桂畑誠治氏【日経平均急反発! 夏相場への序曲は聞こえたか?】(1) <相場観特集>
―重要スケジュール目白押し、期待と不安のハザマで漂う市場―
東京株式市場は週明け4日に日経平均株価が急反騰に転じた。5月下旬は外国為替市場での円高などが足かせとなって全体相場は下値模索を余儀なくされたが、6月相場に入り景色が変わってきた。とはいえ、ここから重要スケジュールが相次ぐ。追撃か見送りか、投資家にとっても悩ましい場面だが、第一線で活躍する市場関係者は今の地合いをどう見ているのか。6月相場の見通しや物色の方向性について意見を聞いた。
●「2万3500~2万1500円のレンジ想定」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
米5月の雇用統計は大方の予想を上回る好調であったことから、経済の強さを米株市場も素直に評価する形で株高に反映された。東京市場にとっても好調な米国経済は企業収益面で追い風となる。イタリアの政局混乱に対する警戒ムードも足もと後退しており、外国為替市場では対ユーロでの円高が一服、対ドルでも米景気拡大を背景としたドル買いの動きが円安に反映されやすくなっており、これはポジティブ材料として捉えられる。
今週7日に行われる日米首脳会談では、北朝鮮問題が優先されそうだ。日米での考えの一致が確認されると思われるが、それ以上の進展を期待するのは現時点では難しい。一方、米国の関税引き上げについては、日本の立場として撤回を求めるのは当然としても、合意に至ることは考えにくい。8~9日の日程で行われるG7サミットも同様で、米国とその他の国とで6対1の構図となっているが、トランプ米大統領の保護主義的姿勢に改善は期待できないだろう。とはいえ、これらについては株式市場も十分に織り込んでいると思われ、株価の下押し圧力とはならないとみている。
今週末にはメジャーSQも控えていることで、全体相場は先物を絡め値動きが荒くなることも考えられる。ただ、需給面で下に大きく振られるようなことがあればそこはむしろ拾い場となる可能性がある。いずれにせよ、マーケットの視線は来週の米朝首脳会談とFOMCに向いており、神経質な地合いが続くことは考慮しておきたい。
米中貿易交渉を軸とした通商問題や北朝鮮などの地政学リスクを考えた場合、明確な上昇トレンド形成にはやや時間がかかる可能性はある。6月相場は下値2万1500円、上値2万3500円のレンジを想定している。物色対象としては米株市場に倣って半導体関連を中心としたハイテク株に注目しておきたい。また、自動車株も米国の保護主義的姿勢が嫌気されるものの、一方で中国の関税引き下げ効果は意識されるところであり、見直し買いの対象となることも考えられる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
株探ニュース