとまず回避されるとの見方が広がっている。

しかしながら、中国、日本の対米貿易黒字は高水準であり、中国税関総署は今年1-3月期の対米貿易黒字は、前年同期比+19.4%、582.5億ドルに達したと発表した。日本については、2017年の対米貿易黒字額は約7兆円(7兆356億円)、黒字額は2年ぶりに増加した。一部の市場関係者は、「17-18日の日米首脳会談で貿易赤字の是正に向け、円安誘導を制限する措置を求める可能性がある」と指摘している。

米財務省が13日提出した最新の半期為替報告書では、日本と中国は引き続き「監視対象国」リストに含まれており、米国は貿易赤字の早期是正に向けて様々な分野で対日圧力を強める可能性がある。米為替報告書は「日本の介入は異例なケースに限定されるべき」と指摘しており、ドル安・円高が進行しても、円売り介入を実施することは難しくなるとみられている。

【米・3月小売売上高】(16日発表予定)

16日発表の米3月小売売上高は前月比+0.3%と予想される。1月と2月はいずれも-0.1%となったが、市場予想を上回った場合、個人消費の回復によって持続的な経済成長実現への期待が高まりそうだ。

【日米首脳会談)】(17-18日開催予定)

17-18日に米フロリダで行われるトランプ米大統領の安倍首相との会談では、日本側が日米両国の通商のあり方を議論する新たな対話の枠組みを提案すると一部で報じられている。米朝首脳会談に向けた意見交換や米国のTPP(環太平洋経済連携協定)への回帰、シリア攻撃、米国の対日貿易赤字是正などについても議論されるとみられる。為替について時間を割いて議論される可能性は高くないと予想されているが、トランプ政権が通貨安誘導をけん制した場合、ドル売り・円買いの材料となる可能性がある。

予想レンジ:105円50銭-108円50銭

《FA》

提供:フィスコ

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