好決算を裏切る株価急落、見えはじめた“ピーク”と“中国の影” <東条麻衣子の株式注意情報>
―売られすぎの中国関連株は何を語る?―
2018年3月期決算の発表がほぼ出揃った。今回の決算発表を振り返ると「発表内容」が良好であるのにも関わらず、株式市場で極端に売られる銘柄が目立ったことが特徴の一つといえるのではないか。
特に中国での売上比率が高い銘柄で、売り圧力は発表から時間を置いても引き続き強いようにみえる。
もちろん、米中貿易摩擦への懸念もあろうが、米国株の上昇や米長期金利、ゴールド、ドル円などの値動きを見る限り、3月に比べて貿易摩擦そのものへの警戒感は和らいでいるようだ。
では、マーケットは中国の『何』に反応しているのか。
筆者は中国の政策が大きく影響していると考えている。
■中国・新規融資の伸び率鈍化
中国当局は、内需支援策として緩和的な金融政策を行う一方、金融システムのリスク要因として問題視されてきた債務の圧縮に取り組んでいる。
5月11日に中国人民銀行が発表した4月の新規人民元建て融資をみると、1兆1800億元とアナリスト予想は上回ったものの、欧州市場調査会社のキャピタル・エコノミクスが公表した総信用の伸びを示す指標では12.1%増と鈍化し、伸び率は2006年以来の低水準にとどまった。
融資の伸び率の鈍化は、企業などの積極的な設備投資やインフラ投資の減速につながる。同時に、融資を行うことで利益を上げる銀行など金融機関の成長鈍化をもたらす。
金融は言わば経済の“心臓部”であり、国の政策によりその中枢が受ける影響は、不動産や鉄鋼、非鉄、建設機械などに広く波及し、その国全体の経済へと反映される。
■「中国製造2025」
中国政府は主導する長期戦略プラン「中国製造2025」において、2025年までに製造強国の仲間入りを果たし、建国100周年を迎える2049年には世界一の製造強国への躍進を目指している。この目標達成に向けて自動車やロボット、バイオなどを10大重点産業分野に定め、基幹部品や材料の国内生産比率を引き上げるべく、日本などが有する先進技術の取り込みを進めている。今後、第1段階の目標年とされる2025年に向けて国産化率を向上させる動きは一層加速していくとみられる。
中国の経済成長率が鈍化する可能性がある中、国産化への傾斜が想定される状況下では、日本企業が2018年3月期と同様、もしくはそれを上回る受注を中国で獲得し続けられるのか、その懸念が伺えたのが今回の決算に対する市場の反応だったのではないだろうか。
2018年3月期に日本の工作機械、 ロボット、 建設機械といった企業は中国への輸出拡大により売り上げを大きく伸ばしてきた。逆にいえば、中国次第でその業績は大きく変わる可能性があるということだ。
もちろん、先に挙げたような業界の企業の技術は素晴らしいものばかりだが、中国が技術の高度化や国産化を加速する状況にあっては、業績の下振れ懸念は残る。まして、米中貿易摩擦が激化する可能性も完全に払拭されたわけではない。
好決算であるのに急落――“中国”の経済・政策動向を背景に、企業業績がピークに達したと考える機関投資家や海外勢の動きを映し出す銘柄が現れはじめたと筆者はみている。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。
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