パラジウムは“史上最高値”を目指すか、米中貿易摩擦が行方左右 <コモディティ特集>

特集
2018年4月18日 13時30分

―10日習近平演説後に1000ドル回復、米新車販売状況もカギに―

パラジウムの現物相場は年初に史上最高値1,138ドルを付けたのち、株価急落や米自動車販売の減少見通し、米中間の貿易摩擦に対する懸念などを受けて調整局面を迎え、900ドル前後まで下落した。しかし、4月10日の中国の習近平国家主席の演説をきっかけに貿易摩擦に対する懸念が後退すると急反発し、16日に1,000ドル台を回復した。需給のバロメーターとなるリースレート(貸出金利)が再び上昇し、供給ひっ迫感が強まったことを示している。パラジウムは昨年、最もパフォーマンスが良かったコモディティであり、再び上値を試す可能性があるのか検証する。

●米中間の貿易摩擦の行方

トランプ米大統領は3月に鉄鋼・アルミニウムの輸入関税を発表した後、中国からの輸入品のうち最大600億ドルに相当するハイテク・通信機器に関税を課すことを計画していることを明らかにした。米通商代表部(USTR)が4月に入り、中国からの輸入品に対する25%の追加関税について、対象が約1,300品目に上り、年間500億ドル程度に相当することを明らかにすると、中国政府は米国の制裁関税に対する報復措置案を発表し、貿易摩擦に対する懸念が高まった。大豆や小麦、自動車、航空機など106品目の米製品に25%の関税を上乗せするとした。

しかし、中国の習近平国家主席が10日、海南省で開催中のボアオ・アジアフォーラムで演説し、中国経済の開放をさらに進め、自動車を含む一部製品の輸入関税を年内に引き下げる方針を表明すると、貿易摩擦に対する懸念が後退した。米大統領はツイッターで「習主席の丁重な発言に感謝する」と述べたが、中国商務省は、米国との貿易問題がエスカレートした場合の準備は十分できており、躊躇なく反撃すると警告した。また、中国と米国は二国間の貿易摩擦を巡る交渉を行っていないとした。

先行き懸念は後退したが、今後の交渉次第では再び貿易摩擦に対する懸念が再燃する可能性が残っている。当初、米国は中国との交渉期間を「2カ月」に区切る考えを示しており、6月までに交渉がまとまるのかどうかを確認したい。一方、米商務省は16日、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)がイランや北朝鮮に対し通信機器を違法に輸出していたとして、米企業によるZTEへの製品販売を7年間禁止すると発表しており、この措置に対する反応も確認したい。

●北朝鮮を巡るイベントも確認

米英仏は14日、シリアの化学兵器施設を攻撃した。シリアの首都ダマスカス近郊の東グータで7日、毒ガス攻撃が行われたとされたことに対し、化学兵器使用を阻む必要があるとの見方から軍事攻撃が実施された。しかし、再攻撃の可能性は低いとの見方から市場への影響は限定的となった。

今後は北朝鮮の非核化の行方が焦点となる。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は3月末の中朝首脳会談で、朝鮮半島の非核化実現に尽力する、と表明している。一方、米大統領が次期国務長官に指名したポンペオ中央情報局(CIA)長官は、北朝鮮が非核化に向けて不可逆的な措置を講じるまで、米朝首脳会談から見返りを得ることを期待すべきではないとの見解を示した。北朝鮮は段階的非核化を求めており、米国の要求に応じるかどうかが今後の会談での焦点になる。

27日には南北首脳会談があり、韓国との協議の行方を確認したい。5月か6月初旬には米朝首脳会談が予定されており、順調に進むと、リスク選好の動きが出てパラジウムの支援要因になるとみられる。

●3月の米中の新車販売は増加

3月の米新車販売は年率1,750万台となり、事前予想の1,690万台を上回った。前年同月は1,680万台。堅調な米景気や大幅値引きを追い風に増加した。一方、中国汽車工業協会(CAAM)によると、3月の自動車販売台数は前年比4.7%増の266万台となり、2月の11.1%減少から増加に転じた。第1四半期の販売台数は前年比2.8%増となった。CAAMは、今年の販売台数について、2017年と同水準の3%増になるとの見通しを示した。また、CAAM関係者は自動車に対する輸入関税引き下げは国内自動車メーカーの圧迫要因だが、耐えることができると述べた。

今後は米中の貿易摩擦の交渉の行方が焦点である。好調な新車販売が続くようなら、パラジウムが史上最高値を試す可能性も残っている。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.