桂畑誠治氏【トルコ発、世界連鎖株安の行方はこうなる】(1) <相場観特集>

特集
2018年8月13日 18時30分

トルコリラ急落と貿易摩擦懸念で2万2000円台割れ―

トルコリラ急落に端を発し、世界同時株安の歯車が再び回り始めた。週明け13日の東京株式市場では日経平均株価が400円を超える下げをみせ、心理的フシ目であった2万2000円台を大きく割り込んだ。夏枯れどころか、波乱の夏相場の様相を呈してきたマーケットだが、ここは一段の下げを警戒して売り逃げるべきか、それとも敢然と買い向かうチャンスが訪れているのか。投資家にとっても悩ましい局面といえる。第一線で活躍する市場関係者の目にここからの“相場未来図”はどう映っているのか、その見解を聞いた。

●「トルコのリスク警戒モード脱却には時間必要」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

東京株式市場は世界的な株安に引きずられる形で思惑先行の急落を余儀なくされたが、まだ不透明な部分も多く、現時点で単純なリバウンド狙いの買いが報われるかどうかは判断がつきにくい。トルコリラ急落はトルコの経済情勢を悪化させるだけでなく、同国に投資もしくは融資を行っている欧州の銀行に“焦げ付き懸念”をもたらす。2008年のリーマン・ショックや2010年の欧州債務危機などの時と比べれば、金融の枠組みがしっかりしており、今回の問題だけで欧州危機再燃には至らない可能性が高いが、トルコリラ急落に始まったリスク警戒モードが払拭されるまでには相応の時間を要することになろう。

リスク警戒から離脱する条件としては、トルコがIMF支援を受け入れることと、政策金利を引き上げることが必要となる。エルドアン大統領の圧力下にあるトルコでこのハードルを越えるのはそう簡単ではなく、当面は株式市場も神経質な展開を強いられそうだ。

また一方で、米中の貿易摩擦問題も先鋭化するなか中国経済の減速懸念もくすぶっている。実際は、中国政府が財政、金融の両面から景気刺激策を打ち出すことでGDP成長率6.5%を死守することが予想され、その点でネガティブな影響は限定的。ただ、人民元安の流れは円高を誘発しやすい点で注意が必要となる。

前週注目された日米の閣僚級貿易協議(FFR)については具体的な進展はなく、9月に持ち越される形となった。日米間の協議が続くこと自体はポジティブ材料だが、自動車の関税を巡る議論がどういう形でまとまるのか、次の機会まで不安材料として火種を残すことになる。

これらの外部環境を総合すると日経平均は買い戻しで上昇する場面はあっても、それに上乗せされて実需の買いが流入することは考えづらく、当面の上値は限定的。2万2500円前後が上限ラインと思われる。一方、下値は7月5日の取引時間中の安値2万1462円がひとつのメドとして意識されそうだ。物色対象は行き過ぎて売られた輸出株に着目するとしても業種によって差が生じそうだ。9月の日米貿易協議を控え、関税引き上げが懸念される自動車株は戻りも鈍いことが予想される。どちらかといえば、業績面の良好な半導体関連セクターの押し目買いが有利とみられる。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)

第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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