決算発表「通過後」に注意、堅調から軟調“潮目”に変化も <東条麻衣子の株式注意情報>
先週、ドル・円は半年ぶりの高値水準である113.16円まで浮上。他の通貨に対してもドルは買われる傾向にあった一方、円が売られる対照的な展開となった。ただし、その後、トランプ大統領が「中国とEU(欧州連合)が為替操作をしている」とコメントしたことや、長期金利目標の柔軟化など緩和策について日銀が議論するとの報道がなされたことでドル安・円高に振れている。
3月下旬から始まったドル高・円安については、金利差や両国の経済状況などさまざまな要因が考えられるが、今年1-6月期の日本企業によるM&Aの影響もあったと筆者は考えている。
■日本企業のM&A活発化が円安を後押し
調査会社のレコフの集計によると、2018年1-6月期の日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)の総額は前年同期比3.2倍の11兆7361億円に拡大し過去最高を更新したとされる。このM&Aの活発化に伴う実需のドル買い・円売りが円安を後押しする一因となったのではないか。
上半期のフシ目を迎えてこの動きが一服したこともあってか、ドル円はトランプ大統領の言動や日銀の観測報道に、素直に反応し始めている。
■貿易摩擦の影響を確認する決算
米国を震源とする貿易摩擦は激化の懸念を拭えず、その影響は徐々に表面化してくるだろう。7月18日に発表された6月の米国住宅着工は前月比12.3%減と16年11月以来の下落率となり、地域別では中西部が同35.8%減と落ち込みが大きかった。中西部は大豆の主要生産地でもあり、中国の報復関税発動による大豆価格の下落の影響が出始めているとの見方がある。
ただし、米国が追加関税を課したアルミ・鉄鋼など、中国が主要な競合相手となるセクターでは、今回の4-6月決算発表において関税引き上げのメリットが出始める可能性があることも忘れてはなるまい。
7月20日に4-6月期決算を発表した東京製鉄 <5423> も、米国内での鉄鋼特需により海外輸出が25%増加したことを明らかにしている。
関税引き上げについてはデメリットを被るセクターもあれば、メリットを享受するセクターもあり、決算発表が進展するにつれてその内容を確認していくことになるが、全体としては堅調な地合いが続くのではないだろうか。
■警戒すべきは決算発表を通過後
注意を要するのは4-6月期決算の通過後である。決算を織り込んで材料難となる中、実需のドル買い・円売り需要も一服し、為替・株式市場ともに外部要因に振られやすくなりそうだ。
発動が9月以降とされる米国による中国への追加関税(約22兆円相当)を前に、市場では貿易摩擦激化のリスクが警戒される可能性がある。11月の米中間選挙をにらみ、トランプ大統領が為替や利上げについて言及してくるケースも想定され、積極的には買いにくい状況となるのではないだろうか。
決算発表後は8月23日~25日に開催される経済シンポジウム(ジャクソンホール)におけるFRB当局者の発言を待つ形で、軟調相場に入ると予想する。決算期待で持ち株が上昇をみせた際には、いったん利益確定を図るタイミングといえるのかもしれない。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。相場変調の可能性が出た際、注意すべき情報、懸念材料等を配信。
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