出前“新世紀”、市場拡大「フードデリバリー」関連株の食べ頃は <株探トップ特集>
―酷暑で利用増、東京五輪も期待で長い評価へ―
フードデリバリーにマーケットの熱い視線が集まっている。いわば日本に根付いてきた「出前」の進化形だが、2016年に米ウーバーイーツが日本上陸、サービスを開始して以降、急速に市場が拡大している。直近では株式市場においても、「サッカーワールドカップ関連株」の一角として注目を集めた。“黒船来襲”に、受けて立つ側の日本勢も黙ってはいない。激化する出前戦争、フードデリバリー業界の現状と関連株の行方を追った。
●ウーバー上陸で一気に市場拡大
出前といえば、当然のことながら日本人に馴染みが深い。かつて昼どきともなれば、オフィス街にはそば屋にラーメン店といった、いわゆる“出前持ち”の勇壮な姿が見られたものだが、いまやその数も少なくなった。セキュリティーの加速からオフィスに入りにくくなったことに加え、人手不足などで出前を行わない個人営業の店舗が増加したことも背景にあるようだ。こうして、出前持ちの姿が消えるなか、最近よく見かけるようになったのがフードデリバリーの配達員だ。
市場調査会社のエヌピーディー・ジャパンによると、日本のフードデリバリー市場規模は16年が前年比7%増の3770億円、17年が前年比3%増の3857億円と伸長している。15年には3564億円だったが、16年にサービスを開始したウーバーの参入で、市場規模が急速に拡大した格好だ。また、日本のフードデリバリー市場は、世界に比べて大きく出遅れていると言われ、今後の展開次第ではさらなる拡大も予想される。
●新しき猛暑関連の出現
フードデリバリーは、自社が運営する飲食店からの配達と、通常デリバリーを行っていない飲食店の料理を出前代行する、いわゆるシェアリングデリバリーに分けられる。若い世代にとって、フードデリバリーの利用はもはや珍しくはない。少し前までは、ピザの宅配などが主流だったが、いまや、「なんでもござれ」の出前天国といっても過言ではない状況だ。
また、ここにきて日本列島を見舞う猛暑を超えた「酷暑」のなか、暑さのために外出を控える人々が増加。外に出かけず自宅で食事をとりたいというニーズを取り込む出前需要の拡大を株式市場では思惑材料に注目する向きも出てきている。フードデリバリー関連は、いまや新味ある「猛暑関連株」の一角ともいえそうだ。いくつかの関連企業への取材でも、「あくまで肌感」とことわりつつ「注文数量の増加には少なからず、猛暑の影響が入っているのではないか」という答えが多かった。
●夢の街は拠点拡充で攻勢
ウーバーの進出で、日本のフードデリバリー業界を牽引してきた国内の“老舗”は、どうみているのだろうか。
デリバリー総合サイト「出前館」を運営する夢の街創造委員会 <2484> [JQ]では、「(ウーバーの進出で)競争が激化していると見られがちだが、フードデリバリーの認知度が高まったという点では好影響と捉えている。当社は拠点数の拡充を続け、配達の利便性を高めていく」(広報)という。同社は、朝日新聞と提携し新聞販売店(ASA)を活用、今年4月にはアスラポート・ダイニング <3069> [JQ]などと配達拠点の協業パートナーについての業務提携契約を締結するなど、シェアリングデリバリー事業を加速させている。
同社は、6月27日の取引終了後に発表した第3四半期累計連結決算が、売上高が前年同期比5.1%増の40億400万円、営業利益は同11.2%減の5億6000万円、純利益3億8800万円(同3.1%増)と2ケタ減益になったが、今期はシェアリングデリバリー拡大のための積極的な投資をおこなったことも背景にあり、市場では前向きな評価が多い。株価は高値圏で頑強展開、株式需給面では信用倍率0.11倍と売り長で上値の軽さも意識されている。
●ライドオン「これからが本格的な普及拡大期」
フードデリバリー業界において夢の街創造委員会と双璧をなすのがライドオンエクスプレスホールディングス <6082> だ。同社は、宅配事業における拠点ブランドとして宅配寿司「銀のさら」、複合化ブランドとして宅配御膳「釜寅」、宅配寿司「すし上等!」に加え、提携レストランの宅配代行ブランドとして「ファインダイン」を展開している。株価は13日に2174円まで買われ年初来高値を更新、その後は軟調な展開となり1800円近辺で推移している。同社では「ウーバーが上陸するなか、(デリバリーサービスの)認知度が高まりニーズも拡大している。世界ではデリバリーが日常になってきており、日本においても、これからが本格的な普及拡大期入りと考えている」(広報)と語る。
●五輪関連の一角に浮上!
ライドオンを含むフードデリバリー銘柄は、先日終了したサッカーW杯で、テレビ観戦の際に需要が拡大するとの思惑から注目が集まった。これについてライドオン・エクスプレスでは、「サッカーW杯に関しては、少なからず影響はあったとみているが、日本時間で深夜の試合も多く放送時間帯などに大きく影響されるという感じがする。そういった意味においては、20年の東京五輪の方が主催国ということもあり好影響を与えるのではないか」(同)という。
そういった意味では、東京五輪はサッカーW杯と比較して日本選手が活躍する機会が多い競技があるだけに、フードデリバリーの活躍の場も広がりそう。五輪開催が接近するなか、フードデリバリー関連株は、 五輪関連の一角として改めて評価される局面がありそうだ。
●ぐるなびは動向注視
こうした追い風が吹くなか、フードデリバリーを事業の中核としない参入企業の動きも活発化している。インターネットで飲食店情報を展開するぐるなび <2440> は、出前・宅配・デリバリーの総合サイト「ぐるなびデリバリー」に加え、弁当を中心とした“名店の味“を手軽に注文できる「ぐるなびデリバリーPremium」を展開。楽天 <4755> は出前注文サイト「楽天デリバリー」で攻勢を掛けている。ぐるなびの株価は、業績悪から大きく売られ年初来安値圏でもみ合いを続けているが、5月8日に楽天と外食サービス新規加盟店開拓において提携を発表、ここからの動向を注視したい。
また、企業の福利厚生などの運営代行を行うベネフィット・ワン <2412> [東証2]も面白い存在だ。同社は、グルメサイト「食べタイム」を運営しており、フードデリバリー関連に熱い眼差しが向けられるなか、その一角として物色の矛先が向かう可能性も少なくはない。株価は、6月13日に3330円まで買われ上場来高値を更新、その後は軟調展開にあるが、ジワリ高値奪回をにらむ。
急速に進む高齢化社会、生涯未婚率の上昇など社会的背景もフードデリバリー市場の拡大を後押しする。猛暑に加え五輪関連という切り口の多彩さも魅力だ。いま、フードデリバリー業界は本格普及の階段を登ろうとしている。
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