米長期金利“3%超え”と軟調相場、沈静化後は日本株に“上昇の波” <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2018年4月27日 19時40分

●米長期金利が4年3カ月ぶりに3%超え

米国時間の24日、10年物国債利回りは2014年1月以来、4年3カ月ぶりに3%を超えてきた。市場関係者の一部はこの長期債の動きについて、2月の米国発・世界同時株安との類似性を指摘し、波乱の再来に警戒を示す。

確かに米10年物国債利回りを10年間のスパンでみると、フシ目を抜けてきたともみてとれる。また、S&P500の配当利回りは現在2.8%程度と長期債利回りを下回っており、リスクをとって株式投資を行う投資家は減るのではと懸念する声も聞かれる。

だが、株価が上下するリスクをとりながらの配当利回り2.8%と、債券投資で安定的に金利を受け取ることのどちらが投資家にとって資産運用上のメリットがあるかは、一概には答えられないだろうし、利回りだけを見て株式での運用を排除するのは偏った見方ではないだろうか。

例えばS&P500の2019年予想ベースのPERは15倍割れ程度とされる。15倍で計算すると、株式益利回りは約7%になる。これと比べると長期金利が3~4%であっても株式になお投資妙味があるともいえよう。

これまで長い間、下落基調にあった米10年物国債利回りが3%を超えたからといって、即座に株を売る動きに繋がるとみるのは早急すぎないか。その証拠に10年物国債利回りが3%を超えても、VIX指数は反応していない。

筆者はイールドカーブが順イールドを形成し、直近ではスプレッドも拡大しつつあることから、今回の3%超は「良好な景気を背景に長期金利が上昇」している、その結果であるとみている。

●米株変調の陰にヘッジファンドの換金売り

とはいえ、日本市場に比べ米国市場の軟調さが目立つのは確かだ。米国企業の決算などを見れば、もっと上昇してもおかしくはない。

米国市場に何が起こっているのか?

筆者が最も納得できた見解は「米国の税制改革により、ヘッジファンドが10年近く繰り延べしてきた税金の支払いが4月の半ばにあった。そのため、ヘッジファンドが株式を現金化した」というものだ。

この見立て通りであれば、ヘッジファンドによる株式の換金はピークを過ぎ、今後は業績のよい銘柄には再び買いが入ってくるのではないか。

米長期金利の上昇を受けてドル高・円安に傾いていることは日本株には追い風だが、冴えない米国株式市場が重石となって上値の重たい展開が続いている。しかし、需給改善を背景に米国市場が落ち着きを取り戻せば、日本株にも上昇の波がくるのではないだろうか。

繰り返すが、現在の長期金利上昇について筆者は懸念すべき要因とはみていない。むしろ、米国企業の決算発表の内容を見る限り、景気拡大と資金需要の拡大を背景とした「良い金利上昇」としてポジティブに捉えている。

◆東条麻衣子

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