為替週間見通し:ドルは上げ渋りか、米・中貿易戦争激化を警戒
【先週の概況】
■ドル弱含み、米中貿易戦争への懸念高まる
先週のドル・円は弱含み。米中貿易戦争の懸念が再び高まりつつあり、米国の実体経済に与える影響について市場の警戒感が高まっていることから、ドルの上値は重くなった。トランプ米大統領が10%の追加関税をかける2000億ドル規模の中国製品を特定するよう指示したことに対して、中国側は追加的な関税リストを公表なら断固反撃すると表明したことがドル売り・円買いを促した。
一方、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が欧州中央銀行(ECB)年次フォーラムで、「米国経済は非常に良好、インフレもFRBの目標である2%に近づいた」、「緩やかな利上げ継続の根拠が強い」とさらなる利上げを示唆したことから、109円台後半でドル買いの興味が確認された。日米金利差はさらに拡大するとの見方も一部でドル買い・円売り材料となったが、ドル・円相場を大幅に押し上げるまでの影響力はなかったようだ。
22日のニューヨーク外為市場でドル・円は、110円19銭から109円80銭まで下落し、109円99銭で引けた。この日のNYダウは100ドル超の上昇を記録したが、外為市場ではトランプ米大統領が欧州車に20%の輸入関税を賦課すると警告したことや、米長期金利が伸び悩んだことが嫌気されており、株高は材料視されなかったようだ。
・ドル・円の取引レンジ:109円55銭-110円76銭
【今週の見通し】
■ドルは上げ渋りか、米・中貿易戦争激化を警戒
今週のドル・円は上げ渋る展開か。一部報道で「ホワイトハウスの一部当局者は中国との貿易戦争回避のため、7月6日の対中関税発動前に中国との協議再開を目指している」と伝えられたが、米国と中国の貿易戦争は激しさを増すとの懸念の大部分は払しょくされていない。米利上げ継続の方針は変わっていないが、市場センチメントの改善は遅れており、短期的にリスク選好的なドル買いはやや抑制される見通し。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は講演で、米景気拡大基調が続くなかでの緩やかな利上げの必要性を強調した。欧州中央銀行(ECB)が利上げを開始する時期は来年夏以降になるとみられており、ドルに資金が集まりやすい状況ではあるが、今週発表予定の米6月消費者信頼感指数や1-3月期米国内総生産(GDP)確報値が市場予想を上回った場合、FRBの利上げ継続方針を後押しする材料となり、株高を通じてドル買いが増える可能性がある。
一方で、ドラギECB総裁など金融当局者からハト派寄りの見解が相次いでいる。利上げ時期は2019年夏以降との観測で、ユーロは引き続き売られやすい。イタリアの政治不安はある程度緩和されており、目先的には自律反発的な値動きも予想されるが、ECBは利上げを急がない方針を当面堅持するとみられており、ユーロ買い・米ドル売りが大きく広がる状況ではないとみられる。ユーロ・ドル相場に大きな動きがない場合、ドル・円の取引では米経済指標、米長期金利の動向、米・中の貿易・通商問題などが主要な手掛かり材料になるとみられる。
【米・6月消費者信頼感指数】(26日発表予定)
26日発表の米CB6月消費者信頼感指数は128.0と予想されており、前月と同水準になる見込み。2月の130.0(修正後)には及ばないものの、足元の消費者信頼感は高水準を保っており、消費拡大基調の維持が株高を通じてドル買いを誘発するだろう。
【米・1-3月期国内総生産(GDP)確報値】(28日発表予定)
28日発表の1-3月期国内総生産(GDP)確定値は、改定値(同+2.2%)から横ばいの見通しだが、上方修正された場合、利上げ継続観測がより強まることになり、ドル買い要因となりそうだ。
予想レンジ:108円50銭-111円50銭
《FA》
提供:フィスコ