新世代「フォルダブルスマホ」で輝き放つ有望株 <株探トップ特集>
―サムスン製品の投入間近、活躍期待広がる日本の部材メーカーに注目―
スマートフォン の需要に頭打ち感が強まっている。米IDCの調査によると、2017年のスマホ世界出荷台数は16年比0.3%減の14億6500万台で、IDCが統計を取り始めて以来初のマイナスとなった。また、同社によると、18年の出荷台数は前年比0.2%減の14億6200万台と2年連続で前年を下回る見通しで、スマホ市場はもはや成長から成熟へと転じたことが鮮明になっている。
こうしたなか、「新たなスマホ」への関心が高まっている。米アップルと並んで世界のスマホ市場を牽引する韓国サムスン電子は17年秋、有機ELパネル を使った「フォルダブルスマートフォン」の18年発売を検討していることを明らかにした。既にサムスン電子やレノボなどはフォルダブルスマホのデモ動画を公開し注目を集めている。
また、アップルも折り畳み可能なiPhoneを20年発売をメドに開発しているとの噂もある。市場では、「フォルダブル」がスマホ市場の次のトレンドになるとの見方が強まっている。
●「折り畳める」スマートフォン
フォルダブルスマホとは、Foldable=「折り畳める」スマホのこと。液晶ディスプレーを2つ搭載したものは既に販売されているが、フォルダブルスマホは1つのディスプレーを折り畳むことで、スマホの「携帯性」とタブレットの「大画面」を1つの端末で可能にしたのが特徴だ。また、異なるアプリを同時に起動して利用することも可能で、例えばウェブサイトを見ながらメモアプリでメモを取るなども可能になる。
前述のサムスン電子による発売時期などは現在のところ未定だが、矢野経済研究所(東京都中野区)が4月20日に発表した「Foldableスマートフォン世界市場に関する調査(2018年)」によると、フォルダブルスマホの世界市場規模(メーカー出荷数量ベース)は、18年の9万台から、19年に30万台、2020年には90万台と急激に成長すると予測されている。
●材料・部材で日本メーカーが活躍
スマートフォン向けの有機ELパネルは現在、サムスンが世界シェア約9割を握っている。折り畳めるディスプレーも開発していることから、フォルダブルスマホにおいても同社の優位は動かないとみられている。
ただ、液晶パネルやリチウムイオン電池などで日本メーカーの技術が既存スマホの発展を後押ししたように、フォルダブルスマホについても日本メーカーの存在が欠かせないとみられている。関連する銘柄は今のうちから注目しておきたい。
住友化学 <4005> は昨年から、有機EL向けタッチセンサーの生産能力を増強している。特に引き合いの強い、折り曲げられる「フレキシブル」タイプの生産能力増強に力を入れており、21年3月期を最終年度とする中期経営計画でも約90億円を投じる方針だ。また同社では、ウィンドウフィルムやバリアフィルムといった有機EL材料でもフォルダブル対応の開発を進めており、業績への貢献も早そうだ。
また、昭和電工 <4004> は銀を用いたインクで微細な配線を施したタッチセンサーフィルムを手掛けている。従来はITO(酸化インジウムすず)と呼ばれる電極膜で指先の操作を感知していたが、金属のため折り曲げに弱いという弱点があり、これを解消している。NISSHA <7915> も同じように銀インクを使った曲げられる電極膜フィルムを開発中だ。
●化学各社が技術開発でしのぎを削る
フレキシブル有機ELディスプレー基板の大半にはポリイミド(PI)フィルムが使われている。国内のPIサプライヤーとしては東洋紡 <3101> や東レ <3402> 、カネカ <4118> 、三菱ガス化学 <4182> 、宇部興産 <4208> などがあるが、宇部興では11年にサムスンモバイルディスプレイ社と合弁会社を設立しており、サムスンの有機ELディスプレーに供給している。
またPIでは、菱ガス化が耐熱性・透過性に優れたPIワニスを提供。東洋紡も耐熱性で業界トップクラスの基板用PIフィルムを開発しており、注目されている。一方、東ソー <4042> はフレキシブルディスプレーの品質向上に不可欠な高性能ガスバリア材料を開発。水に対して従来比で10倍以上の低透過性を誇っており、これら日本の化学各社がフレキシブル有機EL向けに技術力を競っている。
このほか、日本電気硝子 <5214> は巻けるほど柔軟性に優れた超薄板ガラスの開発を進めており、フレキシブルディスプレーへの採用を視野に入れている。
一方、有機ELではなく、液晶でも折り畳めるディスプレーを開発したのはジャパンディスプレイ <6740> で、液晶に比べてまだ割高な有機ELディスプレーに対してコスト面で優位に立てることから注目したい。
株探ニュース