翻訳センター Research Memo(3):主力の翻訳事業は4分野に専門特化。派遣事業と通訳事業が好調(1)

特集
2018年6月22日 17時52分

■翻訳センター<2483>の事業概要

1. 事業環境

国内の翻訳・通訳を合わせた市場規模は2,795億円(2017年発表、矢野経済研究所)で着実に成長している。その中で翻訳のみの市場規模は2,500億円前後、グローバル化の流れの中で安定成長をしている(ヒアリングベース)。産業翻訳が市場の大半を占め、医薬・金融・自動車、電機、エネルギー、IT通信、小売業などの国内企業のグローバル展開や外資系企業の日本進出が需要発生のドライバーである。産業翻訳ニーズの最近の特徴として「スピード化」「大型プロジェクト」が挙げられる。自動車、医薬品、IT業界などを始めとして、日本企業は成長機会を求めて海外展開を加速させており、翻訳会社としても高いレベルの対応力が求められる。またAIの進展は業界に大きな変化をもたらしつつある。2016年11月にGoogle(グーグル<GOOG>)がリニューアルした翻訳ツールは、NMT(Neural Machine Translation)を採用しており、それまでに比べて格段に翻訳精度が向上し、業界を驚かせた。産業翻訳の使用では現状の機械翻訳(NMT)は、分野の得手不得手があるものの、将来的にはより多くのビジネスシーンで活用されるものと予想される。

2. 翻訳事業

主力の翻訳事業は、同社、連結子会社のHC Langeage Solutions, Inc、(株)パナシア及び新たにグループ会社となった(株)メディア総合研究所が行っている。分野特化戦略を推進しており、「医薬」、「工業・ローカライゼーション」、「特許」、「金融・法務」の4分野ごとに組織が分かれ、専門化している。

(1) 顧客業界とサービス内容

「医薬分野」の顧客は国内外の製薬会社・医療機器会社であり、医薬品・医療機器の研究開発から承認申請、マーケティングまで、あらゆるステージで発生する文書の翻訳サービスを提供する。グローバルのトップ製薬会社は外注する翻訳会社を絞る傾向にあり、プリファードベンダー(優先調達先)になれないと取引できない場合も増えている。同社では実績と知名度を背景に、世界のトップ製薬会社30社中20社以上と取引実績があり、大手製薬会社をターゲットにプロジェクト型案件及び顧客常駐型サービスの拡大を推進している。

「工業・ローカライゼーション分野」は、自動車、電機、精密機械といった主要製造業から、エネルギー、情報・通信、IT、ゲームといった非製造業まで、幅広い産業領域を対象とする。取扱文書は、仕様書、作業手順書、取扱説明書、教育資料、Webサイトなど様々であり、1つのドキュメントから複数の言語に翻訳することも多い。

「特許分野」の顧客は特許事務所や企業の知的財産関連部署であり、主に特許出願用の明細書など特許関連文書の翻訳サービスをご提供する。近年、特許事務所からの受注に加え、企業知財関連部署の売上比率が伸びており、約4割を占めるまでになった。業種としては電機、機械、化学、製薬やバイオなどの大手メーカーが中心である。

「金融・法務分野」の顧客は国内外の銀行・証券・保険会社、法律事務所及び企業の管理系部署である。金融関連では目論見書や運用報告書、法務関連では各種契約書、企業管理部署関連では決算短信や有価証券報告書、株主総会招集通知、アニュアルレポートなどのIR関連の開示資料などが代表的な文書である。近年、企業の管理系部署との取引を拡大させている。

a) 強み

同社の特長は、「組織化・システム化された営業機能・制作機能」である。これにより、要求の厳しい産業翻訳顧客に対して、バランスの良い価値(品質、スピード、コスト)を提供でき、かつ大規模プロジェクトや多言語案件にも機動的に対応できる。営業機能に関しては、

1) 専門特化によるノウハウ蓄積

2) 信頼されるコミュニケーションと顧客社内他部門への展開、

3) グループネットワークを活かしたサービスの提案

などが強みとなっている。

制作機能に関しては、

1) 4,000人を超える翻訳・通訳登録者

2) ICTによる登録者マッチングシステム

3) 翻訳支援ツール、機械翻訳(NMT)の活用

4) 80言語以上に対応

5) 専門特化した子会社(メディカルライティング、海外への特許出願支援など)

などが強みとなっている。両機能は相互に影響しあい、好循環を生んでいる。これらの強みは、当然顧客満足にもつながっており、リピートオーダーが8割を超えるのもうなずける。

b) セグメント別業績推移

翻訳事業全体では2018年3月期の売上高は7,593百万円(前期比7.9%増)、営業利益は700百万円(同35.6%増)と順調に成長した。医薬分野では外資系製薬会社に加え国内製薬会社及びCRO(医薬品開発受託機関)からの案件獲得により売上高2,445百万円(同12.2%増)、工業・ローカライゼーション分野では、情報通信関連企業との取引好調に加え鉄鋼関連企業の大型案件受注により売上高2,239百万円(同10.8%増)、特許分野では企業の知財関連部署からの受注が好調であり売上高1,880百万円(同3.0%増)、金融・法務分野では、企業の管理系部署からの受注拡大及び銀行からの長期案件受注により売上高729百万円(同2.1%減)と、分野によって好調不調の差があったが全体として堅調だった。

なお、2017年10月にはニューラルネットワークによる機械翻訳(NMT)の技術を持つ(株)みらい翻訳に資本参加(持分比率13.0%、(株)フュートレック<2468>から譲受)した。近年、機械翻訳(NMT)が急速に発展してきており、産業翻訳業界においても、今までよりも早いスピードで顧客ニーズやマーケットが変化していくことが予想される。同社においても、産業翻訳サービスの向上には企業が保有する翻訳データを効果的に学習できる NMT が必要不可欠であると判断したことが資本参加の目的である。また、それと同時に主に工業分野の翻訳事業を手掛ける(株)メディア総合研究所の全株式を同じく(株)フュートレックから譲受し100%子会社化した。グループ会社化する前の(株)メディア総合研究所の売上高は1,621 百万円(2017年3月期)であり、2018年3月期第4四半期より連結化した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)

《MW》

提供:フィスコ

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