為替週間見通し:ドルは伸び悩みか、地政学リスクに対する警戒感残る
【先週の概況】
■米長期金利上昇でドル・円は一時111円08銭
先週のドル・円は堅調推移。米長期金利の上昇や原油高を意識したドル買い・円売りが活発となり、111円08銭までドル高・円安が進行した。米中貿易協議が再開されたことで貿易戦争突入への懸念は後退したこともドル買いにつながった。中国はトランプ米大統領に、米貿易赤字を削減する年間2000億ドル規模のパッケージを提案するとの一部報道は否定されたものの、中国側は対米貿易黒字の削減を前向きに検討するとの期待が広がった。
米4月小売売上高を好感して4-6月期の成長拡大への期待が広がり、10年債利回りは一時3.13%近辺まで上昇したこともドル買い材料となった。次回6月12-13日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で0.25ポイントの追加利上げが決定される見込みだが、市場関係者の間ではFOMCの経済・金利予測で金利見通しが上方修正される可能性があるとの思惑が広がっている。
18日のニューヨーク外為市場では、米中通商協議への警戒感やイタリアの債務問題に対する警戒感が高まり、米国債利回りが低下したことからドル・円は111円02銭から一時110円61銭まで下落した。しかしながら、米国金利の先高観は後退せず、ドル・円は110円70銭で取引を終えた。先週のドル・円の取引レンジは109円21銭から111円08銭となった。ドル・円の取引レンジ:109円21銭-111円08銭。
【今週の見通し】
■ドルは伸び悩みか、地政学リスクに対する警戒感残る
今週のドル・円は伸び悩みか。米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げ継続の方針を堅持する一方、他の主要中央銀行は金融引き締め(利上げ)を急がないことから、米国との金利差拡大を背景にドル選好地合いは継続するとみられる。ただ、中東情勢の悪化に警戒が広がれば、リスク回避的なドル売り・円買いが強まる展開も想定したい。
FRBは今年3回ないし4回の利上げを行なう可能性が高いこと、長短金利差の逆転現象は起きないとの見方が多いことから、米10年債利回りは3%を上回る水準で推移している。23日に公表される5月1-2日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で6月の追加利上げが確認できれば、それを織り込むドル買いが強まりそうだ。ただ、利上げペースの加速についてはFOMC内でも見解が分かれている。経済指標は堅調な内容が目立つものの、金利上昇は経済成長の鈍化につながるとの景気認識が示された場合、ポジション調整的なドル売りが増える可能性もある。
地政学リスクに対する市場の警戒感は消え去っていないこともドル上昇を抑える要因となる。特に中東情勢の悪化は、今後の懸念材料か。トランプ政権はイスラエルの首都をエルサレムと認定し、イスラエルはパレスチナ、あるいはイランとの対立が激化している。イラン核合意の米国の離脱問題もあり、地政学リスクの増大が懸念されている。また、北朝鮮が南北閣僚級会談の突然の中止を表明したことで、来月12日開催予定の米朝首脳会談に不透明感が広がっている。北朝鮮が首脳会談の無期延期、中止を通告した場合、リスク回避の円買いでドルの上値は押さえられる可能性もある。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(23日公表予定)
5月1-2日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、6月利上げと利上げペースの加速に関する手がかりを得られるかがポイント。会合後の声明よりも追加利上げに前向きな内容ならドル買いを誘発しよう。
【米・4月耐久財受注】(25日発表予定)
25日発表の4月の米耐久財受注は前月比-1.4%と、前月の+2.6%を下回るものの、輸送用機器を除く受注は同+0.1%から+0.5%に改善する見通し。市場予想を上回った場合は、ドル買い材料になる。
予想レンジ:109円00銭-112円00銭
《FA》
提供:フィスコ