富田隆弥の【CHART CLUB】 「6月高値のアノマリー」
◆日経平均株価は6月7日現在、4連騰で2万2856円高値を付ける。5月30日2万1931円安値から日足はV字回復、5月21日2万3050円高値に向けまっしぐらといった感じだ。確かに強い流れではあるが、夏相場に入った6月だけに、ここで流れに乗って良いかは疑問だろう。
◆このV字回復の背景には堅調なNYダウと最高値を更新したナスダック総合がある。雇用統計など堅調な経済指標を受けてFRBは利上げピッチを早める可能性が出てきたが、ドルが独歩高となり世界に渦巻く投資マネーの米国還流が推測される。ドル高は「円安」として日本株にとって強気要因だが、「ドル円」は110円近辺で動きが鈍く、下落が目立つのは南米、南欧、東南アジアなどの通貨である。12~13日にFOMC(米連邦公開市場委員会)があり、そこで米国の利上げ基調が確認されると、アルゼンチンやトルコ、イタリア、スペインなどで地政学リスクが再燃しかねない。「円」の動きが鈍いのは「リスクオフ」に備えている可能性もある。
◆ナスダックは6日現在4日続伸し、7689ポイントと3月の最高値7637ポイントを更新した。ただ、3月の時は1月高値7505ポイントを更新して2日目に下落に転じている。英国FT指数も1月高値7792ポイントを5月21日に突破したが、翌日に高値を打って下げに転じた。高値を更新したところが売り場になるケースが今年は目立つということ。いまナスダックは日足RCIが警戒信号を出しており、高値更新がどこまで続くのか注視される。6月の米国は中間決算期でもある。
◆日本で6月といえば「梅雨」だが、証券業界では12月同様に「ボーナス」を意識する。ボーナス資金を投資に振り向けてもらおうと努力するときである。そのためには「株高」を演出するし、今年のIPOの目玉「メルカリ <4385> [東証M]」をこの時期(6月19日)に上場させる理由も納得できよう。
◆日経平均は堅調だが、個別株に目を向けると新興市場や中小型株は冴えないものが多く、指数採用の主力株だけで堅調を演出しているように映る。そこには証券会社や投資信託の尽力があると思われる。だが、夏場(6~8月)の株式市場は経験則で「調整」となりやすく、6月に高値を打つケースは珍しくない。株や投信(ファンド)を買うのは少し様子を見てからでも遅くないだろう。
(6月7日 記、毎週土曜日に更新)
株探ニュース