檜和田浩昭氏【トルコ発、世界連鎖株安の行方はこうなる】(2) <相場観特集>
―トルコリラ急落と貿易摩擦懸念で2万2000円台割れ―
トルコリラ急落に端を発し、世界同時株安の歯車が再び回り始めた。週明け13日の東京株式市場では日経平均株価が400円を超える下げをみせ、心理的フシ目であった2万2000円台を大きく割り込んだ。夏枯れどころか、波乱の夏相場の様相を呈してきたマーケットだが、ここは一段の下げを警戒して売り逃げるべきか、それとも敢然と買い向かうチャンスが訪れているのか。投資家にとっても悩ましい局面といえる。第一線で活躍する市場関係者の目にここからの“相場未来図”はどう映っているのか、その見解を聞いた。
●「9月相場は自民党総裁選クリアで上昇に期待」
檜和田浩昭氏(東洋証券 マーケット支援部長)
今後9月末までの東京株式市場を展望すると、国内では9月後半にも実施される自民党総裁選をクリアすることをにらんで政権安定性の確保と、新たな経済政策への期待感を支えに、株価上昇の可能性がある。一方、海外要因では予備選など米中間選挙に向けた日程を踏まえながら、米中貿易摩擦の妥協点を模索するトランプ米大統領の動きに注目が集まり、それらを織り込む相場展開となりそうだ。
ほぼ終了した4-6月期決算を振り返ると、通期業績見通しなどにやや保守的な想定が多いものの、総じて堅調な内容と判断できる。業績予想の上方修正には踏み切らないまでも、増配を打ち出すなど株主還元策に積極的な企業が目立っているのも特長だ。米株式市場でハイテク株比率の高いナスダック市場が堅調な推移をみせている流れが近々日本株式市場にも波及し、インターネットなどのIT関連銘柄への物色意欲がより高まりそうだ。
現在は、売り買いともに手控えが続いている日本株への海外投資家の姿勢も、米中貿易摩擦の落ち着きや、自民党総裁選が経過することによる政権の安定感などにより、徐々に買い越しに傾いてくる可能性もある。さらに、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切ることになれば、日米金利差の拡大観測により円安・ドル高が進行し、日経平均を下支えすることにもなりそうだ。
日経平均の想定レンジは、きょうの大幅安を考慮して下値は2万1700円程度とする。一方、上値は5月、6月、7月と3度トライして突破できなかった2万3000円ラインを大きく上抜いてくれば、2万4000円台乗せも視野に入りそうだ。注目できるセクターとしては、電子部品や精密機器、設備投資関連の付加価値の高い機械などが物色対象となりそうだ。一方、内需系では、食品、外食、物流、アミューズメント施設など、値上げを実施しても収益力が低下していない業種に注目したい。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(ひわだ・ひろあき)
1990年東洋証券入社、府中・横浜・福山支店で個人のリテール営業を経験。2002年情報部を経て11年2月からアジア部ストラテジストとして日本株と中国株を中心に相場分析を担当。その後、投資調査部次長を経て2015年11月から現職。日本FP協会正会員(CFP)。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CFTe)。株式講演会講師、新聞取材など多数。
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