米国成長エンジンは止まらない――「景気敏感株」上昇復帰を待つ <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2018年5月26日 14時00分

―米経済の“心臓セクター”活性化を後押しする2つの要因―

足もと、景気敏感セクターの下押し圧力が強く、世界経済の不透明感を背景に大口のポジション調整売りが出ているとの見方が広がっている。

しかし、筆者は24日の金融規制改革法(ドット・フランク法)の成立により、世界経済の成長エンジンである米国はさらなる成長に向けた準備を整えたのではないかと考えている。

●「ドット・フランク法」改正案

24日、ホワイトハウスが6月12日に予定されていた米朝首脳会談の中止を発表した裏側で、トランプ米大統領はドット・フランク法の改正法案に署名し法案が成立した。

米朝関係については依然として注意が必要であることは間違いないが、今回のドット・フランク改正法案の成立は今後の米国の経済成長に大きな役割を果たす可能性があることを見逃してはなるまい。

ドット・フランク法は、2007~2009年に起きた金融危機(リーマン・ショック)の再発防止のために、さまざまな債券を複雑に組み合わせた金融商品を規制するなど、金融機関への監視強化を目的にオバマ政権のもとで成立した。これが経営の足枷となった金融セクターのビジネスは縮小傾向に陥り、以前から一部で「行き過ぎた規制」との見方があった。

●米長期金利の上昇で恩恵

ドット・フランク法の改正法案の成立に加えて、米長期金利は上昇傾向にある。金利の上昇も金融セクターにとっては追い風となる。

日本のゼロ金利政策は国内金融セクターにとっては重しではあるものの、海外事業を強化している金融機関も多く、米長期金利の上昇は収益拡大につながることが期待される。

経済を人間の身体になぞらえると、金融セクターは血液(資金)を供給する心臓に例えられる。その心臓の鼓動を縮小させていたドット・フランク法が改正されたことにより、同セクターの収益力は高まるとみられる。収益強化を背景に金融セクターのビジネスが活性化し、他のセクターにもより多くの血液が回り、米国経済の成長を一段と加速させる可能性が出てきた。米長期金利の上昇も、金融セクターの収益力とその資金供給力を高めることになる。

こうして米国金融セクターが潤うことで、米経済全体へと好影響をもたらし、その恩恵は次第に世界経済にも広がっていくだろう。

5月3日に配信した当コラム「“セルインメイ”が現実化する『3つの理由』」で述べた通り、現在はMSCIのルール変更による需給要因や、それに乗じた海外勢や国内機関投資家の売り仕掛けが出ているものと考えている。今月一杯はこの動きが続く可能性があるが、調整期間を過ぎれば、世界経済の成長を見据えて、金融セクターを筆頭に景気敏感セクターへの期待が再び高まってくるのではないだろうか。

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。

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