馬渕治好氏【方向感定まらぬ東京市場、6月相場はこう動く】(1) <相場観特集>

特集
2018年5月28日 18時30分

―トランプ米大統領に振り回される相場、ここからの展望は―

週明け28日の東京株式市場は前週末終値近辺で売り買いを交錯させる展開。全体売買代金が縮小傾向のなかで様子見ムードが色濃かったものの、売り圧力も限定的で下値を試すような動きもみられず、結局日経平均株価はプラス圏で着地した。前週は荒れた相場だったが、足もとの小康状態は何を意味するのか。反転への足掛かりを探す動きか、それとも一段の下落リスクを警戒すべき局面か。あすから実質6月商いとなるなか、市場第一線で活躍する識者にその見通しを聞いた。

●「目先強弱感対立も6月相場は再浮上へ」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

前週はトランプ米大統領に撹乱された相場展開となったが、ファンダメンタルズ面などを考慮すれば、ここから下値を探りに行くような地合いではない。結論としてここは強気に対処して報われる相場であると考えている。

前週を振り返って前半の日経平均2万3000円台回復は、米国と中国間の貿易交渉が良い形で進捗しているという認識が、買い優勢の地合いに反映されたとみてよい。実際、前々週にワシントンへ中国の閣僚が出向いて調整を進め、中国は輸入を増やすという選択を米国側に示した。これで報復関税の発動は免れたというムードが広がった。しかし、その後米国は自動車の関税引き上げを検討していることを発表、対米通商問題に対する不透明感が再び強まり、全体相場を押し下げる背景となった。もちろん、米朝首脳会談の中止を表明したこともネガティブで、トランプ氏一流の駆け引きとはいえ、マーケットにとってはいい迷惑であり不安定な相場を助長する格好となった。

しかし、東京株式市場も足もとは冷静さを取り戻している。米朝首脳会談は実施に向けた協議が再開されていることに加え、自動車の関税引き上げについても自国の産業界から異論を唱える声が出ている。他国との報復関税合戦となれば米自動車業界も困った状況に陥るわけで、その観点から米国の大幅な関税引き上げも実現性の伴わないものとなろう。

東京市場の前週の下げは、そうした要因を考慮しても違和感のある下げだった。これはCTAなどアルゴリズム売買の影響が大きかったが、既にここからは売り込みにくい。また、当然ながら一方向への偏ったアルゴ売買は戻りのプロセスでも作動する可能性があり、相場観を働かせればここは買い場の提供とみてよい。米企業の業績絶好調は確認されているところだが、日本企業についても、個人的には今期予想について保守的過ぎるとみており、早晩上方修正に動く公算が大きい。

日経平均は6月相場で2万4000円をうかがう強調相場を見込んでいる。物色対象としては、資生堂 <4911> や花王 <4452> のほかセブン&アイ・ホールディングス <3382> など小売の勝ち組に注目。外需系では中国向け受注が回復歩調にある半導体製造装置関連で、東京エレクトロン <8035> やアドバンテスト <6857> などに注目したい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資の鉄人」(共著、日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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