2018年「ノーベル賞」発表目前、有力関連銘柄を総検証<株探トップ特集>

特集
2018年9月26日 19時30分

―免疫治療薬やペロブスカイト型太陽電池など、期待の受賞候補が目白押し―

今年も10月1日の医学生理学賞を皮切りに、ノーベル賞受賞者の発表がスタートする。昨年は初となる日本人による4年連続受賞はならず、残念な結果となった。また、今年は選考関係者の不祥事により文学賞の発表は見送りとなる。しかし、医学生理学賞、化学賞、物理学賞では受賞が有力視される日本人候補者が目白押しだ。そこで、その対象となる主な候補者やその業績、さらに関連銘柄を紹介する。

米情報調査会社クラリベイト・アナリティクスは20日、ノーベル医学生理学賞の有力候補として、京都大学の金久実特任教授を選んだと発表した。金久氏はヒトや微生物などの生体内において、ゲノムなど大量の分子レベルの情報をデータベース化した。同調査会社は、2002年からノーベル賞の有力候補者を選出・公表してきた米トムソン・ロイター社の科学情報部門が前身。

なお、今年のノーベル賞受賞者の発表日程は、1日に医学生理学賞、2日に物理学賞、3日に化学賞、5日に平和賞、8日に経済学賞の予定となっている。

●免疫阻害機能応用のがん治療薬で小野薬品に再脚光

医学生理学賞では昨年に続き“免疫関連”が注目されそうだ。医学の分野で顕著な発見や功績を残した研究者に贈られるガードナー国際賞を15年に受賞した大阪大学の坂口志文特任教授は、制御性T細胞が過剰な免疫反応を抑制する役割を担うことを発見した「制御性T細胞と転写因子Foxp3の特性と機能に関する独創的な発見」が対象となる。また、免疫分野では京都大学の本庶佑名誉教授も有力視される。本庶教授は免疫細胞の働きを抑制し、がん細胞が免疫からの攻撃を防ぐ働きを持つ「PD―1」という免疫抑制タンパク質を発見したことで知られる。「免疫チェックポイント阻害剤」である小野薬品工業 <4528> のがん治療薬「オプジーボ」は「PD―1」の免疫のブレーキ役となる機能を生かして開発されたものだ。

京都大学大学院理学研究科の森和俊教授は細胞の中にある「小胞体」と呼ばれる器官でタンパク質に異常がないかを検知し、選び分けられる仕組みを明らかにしている。14年にノーベル賞の登竜門といわれる米国のラスカー賞を受賞していることもあり、受賞に期待がかかる。この仕組みを利用した糖尿病やがん治療薬の研究が進められており、高い評価を得ている。森教授が受賞した場合は関連銘柄として、京大と共同で研究を進める医学生物学研究所 <4557> [JQ]などに物色の矛先が向かいそうだ。

熊本大学の満屋裕明教授、東京農工大学の遠藤章特別栄誉教授も期待されている。満屋教授は、1985年に米国で世界初のエイズ治療薬「AZT」を開発したのをはじめ、多剤併用によるエイズ治療薬を複数開発している。なお、青カビから血中コレステロール値を下げる薬の開発につながった物質「スタチン」を発見した遠藤教授は、第一三共 <4568> 前身の旧三共の研究所に在職した経歴がある。

●物理学賞ではカーボンナノチューブ関連

物理学賞の候補者としては、理化学研究所の十倉好紀・創発物性科学研究センター長に注目したい。十倉氏が開発した新材料「マルチフェロイック物質」は強磁性、強誘電性、強弾性などの性質を複数有する物質系で、将来的に省エネメモリーにつながると予想されている。新物質の開拓やデバイスへの応用が期待されており、この新材料の開発には日本電子 <6951> の透過電子顕微鏡関連の「環状明視野法」という技術が用いられている。

「カーボンナノチューブ」研究では、飯島澄男・名古屋大学特別招聘教授が有力候補となる。カーボンナノチューブは炭素で構成され、その強さはダイヤモンドの2倍とも鋼鉄の数十倍ともいわれる。また、重量はアルミニウムの半分で、銅の1000倍も電気を通しやすい特長を持ち、ナノテクノロジーを利用した材料の代表的存在ともいえる。関連銘柄としては、東レ <3402> 、帝人 <3401> 、クラレ <3405> 、浜松ホトニクス <6965> 、GSIクレオス <8101> 、日本ゼオン <4205> などがマークされる。

また、鉄化合物系の高温超電導物質を発見した東京工業大学の細野秀雄教授にも注目。鉄は磁石の性質を持ち、超電導との相性が悪いという常識を覆した。高温超電導関連の銘柄としては、リニアモーターカーの実用化を推進しているJR東海 <9022> 、MRI用高温超電導コイルの開発で先行している三菱電機 <6503> 、超電導向けのケーブル、コイル、モーターなどで総合的な開発を進めている住友電気工業 <5802> などがある。

●ペロブスカイト型太陽電池関連に注目

化学賞でまず注目したいのが、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授だ。「ペロブスカイト型」と呼ばれる結晶構造物を用いて、板に塗るだけで発電が可能という薄くて軽い低コストでの次世代太陽電池を考案したことが評価されている。関連銘柄としてペロブスカイト系材料を製品化している第一稀元素化学工業 <4082> や、MLCC(積層セラミックコンデンサー)や燃料電池向けにペロブスカイト化合物を取り扱う堺商事 <9967> [東証2]に注目が集まりそうだ。また、同電池の実用化を目指しているパナソニック <6752> や、桐蔭横浜大学発ベンチャーのペクセル・テクノロジーズ(横浜市青葉区)と過去に大面積・高性能プラスチック太陽電池素子を共同開発したことのある藤森工業 <7917> や、関連の装置や部材、技術などを手掛けるテクノスマート <6246> [東証2]、フジプレアム <4237> [JQ]も見逃せない。

リチウムイオン2次電池関連に関心

このほか化学賞の対象としては世界的な電気自動車(EV)シフトの動きなどを背景に、一段と需要拡大が見込めるリチウムイオン2次電池にマーケットの視線が熱い。リチウムイオン2次電池を開発した旭化成 <3407> 名誉フェローで、名城大学大学院の吉野彰教授が候補に挙がっている。このほかの関連銘柄としては、電池メーカーのジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> をはじめ、負極材では世界トップの日立化成 <4217> 、日本カーボン <5302> 、昭和電工 <4004> がある。セパレータ(絶縁材)を手掛ける東レ、ダブル・スコープ <6619> 、ニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]。正極材では、田中化学研究所 <4080> [JQ]、戸田工業 <4100> 。電解液・電解質では、三菱ケミカルホールディングス <4188> 、セントラル硝子 <4044> 、関東電化工業 <4047> などがある。

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