為替週間見通し:もみあいか、米・中貿易戦争激化への懸念残る
【先週の概況】
■米金利見通し引き上げでドル買い強まる
先週のドル・円は強含み。109円23銭から110円90銭まで上昇した。主要7カ国首脳会議(G7サミット)での米国と他国との対立を受けた貿易戦争への懸念から、ドル売り・円買いが先行した。しかし、12日に史上初となる米朝首脳会談が実現し、北朝鮮の完全な非核化への期待が高まったことから、リスク後退ムードが広がり、円売りが優勢になった。12-13日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で0.25ポイントの追加利上げが予想通り決定されたが、FOMCの経済予測で利上げ見通しが年内4回に上方修正されたこともドル買い材料となった。
ただ、15日のニューヨーク外為市場では、米中貿易戦争の激化を警戒してリスク選好的なドル買いは一服した。トランプ米大統領は、中国からの総額500億ドルに上る知的財産権およびハイテクに関連する製品に対し25%の輸入関税をかけると発表し、中国も同規模の対抗措置を導入すると発表したことから、ドル・円は、110円72銭から110円41銭まで下落し、110円60銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:109円23銭-110円90銭。
【今週の見通し】
■もみあいか、米・中貿易戦争激化への懸念残る
今週のドル・円はもみあいか。米国株式や長期金利の動向が手掛かり材料になりそうだが、米・中の貿易戦争は激しさを増していることから、リスク選好的なドル買い・円売りはやや抑制される可能性がある。株高や長期金利の上昇局面ではドル買いが優勢となりそうだが、貿易戦争への警戒感は高まっており、市場関係者の間からは「ドルが一段高となるような相場展開は想定できない」との声が聞かれている。
12-13日に開催されたFOMC会合で政策金利の引き上げが決定されたが、今年の利上げに関してあと2回(計4回)との見通しが示された。同時に、政策金利は目標としている水準に比較的早期に達するとした。そのため、来年以降は利上げペースが鈍化するとの観測が浮上しており、日米金利差のさらなる拡大を想定したドル買い・円売りが急速に拡大する可能性は低いとみられる。
欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で、市場の思惑通り資産買入れプログラムを年内に終了することを決定した。ただ、ドラギECB総裁は会見で「来年4-6月期まで弱い経済が続く可能性がある」、「利上げの時期は協議しなかった」と述べており、ECBの低金利政策は2019年前半まで継続すると予想されている。米国とユーロ圏の金利差は来年前半にかけてさらに拡大することから、ユーロ安・ドル高の状態が続く可能性があり、この影響でドル・円相場はやや円安方向に振れてもおかしくないとの見方がある。
【米・5月建設許可件数】(19日発表予定)
19日発表の米5月建設許可件数は135万戸と予想されており、前月実績(136.4万戸)をやや下回る見込み。ただ、良好な経済情勢を反映して建設許可件数は高い水準を維持しており、市場予想を大きく下回らなければドル売り材料にはならないとみられる。
【米・6月フィラデルフィア連銀景況調査】(21日発表予定)
21日発表の米フィラデルフィア連銀景況調査は、前月の34.4から29.0程度に低下する見込み。ただ、景気の良し悪しの境目であるゼロを大きく上回っており、想定を大きく下回らなければ、ドル売り材料にはならないとみられる。
予想レンジ:109円00銭-112円00銭
《FA》
提供:フィスコ