ラクオリア創薬 Research Memo(3):動物薬の上市でロイヤルティを初めて計上。収益が大幅に改善して着地

特集
2018年4月16日 18時05分

■業績動向

ラクオリア創薬<4579>の2017年12月期は、売上高1,419百万円(前期比713百万円の増収/前期決算は非連結。以下同)、営業損失150百万円(同609百万円の改善)、経常損失80百万円(同640百万円の改善)、親会社株主に帰属する当期純損失58百万円(同669百万円の改善)となった。

2017年12月期は期中に複数回の業績修正を発表したが、連結への移行や営業外損益や特別損益による微調整を除いた実質的な業績予想の修正は2回で、いずれも上方修正だった。最終的には直前の修正予想の線で着地した。

2017年12月期の大きなトピックは、米国で動物薬2剤が上市された結果、創立以来初のロイヤルティ収入が入ったことだ。これにより、同社の収入構造は厚みと安定性が格段に飛躍したと言える。また、ヒト領域で初の新薬発売が期待されるカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)について、導出先のCJヘルスケアが韓国内での販売を目指して新薬承認申請を行った。さらに年末には当初の業績予想には織り込まれていなかった2つのライセンスアウトが実現した。1つはマルホに対する選択的ナトリウムチャネル遮断薬の導出だ。これは同社のイオンチャネル創薬領域での初導出案件となる。もう1つはCJヘルスケアに対するP-CABの対象領域の拡大だ。従来の東アジア・東南アジアに加え、中南米、東欧、中東が追加された。同社はこれにより契約一時金収入を獲得した。

一方、事業費用は前期比104百万円の増加の1,569百万円にとどまった。同社は英国で5-HT2B拮抗薬のP-1臨床試験を行っていたが、その完了が2018年12月期初頭にずれ込んだ。この直接的な影響額は332百万円(費目は研究開発費)で、その分だけ事業費用の総額が計画比で減少し、結果として営業損失を減少させた。この点を加味すれば、2017年12月期の営業損失は482百万円だったことになる。

研究開発費以外では、費用の増加は人件費(前期比12百万円増)と事業原価(同4百万円増)に抑制され、管理統制費(同37百万円減)、施設関連費(同17百万円減)、その他(同28百万円減)は減少した。期初計画との比較では、P-I臨床試験の影響とは別に自助努力によって約66百万円の費用削減が実行されたとみられる。

研究開発費についてだが、同社の研究開発費は基本的に年間300百万円前後で推移している。臨床試験は1件当たり数億円というまとまった金額が発生するため、年度によって研究開発費に大きな山を作り、そのタイミング次第で営業利益以下が大きく変動することになる。2017年12月期と2018年12月期はまさにそうした時期に該当する。単年ごとの利益変動に一喜一憂するのではなく、両年の動きを平準化(ノーマライズ)して考えるなどの冷静な判断・評価が重要だろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《MW》

提供:フィスコ

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